観光・旅行業界向けのインスタグラム活用術を公開、ストーリーズや縦型動画を使った広告展開のコツを聞いてきた

フェイスブックジャパンは、旅行業界関係者向けに観光分野でのマーケティングやプロモーションツールとして注目が高めるインスタグラムの活用法についてセミナーを開催した。同社執行役員の鈴木大海氏は、インスタグラムを、ちょっとした隙間の時間にニュートラルなマインドセットで使ってもらえるツールと説明。「関連性の高いもの載せるとインパクトは大きい」ことから、「シグナル(データ)を最大限活用し、パターンを分析したうえで、その人に最適な動的なクリエイティブを生成すること」をインスタグラム活用のキーワードとして挙げた。

当たり前になった縦型動画と「ストーリーズ」

セミナーでは日本でのインスタグラムのトレンドについて説明。2018年9月現在のアカウント数は2900万で、現在も毎月伸び続けており、日本人利用者がハッシュタグで検索する回数は世界平均の3倍になっているという。また、各段階での利用率は新しい商品やサービスの検索で83%、商品やサービスの確認で81%、購入決定で80%となっており、カスタマージャーニーのすべてのフェーズにおいて高い比率でインスタグラムが利用されている。

インスタグラムは2018年6月に縦型動画サービス「IGTV」をリリースした。これにより、スマホを縦にしたままで視聴することができるようになったことから、動画を見る際にスマホを横向きにしないユーザーの割合は82.5%にまで達しているという。また、2016年8月に登場した最長15秒の動画「ストーリーズ」は基本的に24時間で消えることから、その気軽さが日本でも受け入れられ、そのデイリーアクティブユーザーはインスタグラム利用者の70%、登場以来2年間で投稿数は20倍に拡大した。

フェイスブックジャパン執行役員の鈴木大海氏。

ストーリーズの広告で認知度向上と効率的な顧客獲得

インスタグラム上での広告展開についての説明では、ビジネスからの発信に対してもユーザーの関心は高く、インスタグラムのユーザーは若い女性が多いイメージだが、調査によるとユーザーの43%は男性だという。フェイスブックと同じシステムで広告配信が可能なことから、高い精度でターゲット層にリーチできるとした。

そのうえで、ストーリーズでの広告展開について、オーガニック投稿はフォロワーに表示され、ターゲットや期間を設定することも可能。また、スワイプアップやタップなどでリンク先への転移できることを説明した。実例としてAirbnbの「体験」のブランディングでは、広告想起のリフトは13ポイント、25〜34歳におけるAirbnbの旅行体験予約プラットフォームとしての認知リフトは5ポイントになったという。

また、旅行比較サイトのカヤックの例では、短尺ビデオを活用することで、静止画と比較した場合のインクリメンタル検索者あたりのコスト削減率は39%、制作費の削減は50%、リーチした人数は210万人となり、効率的な旅行者獲得につながったと説明した。

このほか、ストーリーズ広告に新たにアンケート機能が利用可能になったことも紹介。これは、ユーザーに対して二択で質問を投げかけるインタラクティブ機能で、これまでオーガニック投稿では利用することが可能だったが、新たに広告でも活用できることになったことから、ユーザーとのコミュニケーションとデータ取得に役立つと期待されている。

広告効果最大に必要な機械学習、1日15件のコンバージョンを

さらに、広告効果を最大化するためのポイントとして、シグナルの計測、機械学習を促進するキャンペーンの構成、モバイルに最適化したクリエイティブの3点を挙げた。そのうちシグナルの計測では、ウェブサイトやアプリで実行されたアクションを把握し広告効果を測定するためにウェブサイトではPixel、モバイルアプリではSDKを設定し、計測するデータの種類や階層を増やして改善点を見つけることが大切だとした。

機械学習の促進では、広告配信を最適化するために、十分なコンバージョン数と幅広いオーディエンスへのリーチが求められるとしたうえで、機械学習促進に必要なコンバージョン件数は広告セットあたり1日15件と強調。そのためには、キャンペーンや広告セット数は少なくし、幅広いオーディエンスに向けて複数面へ同時配信することが必要だとした。

クリエイティブについては、非フルスクリーン素材を縦型画面でフルスクリーン表示にすること、単一広告セット内で複数の配置面に対応したクリエイティブを入稿できるアセットカスタマイズ機能の活用、ストーリーズではレイアウトサンプルやCreative Hubで他社事例を参考にすることを勧めた。

日本政府観光局の活用例、市場ごとに画像を分けて広告展開

フェイスブックジャパンによる説明に加えて、日本政府観光局(JNTO)がインスタグラムの活用例を紹介した。JNTOは2017年10月に本部アカウント(@visitjapan.jp)を開設。現在のフォロワー数は約29万人。#visitjapanjpの投稿数は約68万件に達しているという。主にタビマエの認知拡大と興味喚起、タビナカの快適度や満足度の向上、タビアトのシェア誘発で利用している。

JNTOのインスタグラムはユーザーが作成したコンテンツ(UGC)を活用しているが、「旅行者目線」を掲載の大前提としているという。そのうえで、人気投稿の特徴として、日本らしさがある美しい景観で、写真の構図としては奥行きがあり、彩度が高い写真に対するリアクションがいいという。また、昨今のコト消費の傾向から体験がイメージできるものもコメントが多く集まる傾向にある。

広告展開では、複数の画像を出向してクリエイティブテストを実施し、各市場のターゲットに好まれる画像傾向を分析している。また、2018年度の施策としては、5日連続で北海道の画像を投稿し、コメントを促すオーガニックキャンペーンを行った。その結果、単純に画像の感想ではなく、紹介した場所に言及するコメントが多く寄せられ、北海道への外国人誘致に一定の効果があったとした。

JNTO MICEプロモーション部市場戦略グループの山本泉氏。

インバウンドで影響力を増すインスタグラム

インバウンド旅行でインスタグラムが果たす役割は年々強まっており、その影響力は数字が示している。インスタグラムによると、2017年の訪日外国人約2,800万人のうち旅行の計画や実施にインスタグラムが関わっていた割合は約9%。その経済効果は約3,747億円と推定されるという。

また、定期的に旅行をする人のうち「休暇の計画を立てる際にインスタグラムを使う」と回答した割合は46%、「インスタグラムはあまり知られていない旅行先や体験の情報源だ」と回答した割合は51%に達した。

このほか、調査からは一般ユーザーだけでなく企業ユーザーにとっても、インスタグラムは集客に有効なツールになっていることが分かる。中小企業に対する調査では、43%が「インスタグラムの投稿がきっかけで国外顧客が訪れたことがある」と回答。また、「インスタグラムはウェブサイトではできない方法で役立っている」と回答した割合は56%と半数を超えた。

この調査は、訪日観光客数の上位20市場の一般アカウントユーザー3,023人と中小企業アカウントユーザー500人を対象とし、2018年9月4日から17日かけてオンラインでインタビューを実施したもの。

取材・文 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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