新型コロナウイルスの世界的な流行で、海外との往来が制限された異例の年末年始を迎えようとしている。GoToの全国停止での膨大な対応に追われながらも、旅行各社や観光地は、年末年始に自宅にいながらインターネットで旅行体験を提供するオンラインツアーの販売に注力している。
世界各地から現地ガイドが生中継するだけでなく、ツアーに合わせて地元の特産品を届けたり、思い出の場所をめぐるオーダーメード型など内容は多彩だ。コロナ禍に入ってオンラインツアーが登場した当初はプロモーション的な参加無料の企画が大半だったが、人気の広がりとともに現在は有料が定着化。かつてない逆境の中で、新しいビジネスが生まれようとしている。
プライベートツアーから現地のお土産付きまで
JTBが2020年10月からスタートしたJTBマイバスヨーロッパのガイドが案内する「おうちでヨーロッパ旅」は、これまで6回の開催で3300組以上が参加した。年末年始もヨーロッパだけでなく、カンボジア、インドネシア、ミャンマーの世界3大遺跡から現地ガイドがリレー中継するツアー(12月26日・15USドル)など、海外とつながるツアーを複数用意している。
特筆すべきは、現地スタッフが顧客のリクエストにできるかぎり対応し、思い出の場所や下見など希望するスポットへ案内するヨーロッパのプライベートツアーだ。料金はローマ1時間が150ユーロから。個人はもちろん、コロナ禍で会えない遠方の家族、グループで参加して楽しむのもいい。
エイチ・アイ・エス(HIS)も負けていない。同社によると、年末年始におけるオンラインツアーの予約ランキングトップは、2021年1月1日に開催する「世界6都市の初日の出をつなぐライブ中継」(2020円)。ふだん最も人気がある「インドの有名占い師によるオンライン占星術・手相占い」(3600円~)も8位に入った。ウェブ会議システム「Zoom」を使い、占い中はインド人日本語ガイドが通訳をサポート。占い師と通訳のみのプライベート空間だ。
ランキング上位には入らなかったが、年越しに向けてそばが自宅に届き、茹で方や歴史を学べる「日本三大そばめぐりツアー」(12月26日・3300円)もある。HISは「今後、旅行が再び自由にできるようになった際も、オンライン体験ツアーを通じて、旅先を事前に学習した上で出かけることで、今まで以上の感動や現地への理解を深めることができるはず」と力を込める。
新たな収益源提供するプラットフォームも登場
オンラインツアーであれば、これまで日数や費用の問題から候補に上がることのなかった旅先に触れる機会も広がる。現地オプショナルツアーサイトを運営するベルトラは、モナコ政府観光局の協力で、レニエ3世大公とグレース・ケリーが結婚式を挙げた大聖堂や、電気自動車に乗ってモナコ・グランプリのコースを走行するオンラインツアーに抽選で50名を招待する。テレビの生中継とは異なり、ネットで双方向に対話ができるのが魅力だ。
大手旅行会社だけでなく、観光事業者全体に新たな収益源を提供しようという動きも出てきた。沖縄のパムによる「たびらい沖縄オンライン体験」は、ビデオ通話を使ったオンラインイベントを簡単に始められるtrevary社のサービス「amply」を活用したもの。沖縄のオンライン体験を有料化するもので、沖縄の観光事業者はプラットフォームを通じて簡単に販売でき、すでにマングローブSUPツアー、野鳥観察などが募集されている。