英国の客船会社キュナード・ラインは、豪華客船クイーン・エリザベス(総トン数9万900トン、乗客定員2081名)で、2019年に横浜を発着港とする日本発着周遊クルーズを実施することを発表した。
クイーン・エリザベスはワールドクルーズの区間クルーズとして、今年3月に神戸発着、来年3月に大阪発着で8日間クルーズを実施する。日本発着クルーズとしては3年連続となるが、2019年の横浜発着クルーズはクイーン・エリザベスとして初めて出港/帰港地を日本とし、日本をメインのマーケットとして設定するクルーズとなる。欧米各国からの乗船も見込むが、乗客定員のうち7~8割を日本市場で集客する考えだ。
キュナードの日本での販売を担うカーニバル・ジャパン代表取締役社長の堀川悟氏は、2017年の神戸発着クルーズが発売当日に完売し、2018年の大阪発着クルーズ発売当日の半日で完売したことを説明。
また、カーニバル・ジャパンのキュナード・ライン事業部長の児島得正氏は「日本のお客様は品質に対する目を持っており、英国ブランドの高品質のクルーズは今後も多くの日本人に受け入れられる」と語り、2019年の日本発着クルーズの販売に自信を示した。
横浜発着クルーズのポイント
4月19日発の10日間クルーズは、横浜/函館/秋田/金沢/境港(鳥取)/釜山(韓国)/八代(熊本)/横浜を訪れる日本一周コースで、訪日旅行の意欲が高い欧米の需要も意識した。国内の寄港地は横浜を除き、初寄港。また、横浜では2019年3月に竣工予定の大黒埠頭新客船ターミナルを利用するなど、初めて尽くしのクルーズとなる。
一方、8日間クルーズはゴールデンウィークに出発する、横浜/広島/釜山/長崎/横浜で設定。キュナードの日本人客は50歳以上の熟年・シニア世代が多いが、本日程では孫を連れた三世代など現役世代を含む幅広い客層の利用を見込む。小島氏によると、歴史の長いキュナードには3世代、4世代にわたる顧客が多く、「父や祖父母が乗船したことがあるから」と家族の経験が乗船のきっかけであることも多い。日数的に参加しやすい同クルーズで、将来の顧客開拓も狙う。
また、料金面の参加のしやすさもポイント。4月19日出発の10日間は19万3686円~、4月29日出発の8日間は15万8573円~の設定だ。最上級のスイート「クイーンズ・グリル」でも10日間は68万8974円、8日間は56万4072円で、これはキュナードのフライ&クルーズで一般的な客室利用時の料金と比較してもリーズナブルとアピールする。
このほか、サービス面では、日本語対応も強化。キュナードでは従来から、日本人乗務員を配置しているが、横浜発着クルーズでは日本語を話せるスタッフを増員し、船内各施設に配置する予定。ただし、船内の各種サービスに関しては、従来の英国風サービスを提供する。
日本での予約は、2017年4月19日から。旅行会社を通して販売する。運航開始日から2年前の予約開始であり、神戸・大阪発着で即売した状況にはならないとしながらも、「上級客室を中心に予約をいただけると思う」(小島氏)と自信を示す。
キュナードのアジア戦略、ナンバー1は「日本」
「豪州」「米国」に並ぶ最重要市場として顧客開拓に本腰
現在、欧米の大手クルーズ会社はアジア進出を強めており、その狙いは巨大な人口を持つ中国市場。しかし、「キュナードの最重要市場は日本。アジア市場の8割が日本人」(小島氏)と、日本市場に力を入れる理由を説明する。
3年連続となる日本発着クルーズの実施も、本社の方針に沿ったもの。一連の日本発着クルーズの参加者を将来の重要顧客として、キュナードの主要プロダクトである欧州やカリブ、ワールドクルーズなどの海外クルーズへの送客に繋げる狙い。
実はキュナードでは全社的な戦略として、次世代への投資を強化。同社の主要マーケットは1位が英国、2位がドイツを含む欧州各国で、3位以下は「群雄割拠の状態」。そこで、世界最大市場である「米国」とクルーズ人気の高い「豪州」と並び、「日本」を重要市場に位置づけ、本格的な市場開拓に取り組む。そのため、キュナードでは毎年実施しているクイーン・エリザベスのワールドクルーズを2019年度は取りやめ、この3市場での周遊クルーズを実施するという。
なお、日本発着クルーズのあとは、5月5日横浜出港でアラスカへのクルーズとなる。その途上、5月7日に青森港に初寄港する。日本人の人気の高いアラスカクルーズであることから、同クルーズについても日本からの集客を見込んでいる。
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取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)