
世界大手のタビナカ体験予約「Viator(ビアター)」の最新トレンドレポートによると、旅行者が「受動的な観光」から離れつつあり、今年は「目的地の本当の意味を提供する有意義で没入感のある体験」が注目されている。
そのなかで、タビナカ体験を提供する観光事業者は、エアビーアンドビー、トリップアドバイザー、エクスペディアなどのプラットフォームを使用するとともに、自社サイトを通じて直接予約を促すマルチチャネルアプローチを進めている。しかし、グーグルでは、あまり牽引力がなく、ほんの一握りのレビューしかない。
それでも、グーグルは、ツアーやアクティビティの分野、特に地元の事業者が関心のある旅行者とつながり、ツアー、アトラクション、アクティビティを宣伝するのに役立つ「Things to do」のB2B ツールに再び注力していることから、「状況は変わりつつある」と見る専門家もいる。
専門家によると、グーグルはOTAよりも地場企業を優先している。グーグル検索の「AI Overviews(AIによる概要)」も、OTAには不利に働いているようだ。
「Google Things to do」で低下するOTAの存在感
米国を拠点とするアドベンチャー体験マーケットプレイス Adrenaline のブレンダン・ニュージェントCEOは、その要因として、グーグルがGoogleビジネスプロフィールで「公式オペレーター」 サイトの優先順位を高めたことにあると見ている。観光情報検索サービスとして、観光名所やアクティビティへの予約導線となる「Google Things to do(TTD)」 に接続するパートナーの数は着実に増加しており、全体的な競争が激化しているという。
体験予約ToursByLocals のリサ・チェンCEO兼社長も、グーグルが検索結果内で、より多くの事業者のローカルツアーやアクティビティを直接宣伝するようになったと認めている。
Google Things to doは、現在、無料のリストとダイナミック広告の両方を提供している。
TripShockのグレッグ・フィッシャーCEOは、調査結果から、Google Things to doに大手OTAなどのオーガニック検索結果が「ほとんど存在しないことにショックを受けた」と話し、「基本的には、Googleマップのビジネスリストだけだった。OTAはそこから完全に排除されていた。OTAの5年後の状況はどうなるのだろうか」と付け加えた。
フィッシャー氏は、「グーグルは、OTAにビジネスプロフィールのサブスクリプション料金を請求し始める可能性もあるのでは」という。体験を予約する方法に関して、これが劇的に変わる可能性がある。「OTA は、もはや私たちの分野では支配的ではない。グーグルは、小規模な旅行業者が同じ分野で事業しやすくしている」と話す。
AIとの付き合い方が重要に
AIは引き続きブランドの検索結果の配置に影響を与えている。旅行マーケティング会社Propellicによると、、Googleが検索結果に表示する「 AI による概要(AI Overviews)」は、現在、デスクトップ検索の2%、モバイルデバイスでは48%を占めている。
同社ブレネン・ブリスCEOは「AI Overviewsが登場し、旅行者がコンテンツを見つける (または見つけない) 方法を変えている」と話す。AI Overviewsが表示するクエリ(検索するキーワード)のCTR(表示回数に対するクリック数の割合)は、1.41% から0.64%に急落したという。
全体として、従来の検索エンジンのボリュームが 2026年までに25%減少し、検索マーケティングがAIチャットボットや、その他の仮想エージェントに市場シェアを奪われるとの予測もある。
米Hornblower Groupのクルーズ旅行販売City Cruises社は、製品ページと購入でChatGPTの紹介が急増していると明らかにしている。これに対応して、同社はAIの新たな欲求を満たすために、従来の検索で上位にランクされる、構造化された関連性の高いコンテンツを一貫して作成することに注力しているという。
「同じクエリの結果がユーザーごとに大きく異なる可能性があることを考えると、ソーシャルメディア、フォーラムサイト、ゲストブログ、YouTube動画など、オンライン上でブランドを訴求し続けながら、SEO(検索エンジン最適化)に最適化された、クリーンでユーザーフレンドリーなインターフェースを維持することに重点を置くことが重要」と話す。
City Cruisesがオンライン上で言及されている場所が増え、コンテンツに簡単にアクセスできるほど、ChatGPTの独自のツールがAI検索で同社を参照する可能性が高くなるからだ。
一方、ToursByLocalsのチェン氏は、コンテンツがすでに「非常に信頼性が高い」ため、現在はAIエンジンでその効果を増幅することに注力しているという。大まかに言えば、会話クエリとよりよく一致するようにコンテンツを改良すること、構造化データを強化すること、戦略的なオフサイトイニシアチブを通じて同社の存在感を強めることだ。
今後に向けて、TripShockのフィッシャー氏とHornblowerのローズベリー氏は、事業者に向けて、肯定的なレビューを集めることで、グーグルでの存在感を持つようにアドバイスしている。
加えて、フィッシャー氏は、「Google Things to doリストと統合された予約ソフトウェアを準備するのがいいだろう」と付け加えた。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:COULD A TOURS AND ACTIVITIES PUSH FROM GOOGLE PENALIZE OTAS