2019年を迎え、旅行や観光関連企業、組織の各社トップが年頭所感や新年のあいさつで今年の方針や決意を表明している。東京オリンピック・パラリンピック開催、訪日外国人4000万人目標など、日本の観光産業にとって大きな節目となる2020年を1年後に控え、今年はラグビーW杯をはじめとした大型イベント、GW10連休などの好機が到来。その一方で、国際観光旅客税(出国税)の徴収開始、消費税増税が予定されるなど、環境変化も待ち受けている。
そうしたなか、多くの組織・企業のトップは、2019年を「基幹産業化に向けた課題解消が重要」(観光庁長官・田端浩氏)、「チャレンジ&トライの年」(日本旅行業協会(JATA)会長・田川博己氏)などと、産業としての新たなビジネスモデル確立に向けて正念場の年となると指摘。大手旅行会社やOTA各社の所感にも、インバウンドの強化、タビナカ観光の本格化、事業再編など、変化に向けて立ち向かう姿勢を明確に示す内容が多くみられた。
以下、1月4日までに公開された各社の2019年方針を整理した(それ以降、公開されるものについては、順次追加する)。発表された年頭所感や新年挨拶は以下のとおり。
行政・観光機関
- 観光庁長官 田端浩氏 ―観光の基幹産業化へ課題を解決、地方誘客へデジタル活用やコト消費の拡大へ
観光庁の田端長官はこれからの展開として、観光産業の基幹産業化に向けた課題解消が重要と言及。インバウンド分野では引き続き地方誘客と消費拡大を推進していきたいとしている。
- 日本政府観光局(JNTO)理事長 清野智氏 ―「観光先進国」を実現、日本の観光でブランド力向上へ
清野理事長は、今年開催されるラグビーW杯などについて「日本が世界から注目を集める絶好の機会」と表現。海外に向けた日本のブランド力を向上し、地方誘客の促進を強化していく考えを明らかにしている。
- 日本旅行業協会 田川博己会長 ―持続可能な開発目標で観光は大きな役割、海外旅行では安全プラットフォームも
日本旅行業協会(JATA)田川会長は、2019年を「チャレンジ&トライの年」と表現。各種取り組みを通じて新しいツーリズムのカタチを提示。観光産業のリーダー役を務めていきたいとしている。
旅行会社・OTAなど
- JTB代表取締役社長 髙橋広行氏 ―「JTBならではの価値」提供へ、環境変化への対応強化で改革を
JTB代表の髙橋広行氏は、2019年は大規模イベント・MICEを通じて日本独自の魅力を発信する絶好の機会になると予測。地球全体を舞台に、新たな価値創出とそのビジネス化に取り組む考え。
- HISジャパン プレジデント 中森達也氏 ―積極的な「共創」でビジネスモデルの変化に対応を
中森氏は2019年、HISグループがもつグローバルネットワークを最大限に活用するための「共創」を積極的に推進。急速に進む従来のビジネスモデルからの変化に対応していきたいとの想いを表明した。
- KNT-CTホールディングス代表 丸山隆司氏 ―旅行需要を確実にとらえ、グループ一丸で商品造成・販売力の強化を
丸山社長は2019年を迎えるにあたり、同社の経営計画のテーマ「個人旅行事業の再構築と団体旅行事業の拡大・強化」に言及。今後訪れる旅行需要を確実にとらえ、グループ一体となって取り組む考えを示している。
- 日本旅行代表 堀坂明弘氏 ―「マーケット・イン」で事業モデルを進化、総合旅行会社ならではの取り組みを
堀坂氏は、総合旅行会社がおこなうべきことは「安心・安全への取り組み」や「上質な旅の提案」にあると強調。同社のテーマである「マーケット・イン」の精神をさらに磨き上げ、ビジネスモデルをさらに進化していきたいと語っている。
- 楽天 トラベル事業 髙野芳行事業長 ―世界に向けたブランディングでさらなる成長へ
髙野氏は、スポーツチームとのスポンサー契約などを含め、海外向けのブランディング強化を積極的に進める考えを表明。今後も宿泊施設と一体となって魅力的な商品開発をおこなうとしている。
- リクルートライフスタイル執行役員 宮本賢一郎氏 ―「じゃらん」で新販促プログラム、旅行体験の満足度向上へ
リクルートライフスタイル旅行領域担当執行役員の宮本賢一郎氏は2019年の展開として、新たな販促プログラムの構想に言及。タビマエからタビアトまでを網羅する旅行体験の満足度向上に努める考えを示した。
- ヤフー執行役員 津留崎耕平氏 ―「Yahoo!トラベル」「一休.com」を通じ、施設と宿泊者へのメリットを最大化
津留崎氏は2019年も「Yahoo!トラベル」「一休.com」を通じ、宿泊施設への送客最大化に邁進していくとの想いを表明。「Yahoo!トラベル」で予定されるプレミアム会員向け優遇施策のほか、多数の新たな取り組みを積極的に展開していく意欲を示している。
- Booking.com 日本統括ディレクター、アダム・ブラウンステイン氏 ―民泊は右肩上がりに伸長を予測、タビナカ「体験」を拡充へ
アダム・ブラウンステイン代表は2019年、「宿泊施設の予約という範囲を超えた旅の総合的な体験」の提供をさらに推進。日本での存在感を一層高めていきたいとしている。
- エクスペディア・ホールディングス代表取締役 マイケル・ダイクス氏 ―さらなる推進力を備えたビジネス展開を
ダイクス氏は、今後「2021年までに提携宿泊施設数を倍増する」目標に向けて日本全国の提携宿泊施設ポートフォリオの拡大に尽力。テクノロジーとインテリジェンスの提供元としても、旅行業界を牽引する存在でありたいとの思いを綴っている。
- エクスペディア・ジャパン代表取締役社長 石井恵三氏 ―日本特有サービスが順調、市場に合ったサイト作りを
石井社長は2019年を展望し、カスタマーサポートの充実、モバイルユーザーの利用増加、エクスペディア・ジャパンにおける国内旅行拡大などの方針に即して、日本市場に合ったサービス提供をさらに充実していく考えを示した。
- 「LINEトラベルjp」ベンチャーリパブリック柴田啓社長 ―業界各社と連携で「大きな成⾧の機会」を創出
柴田氏は、展開中のサービス「LINEトラベルjp」について、2019年はさらに取り組み内容を充実。旅行会社やOTAなど、業界各社との連携強化を図る考えを示している。
航空会社と系列旅行会社・GDS
- JAL代表 赤坂祐二氏 ―安全体制を再構築、期待を超えた価値を提供へ
赤坂氏は2019年、経営陣を先頭に安全体制の再構築に臨む方針を表明。信頼の回復・向上に加え、期待を超えた価値提供を目指し、JALグループ全社員一丸となって取り組んでいきたいとの想いを述べた。
- ANAホールディングスCEO 片野坂真哉氏 ―乗務員のアルコール検出による遅延を謝罪、安全・品質・サービスの点検総仕上げの一年に
片野坂氏は、2019年は新航空機の投入や長距離路線の新規開設のほか、中距離路線就航に向けた本格的な準備にも着手。過去2年にわたり取り組んできた「安全と品質・サービスの総点検」について総仕上げをおこないたいと述べている。
- ANAセールス代表取締役社長 宮川純一郎氏 ―A380型機のハワイ就航や新ブランドで新たな価値ある旅作りを
ANAセールスの宮川代表は2019年の取り組みとして、構造改革に伴う商品開発強化を実現。新たに立ち上げたグループブランド「ANA Traveler's」を通じ、新たな価値ある旅づくりに挑戦していきたいとしている。
- ジャルパック代表 江利川宗光氏 ―2019年は「転換の年」、ジャンプスタートで変革と創造を
江利川氏は2019年を「転換の年」と表現。日本における大きなイベントや旅行業界のパラダイム転換も視野に「ジャンプスタート」をおこない、変革と創造を実践していきたいと述べている。
- トラベルポートジャパン代表 東海林治氏 ―来るべき変革を「4つのキーワード」で
東海林氏は2019年が「大きな変化の出発点」になると予測。来るべき変革を4つのキーワードで読み解き、同社ならではのデジタルテクノロジーを通じて旅行業界をサポートしていきたいとしている。
- セーバートラベルネットワーク日本支社長 中里秀夫氏 ―NDCの活性化で最適なサービス提供を
中里氏は所感のなかで、現在の旅行・航空業界では個人に最適化されたサービスが求められていると説明。新航空流通通信規格(NDC)の活用がその実現のカギになると述べている。
- アクセス国際ネットワーク(AXESS)代表 添川清司氏 ―「その一歩先」を見据えてマーケット動向の先取りを
添川氏は所感の中で、2019年は同社が掲げるキーワード「その一歩先へ」を視野に、グローバルな変革に挑戦していきたいとしている。
- インフィニトラベルインフォメーション代表 植村公夫氏 ―顧客の声にこだわり、満足度の高いサービスを
植村氏は旅行・航空業界について、今年もさらなる需要増加が期待できると展望。顧客の声に徹底してこだわったサービスを提供し、顧客満足度ナンバーワンのGDSであり続けたいとしている。
- アマデウス・ジャパン代表 竹村章美氏 ―ミッションは「未来の旅行をかたちづくること」
竹村氏は、同社のミッションを「未来の旅行をかたちづくること」と表現。様々なソリューションを通じて多様化する旅行者のニーズに応えると同時に、あらゆる旅行関連事業の成功を目指していきたいと述べている。