中国民泊プラットフォーム最大手「途家(トゥージア)」を運営する途家グループと楽天グループの民泊事業会社「楽天LIFULL STAY」は民泊事業における業務提携を結んだ。これにより、楽天LIFULL STAYは今後開設予定の民泊サイト「Vacation Stay (仮称)」の国内民泊物件を途家に供給してくほか、両社はマーケティング活動を共同で実施し、中国からのインバウンド需要の拡大を目指していく。
途家オンライン情報技術(北京)有限公司COOの楊昌楽(ヤン・チャンルー)氏は本誌とのインタビューに応え、今回の提携について「楽天LIFULL STAYの事業計画と途家の日本戦略はマッチしている。日本で住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されていくなか、長期的視点において相互補完の関係は有益と判断した」と説明した。途家は高級宿泊予約サイト「Relux」とも予約業務で提携しており、楽天との提携によって日本の掲載物件をさらに拡大させていきたい考えだ。
一方、2018年の民泊新法施行後に本格的な民泊事業を開始する楽天LIFULL STAY代表取締役の太田宗克氏は、「今回の提携によりアジア圏からの集客が強化される」と説明。同社はすでに米国のHomeAway、台湾のAsiaYo!と業務提携を結んでおり、途家は3社目の海外民泊プラットフォームとの提携先になる。Vacation Stayで掲載される物件はすべて途家のプラットフォームに配信される予定。両社の収益関係については「基本はレベニューシェアだが、詳細は今後詰めていく」との発言にとどめた。
日本市場で2020年までに10万軒、売上高250億円を目指す
記者会見では日本法人「日本途家」代表取締役の鈴木智子氏が途家の日本戦略について説明。自社での物件開拓を加速化しマーケットシェアを拡大させていくほか、ホストのサポート体制も強化してく。その一貫として今年中には大阪に支店を開設する。
さらに、潜在ホストの懸念を払拭するため、クリーニング、保険、スマートキー、電力や水道のスマートメーターなど管理サービスも充実させていく考え。楊氏は、中国国内では途家の基準を満たす管理業務代行会社を活用しており、日本でも同様の体制を整えていくが、基準を満たす代行会社が見つからない場合は、自社による直営管理を立ち上げる可能性にも言及した。
また、地域活性化への貢献にも注力していく。民泊はLCCとの相性がいいことから、中国LCCの就航都市や周辺地域での物件を増やしていきたい考えを示した。楊氏は「東京、大阪、京都が優先されるが、中国人旅行者の動向を先取りしながら、物件の開発を進めていきたい」とコメント。さらに、途家が独自に提供する宿泊施設「途家ハウス」を地方でも展開していく(鈴木氏)。
このほか、新しい取り組みとして、日本途家が直接、食、体験、交通など日本の観光情報を中国人ユーザーに配信するサイトを立ち上げる計画も明らかにした。楊氏によると、すでにシンガポール、タイ、韓国では同様のサイトを立ち上げており、集客につながっているという。
途家では、今後訪日中国人旅行者の増加に合わせて、民泊のニーズも高まっていくと見込んでおり、日本での中国人向けの市場規模は2020年で500億円、2025年で625億円に拡大すると予測している。「日本は中国人にとって選びやすいデスティネーション。途家の海外戦略で日本の優先順位は高い。日本市場を伸ばしていく自信はある」と楊氏。日本途家は、掲載数の目標を2020年までに10万軒、2025年までに20万軒に設定。売上目標としては、市場規模の約50%を目指すとして、2020年までに250億円、2025年までに300億円を掲げている。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹