広域連携DMOの九州観光機構とJTB、セールスフォースは、九州における観光DXの推進で包括連携協定を締結した。
デジタル活用とデータの取得・利活用ができる九州観光プラットフォーム「地域共創基盤」を構築し、九州観光DX戦略を立案。(1)ワンストップの情報提供による観光客の利便性向上、(2)地域での体験を豊かにし、滞在拡大と経済効果を高める地域づくり、(3)再訪につながる顧客満足度の向上のためのCRM(顧客管理)の推進と体制づくり、を目指す施策を実行する。
これにより、地域の魅力を高め、観光客1人1人に寄り添える仕組みを実現することで、九州のファンの獲得とリピーター化を促進。持続可能な九州経済の活性化を目指すとともに、九州を観光DXの先進エリアとする。
記者会見で、九州観光機構会長の唐池恒二氏(JR九州取締役相談役)は、売上を伸ばすためには、「新規の観光客は重要だが、その数は一定している。リピーターを増やし、新規客が積み重なることで売上が増える」と、観光地域がリピーターを増やす重要性を強調。「魅力ある観光地づくりと、リピーターの確保・拡大を図るために、観光DXが欠かせない基盤になる」と期待を示した。九州への観光客のうち、リピーター率を現行の6割強から7割へと持っていきたい考えだ。
協定に基づき、初年度となる2022年度はDXの推進体制作りとして、自治体やDMO、観光事業者と情報連携を推進。プラットフォームを構築し、九州観光機構やJTBが保有する事業データを蓄積する。あわせて、学習支援やデジタル人材の育成支援、観光庁事業の取り組み、会員組織との連携も進めていく。
2023年度にはDX戦略を策定し、デジタルマーケティングプラットフォームやPDCAサイクルの環境支援なども開始。2024年度にはDX戦略の遂行と会員・関係者へのコンサルティング、マーケティング支援なども進め、九州観光機構の自走化に向けた移行を進めていく。
観光DXを加速
包括連携で、Salesforce Service CloudやTableauなどの各種サービスを提供するセールスフォース・ジャパン代表取締役会長兼社長の小出伸一氏は、「リモートでの会議や診療、学習などの浸透で、多くの人がすべてのものが繋がり、その先に顧客がいることを一気に体験した」と、コロナ禍による環境変化を指摘。今後は、タビマエからタビナカ、タビアトそれぞれで「繋がった人々を理解し、最高の顧客体験を提供することが大切になる」と話した。そのためには、単にデータを収集するのではなく、観光客の目線で適切に管理し、活用することが「今後の観光DXの推進に必要であり、今回の連携で取り組むこと」だと話した。
JTB代表取締役の山北栄二郎氏は今回の包括連携協定について、「旅行会社からソリューションカンパニーへの進化を目指し、交流創造事業で新たな価値創出に取り組むなかでの事業展開」と話した上で、「九州地域の様々な観光事業者や関係者、観光客をつなげて交流を作っていく」と意欲を示した。包括連携における、データ連携から人材育成、ビジネスマッチング、データ分析を生かしたイベント創出などに加え、旅行者向けの現地体験予約や、地域に対する商品開発、2次・3次交通整備、コンサルティングなどの事業機会も狙っていく方針だ。
JTBとセールスフォースは2020年に地域経済のDXの共同推進を目的に、包括連携協定を締結。JTB山北氏によると、これまでにも日光での実証実験など、規模や形はそれぞれ異なるものの、各地域で「地域共創基盤」を導入した取り組みを進めていた。今回のように九州全域、かつ、半年間にわたる3者での「観光DX推進ミーティング」の実施を経た大規模な取り組みは、初めてになるという。