ANAホールディングスCEO 片野坂真哉氏が2017年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
片野坂CEOは所感のなかで、昨年は国際線定期便就航30周年の記念の一年だった一方、世界的なテロの脅威や自然災害、経済・政治動向の変化、自社事業での複数の障害や不安全事象など、さまざまな変化・課題に直面したことに言及。2017年は、「初心に返って新たな一歩を踏み出す」一年にするとともに、品質・サービスの総点検を実施。さまざまな施策を通じて全グループの力を結集し、世界のリーディングエアライングループを目指していきたいとしている。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
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2017年 年頭所感
―安全を守り、品質・サービスを総点検し、結集力で「世界のリーディングエアライングループ」を目指そう―
年頭にあたりひと言ご挨拶申し上げます。
昨年を振り返りますと、年明けから秋口にかけて予想外の円高が進行しました。株価も伸びず、私も含め多くの企業経営者の市場予想が外れました。6月の英国のEU離脱の国民投票と11月の米国次期大統領選も世界中の人々の大方の予想と逆の結果となりました。
我が国経済は、デフレからの脱却に向けた日銀のマイナス金利政策や思い切った金融政策が打ち出されながらも、物価上昇の目標達成への手応えが感じられませんが、米国トランプ次期大統領の積極財政と「強いアメリカ」の宣言以降、世界的にもドル高が進み、これらもまた大方の専門家の予想に反する動きとなりました。それに伴い、株価も回復しています。
ANAグループにとって、昨年は国際線定期便就航30周年でした。
ANAは、数多くの困難を乗り越え、国際線ネットワークは、武漢・プノンペンへの就航により19カ国・地域、41都市に拡大しました。フルサービスキャリアとしてお客様から高い評価をいただき、「SKYTRAX 5スター」を4年連続で獲得できました。
LCCでは、バニラエア、Peachが知名度を上げ、国内外の新しい航空需要を生み出しています。
グループ全体でも、空港会社、航空機整備会社、旅行会社、商社、貨物物流会社をはじめ、全ての事業会社が厳しい経営環境の中でそれぞれに健闘、貢献し、減収の中でも最高益を更新する上期決算にも結実しています。
しかし、全てが順風満帆という訳ではありません。3月にはブリュッセルでテロが発生し、就航から好調だった成田=ブリュッセル線も一時運休を余儀なくされました。4月には熊本で大地震が発生し、九州全体に大きな被害が及びました。
自らの事業においても課題の多い年でした。3月の国内線旅客システム障害、ロールスロイス社製エンジンブレードの破損、8月の羽田空港のシステム不具合による手荷物未搭載、保安検査場や搭乗ゲートにおける不安全事象の発生など、オペレーションにおいて、お客様にご迷惑とご心配をおかけする事態が連続しました。
全社を挙げての再発防止策の実行、フロントラインと経営層の対話をはじめ、お客様の信頼回復に取り組みながらの越年となりました。
さて、いよいよ2017年がスタートしました。
世界の政治・経済の動向から一時も目が離せません。トランプ大統領就任後の米国経済の変化、外交政策、英国のEU離脱交渉、欧州主要国の選挙、そして世界的な反グローバリズムの台頭、日本・アジアのトップリーダーと中国のトップリーダーとの政治的、経済的駆け引きなどの動きが、我が国、日本企業そして我々エアライングループの事業に直接的、間接的にインパクトを与えます。観光立国政策や地方創生などを含め、我が国の政治、経済の動向も同様に目が離せません。
そこで2017年。どう進むべきか。
- 次なる成長ステージに向け、初心に返り、新たな一歩を踏み出す。
- 今年と来年は、事業規模拡大のペースはこれまでの3年間よりはやや緩やかになる。この1年、安全を守り抜くことに加え、ANAグループの品質とサービスの総点検をおこなう。
- 品質やサービスを単にチェックするだけではなく、競合他社の新しいサービスに負けないよう、磨きあげる。お客様の嗜好の変化に対応できるよう、発想の転換が必要。
- 国際線で成長するという中期の基本戦略に変更はない。ここぞという海外の都市には、必ず翼を伸ばしていく。バニラエアの奄美大島就航による成功に倣えば、国内線においても新規路線の可能性は必ずある。
- 訪日外国人需要の取り込み、越境eコマースの強化、フレーター物流事業の黒字化、ANA顧客資産ビジネスの拡大、AI、IoT、オープンイノベーションを活用した新規事業など、スピードを上げる。
2017年の経営の目標を漢字一文字で表すとすれば、「結」です。
国際線30周年の記念の年は終わり、競合他社が国内、海外で攻勢を強めます。ひとりでは対抗できません。仲間、上司、後輩など社員同士のみならず、協力会社やお取引先企業の方々も含めたコミュニケーション、チームワーク、結束力で乗り切っていきましょう。
どのように新しい年を迎えようとも、我々の事業の根幹は、安全の堅持に尽きます。今年も安全を守り、全グループ役職員の力を結集して、世界のリーディングエアライングループを目指しましょう。
ANAホールディングスCEO
片野坂真哉