2021年10月末に開催されたG20ローマ・サミット、さらに11月1日から英グラスゴーで始まったCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)において、国連世界観光機関(UNWTO)を中心としたサステナブルな未来実現に向けた世界のツーリズム産業の取り組みが動き出している。
このほどG20ローマで採択された「ローマ首脳宣言」では、「迅速で、力強い回復力があり、インクルーシブかつ持続可能なツーリズム産業の復活を、我々は引き続き支援する」ことが盛り込まれ、なかでも特に重要な課題として「移動の安全」、「シームレスな旅行」、「サステナビリティ」、「デジタル化」が挙げられた。また各国政府からは、UNWTOや様々な国際機関との協力体制の継続が重要との認識が示された。
UNWTOのスラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は「世界のツーリズム市場の70%を占めるG20各国には、復興のけん引役となることが期待されている」と声明を発表。同時に、課題解決とともにツーリズム産業が、インクルーシブで持続可能な産業へと発展していくためには「協調、断固たる行動、そして政治、財政的なサポートが不可欠」と訴えている。
UNWTOは、11月2日に英ロンドンのワールドトラベルマーケット(WTM)で観光大臣サミットを開催。ここでもツーリズムの復活と、持続可能な産業への転換には、政府当局や財務面でのバックアップの必要性を呼び掛けている。
11月から英グラスゴーで始まったCOP26においては、UNWTOとして旅行・観光産業における「排出ガス実質ゼロ」への取り組み加速を狙った「グラスゴー宣言」への多くの事業者からの賛同を求める。ツーリズムがSDGs(持続可能な開発目標)の多くの分野に関わる重要な産業であることを念頭に、UNWTOが各国政府と民間事業者の橋渡し役を担うとしている。
グラスゴー宣言の具体的な内容は、ツーリズム産業において、2030年までに排出ガスを半減、さらに遅くとも2050年までに実質ゼロ達成を目指すというもの。チャリティー団体のトラベル基金(Travel Foundation)がUNWTOと共に、関係各団体や事業者に参画を呼び掛けている。UNWTOによると、グラスゴー宣言には現在までにさまざまな業種や地域から計150社・団体以上の署名を得ている。