ANAグループは1日、2019年度合同入社式を実施した。今年度の新入社員はグループ35社で3463名(男性853名、女性2,610名)。式次第の終盤に新元号「令和」が発表され、即座に会場に紹介されるドラマチックな入社式となった。また、同日、英国の航空格付け「SKYTRAX」から7年連続で「5スター」認定を受けたことも発表し、新入社員の門出に合わせて同社のサービス向上の成果も披露した。
ANAホールディングス社長の片野坂真哉氏は、新入社員へのメッセージのなかで、これまでの航空機事故の反省に触れるとともに、昨年秋から問題となっている乗務員による飲酒にも言及し、「失われた信頼を回復すべく、厳格なアルコール検査を徹底し、二度と違反を起こさない」との決意を表明。そのうえで、新入社員に対して「安全がすべて」と強調し、「安全は経営の基盤であり、社会のへの責務である」と訓示した。
また、2019年は6月にG20大阪、8月にアフリカ会議TICAD、9月にラグビーワールドカップ、そして2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、「国際的なイベントによって、人とモノの動きが活発になる。航空会社にとっては大変な追い風になる」との期待感を表した。さらに、5月からのA380「国際的なFLYING HONU」によるハワイ就航など今後の国際線ネットワークの拡大についても説明。2020年の首都圏空港の発着枠拡大を「大きなチャンス」と捉えるとともに、LCCのピーチ・アビエーションとバニラエアとの統合によって、「アジア中距離マーケットに進出して、訪日需要を取り込み、政府目標である2020年訪日外国人4000万人の達成に貢献していく」と語った。
さらに、「令和の時代には、平成では想像もつかない未体験の世界が待っている」とし、AI、ロボット、ドローン、自動運転、MaaS、デジタルイノベーションなど新しいテクノロジーを積極的に導入していく考えを示した。一方で、「ANAグループは人の力で成り立っている」とコメント。ダイバーシティ時代の現在、多国籍、LGBT、障がい者など多様な「人財」の必要性を訴えた。
入社式では、ANAが取り組みを進めている「ANA AVATAR VISION」についても紹介。同社デジタル・デザイン・ラボ・アバター・プログラム・ディレクターの深掘昴氏は「自分の意識を伝送する新しいモビリティとして、世界中の人と人をつなげる瞬間移動に挑戦している」とそのビジョンを説明した。また、式では遠隔地となるホノルル支店とシドニー支店とを結び、「Beam Pro」を通した新入社員とのコミュニケーションも実施。片野坂氏は「医療、教育、宇宙などさまざまな業界とコラボしていき、未来のサービスを創出していく」と意気込みを示し、今年度中のアバター事業化に期待をかけた。
このほか、片野坂氏は取材陣に応える形で事故が相次いだボーイング737MAXについても言及。ANAは30機を発注しているが、「ボーイングによる原因究明が第一」とし、2年後のデリバリーまで「あまり時間がない」としながらも、導入計画の変更については明言を避けた。