2015年6月4日から5日にかけて、オンライン旅行業界の国際会議「WIT JAPAN2015」での恒例の企画「スタートアップピッチ」が行われた。
2015年の最優秀は、「旅行アクティビティのためのワンストップショップ」をコンセプトにモバイル戦略を掲げた香港のKlook Travel(クルック・トラベル)社に決定。また、来場者が選んだナンバーワン・スタートアップには独自のレンタルスペースマッチングサービスを行うスペースマーケット社(日本)が選ばれた。 *冒頭写真は最終決定後のもの。中央2名がクルック・トラベルからの登壇者。
WIT で行われるスタートピッチは、「旅行」と「ウェブ」をテーマにしたビジネスアイデアについて、複数の起業家が新たなビジネスプランをプレゼンし、世界の旅行関連大手企業のトップや投資家らが審査員となり評価を競うもの。10人の審査員が、実現可能性、持続可能性、スケール、チーム、ビジネスのインパクトなどの基準をもって評価している。
今年はイベントの前夜祭に位置づけられる「WIT JAPAN ブートキャンプ」で11の起業家がプレゼンを実施。最終選考対象となった5社が翌日会場にて最終プレゼンをおこない、最優秀1社が決定された。
最優秀のKlook Travel(http://www.klook.com/)
最優秀に輝いたクルック・トラベルは、「旅行アクティビティのためのワンストップショップ」をコンセプトに、アジア圏を中心とした旅行者向けアクティビティプランを提供。アジアで特に重視されるモバイルユーザーに向け、このほどスマホアプリも完成させた。
自社チームが丁寧に選定した現地体験のラインナップほか、モバイルアプリを通じた「オンラインチケッティング」を行う。現在、アジア圏21エリア・1000件以上のアクティビティを販売、オンラインチケットでは、シンガポールのユニバーサルスタジオのアトラクションも扱った。ビジネスモデルはアクティビティ提供者による手数料を中心とし、アクティビティ提供者との独占契約も行っているという。
カンファレンス参加者が選んだNo.1、 スペースマーケット*(https://spacemarket.com/)
WIT Japanのカンファレンス来場者が選んだベストスタートアップ企業となったスペースマーケットは日本からの参加。イベントを実行するユーザーと開催場所のオーナーをつなぎ、「これまでにない、ユニークなレンタルスペース体験」を提供する。
現時点で3000か所の施設を利用可能とし、ビジネスモデルはシンプルな手数料制。日本でのMICE市場に大きな将来性をみており、その規模は300億ドルと予想している。従来のイベント会場や会議の開催場所のありかたを見直し、たとえば「映画館を貸し切ったウエディングパーティ」「古民家の畳の部屋で会議」など、場所と用途との新たなマッチングを提起する
最終結果発表後、審査員代表・プライスライングループのエイドリアン・カリー氏が講評。「今回のピッチへの参加者すべてのプレゼンが素晴らしかった。ファイナリストとなったクルック・トラベルは、昨日(前日の選考)より確実にレベルがあがっていて、ポテンシャルの高い企業になるだろうと感じた。」とコメントした。
上記受賞者以外、2015年6月4日にプレゼンをおこなった起業家は以下のとおり。(4日のプレゼン実施順。*印は5日に最終プレゼンを実施した企業)
2015年 WIT JAPAN スタートアップピッチ登壇者
1. Allstay*(http://www.allstay.kr/)
韓国にて、現地の個人旅行者をターゲットとしたメタサーチエンジンビジネスを展開。「ローカル」「モバイル」「コンテンツ」「シェアリング」などにフォーカスしてサービス強化の機会を狙う。
2. AnchorUp
モバイル世代の若者をおもな対象として、SNSのゲーム性を生かしたコミュニケーション(ゲーミフィケーション)アプリを開発。アプリ利用者は、GPSによる位置情報や地図、チャット機能を通じて、利用者が求める宿泊先や旅先での体験を検索可能に。日本(東京)ほか海外全般が対象。
3. Dabeeo*(http://www.dabeeo.com/)
韓国からの参加。地図のAPI技術を用いて、旅行者や地図が苦手な女性でも読みやすい地図を作成できる「地図編集プラットフォームサービス」を提供。同時に、地図を使った旅行計画サービス「Tourplanb」も展開中。
4. ライフルトラベリング(http://www.lifull-travering.com/)
日本からの参加。旅行者と、現地で旅行者をもてなして交流したい人、特別な体験を提供したい人をつなぐサービスをスマホアプリで提供中。フリーミアムモデルを採用し、すでに10500ユーザーと500か所が登録済み。
5. プラネタイズ(http://planetyze.com/ja)
日本発・外国人向けのオンライン旅行ガイド「トラベリエンス」を提供。モバイル環境でスムーズに活用できるオンラインガイドブックを目指す。旅行に関する専門性の高い編集者が信頼できる記事コンテンツを作成。旅行者はそのコンテンツをダウンロードして参照することも可能。
6. Sale Tonight(http://www.saletonight.com/)
韓国からの参加。当日の宿泊予約先検索・販売アプリを提供。100%モバイル環境で完結するサービスとなっている。韓国で成功しているEC系スタートアップ「クーパン(coupang)」を競合相手として意識しているという。
7. Stubby Planner*(http://www.stubbyplanner.com/)
韓国からの参加。「AI in travel」をキーワードに掲げるテクノロジー企業。12万件もの旅行プランを対象とした統計解析を行い、利用者が望む条件に合わせてレコメンドするサービスを提供。韓国だけでなく、日本―中国など他国間の旅行にも対応済み。
8. 百戦錬磨(https://tomareru.jp/、https://tomarina.com/)
旅行者に日本各地が持つ魅力的な日常を伝えるビジネスを企画。個人の空き部屋に宿泊する「とまれる」や、田舎での体験プラン検索・予約サービス「とまりーな」を提供中。「Not agency but demand creator」をキーワードに、旅行の目的を"生み出す"ビジネスでもあるとする。
9. トリップデザイナー(サカモトタケシ氏)
日本にて個人で活動中。たとえばムスリムやLGBT専用ツアーなど、多くの旅行会社がまだ扱っていない分野の開発を強みとする。日本の文化・伝統など、日本を訪れる外国人に、旅行会社では対応しにくいプランを提供。2015年8月にサービス開始の予定。
以下は6月4日に行われたプレゼン登壇者の様子。(最優秀を獲得したクルック・トラベル以外の起業家10名)
(トラベルボイス編集部)