日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)は、第29回通常総会を受けた記者会見で、新型コロナウイルスの影響が大きい海外旅行市場の今後の見通しと需要回復に向けた取り組みを説明した。
OTOAとは、日本人旅行者の海外旅行先の手配サービスや現地オペレーションを専門に行う旅行会社が集まる組織。会長の大畑貴彦氏は現状について、「会員ツアーオペレーターは全社苦しんでいる。4、5月はゼロ。6月も国際線復活の見通しがつかないためゼロを予測している」と説明。しかし、外務省がベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドからの入国制限を先行的に緩和する検討に入るなど、海外との往来再開に向けた動きが報道され始めていることから、「今年10月頃から動き出すのではないか」との見通しを示した。大畑氏によると、すでに旅行会社の下期商品の見積もりを受けている会員も出てきたという。
また、市場別では「第一段階としてビジネス需要が戻り、次に留学生、そして観光(レジャー)の順になる」とし、3密回避の旅行形態が望まれることから、「FIT(個人旅行)や小さなグループから戻り、パッケージツアーや団体は来年以降」との見方を示した。そのうえで、国際航空運送協会(IATA)が国際線の供給量が2019年レベルに戻るのは2022年以降と予測していることなどから、「コロナ以前の需要に回復するのは3年ほどかかる」とした。
海外旅行の再開に備え、海外旅行のガイドライン策定や研修ツアーなど
需要回復に向けた取り組みでは、日本旅行業協会(JATA)/アウトバウンド促進協議会(JOTC)と共同で、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が発表したガイドラインを叩き台として、日本のBtoBtoC向けのガイドラインを策定する準備を進めていることを明らかにした。
また、6月末からはJATAと連携して中国、台湾、韓国、香港、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ハワイ、グアムの13カ国/地域の最新情報を提供するオンラインセミナー開催を計画している。OTOA会員各社から、具体的な入国・検疫・税関(CIQ)や、バス、ホテルレストランなど観光施設の状況報告や観光客の受け入れ態勢を旅行会社向けに配信することで、需要回復期に備えるものだ。
さらに、ビジネス旅行が動き出すタイミングが来れば、旅行会社やメディア向けに、感染が抑え込まれている国/地域への研修旅行を観光局と共同で実施したい考え。大畑氏は「これまで以上に研修旅行が大切になってくる。露出が増えれば消費者のマインドも変わってくる。まずはムード作りが大切になる」と意欲を示し、まずタイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドなどで「成功事例を作ることが重要」と付け加えた。
OTOA副会長の荒金孝光氏は、ワクチンの開発や接種には時間がかかるとみられることから、旅行業界でもPCR検査体制の拡充を進めていく必要に触れた。PCR検査の拡充が、入国時の隔離待機の免除につながることに期待をかける。
コロナ禍の中で旅行会社との取引き適正化へ
大畑氏は旅行会社とツアーオペレーターとの取引適正化にも言及。長年、OTOAが取組んできた旅行会社からの手配代金の支払い早期化は、新型コロナの影響下で海外旅行ビジネスを運営していくためには、最重要となるという考え。経営が厳しいOTOA会員各社が、事業を継続するためにも「旅行会社には手配契約内容を正しく理解し、履行してもらいたい」と要望したうえで、今回の新型コロナの事態を通じて「適正化はさらに進むだろう」と期待感を示した。
大畑氏は最後に、ウィズ/ポストコロナ時代の海外旅行について、人々の行動が変容したことを受けて「テクノロジーによって旅行のビジネスモデルが変わってくる」し、「こうした時期だからこそ、旅行業界は変革のチャンス。オペレーターにもビジネスチャンスは多いのではないか」と付け加えた。