酷暑を避ける新たな旅行トレンド「クールケーション」、米国で北欧やアラスカが人気の旅先に、シーズン分散化で新たな課題も

写真:ロイター通信

米国では、夏の暑さをしのぐために北欧やアラスカなどに出かける旅行者が増えている。観光産業では、この傾向を「クールケーション」と呼び、需要の高まりへの対応を始めている。

ノルウェー航空は2024年7月、ノルウェー北部と欧州の主要都市を結ぶ10の新規路線を開設した。同航空のゲイル・カールセンCEOは「欧州では、より北の旅先への関心が高まっていると感じている」と話す。

ノルウェージャン・クルーズラインは7月、2026年夏にアラスカ、カナダ、ニューイングランドをめぐる13の新コースを運航すると発表した。今夏については、アラスカへのクルーズを増強した。

航空データ分析会社フォワードキーズによると、今夏のアラスカへの国内線の便数は前年比10%増加し、テキサス州ダラスからの便は30%増えた。テキサス州では5月以降、暑さが厳しい日が続いている。6月時点のデータでは、今夏のノルウェー、アイルランド、スウェーデンへの国際線の航空券発券数は、それぞれ前年比19%、13%、11%増加している。

宿泊施設にも変化が表れている。民泊エアビー(Airbnb)では、2024年上半期にノルウェー、スウェーデン、アラスカでの夏の滞在の検索数が前年比15%増加したという。

富裕層旅行を扱うトラベル・ネットワーク「Virtuoso(ヴァーチュオソ)は、カナダの今夏の予約が前年比20%増加したことを明らかにした。

ハイアットは、トロントとモントリオールで夏期旅行が増加することを見込んで、2026年末までにカナダのホテル数を2倍に増やす計画だ。

春と秋への需要分散も

涼しい旅行先への需要が高まっているものの、温暖な地域の旅行に打撃を与えているわけではない。フォワードキーズによると、2024年6月の南欧への海外旅行者数は前年比8%増加した。

一方で、英国の旅行代理店グループABTAは、英国の旅行者は依然として暖かい地中海の地域を探しているが、春と秋のオフシーズンの人気が高まっていると明かす。

旅行分析会社キーデータによると、3月と5月のイタリアのホテル稼働率は2019年の同月と比較してほぼ2倍になった。

シーズンの分散化ではマイナス面も

旅行シーズンが分散化されることで、夏の人気観光地の混雑は緩和されることになるが、住民や観光事業者は年間を通じた対応が求められるようになってくる。

キーデータのデータインサイトディレクターであるメラニー・ブラウン氏は、「コロラド州では年間を通じて渋滞が発生するようになった」と話す。さらに、旅行シーズンが長くなると、労働市場がひっ迫し、観光産業は十分な働き手を見つけるのに苦労する可能性があると指摘する。

夏シーズンの需要の変化が顕著に現れている旅行先の一つがギリシャだ。Virtuosoでは、ギリシャへの夏の予約が前年比で17%減少。ギリシャのホテル経営者連盟会長ヤニス・ハツィス氏は、高級宿泊施設が打撃を受けているという。

また、ギリシャ銀行によると、今年1月から5月にかけてギリシャを訪れた外国人は21%近く増加したものの、5月の米国からの旅行者は前年比19%減少した。

※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。

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