観光庁は、この春から秋にかけて大幅に人員を拡充し観光施策の加速と深化を図る。2017年4月段階で約150名だった体制から今秋にかけて約100名の増員を図り、総勢約250名体制に。さらに、組織も拡充し、インバウンド対象市場毎に新たな「室」を設置するなどできめ細かく、スピード感を持った施策を行っていく方針だ。具体的な、組織について総務課平岡成哲課長に聞いてきた。
今回の組織・人員体制の拡充は、「2020年訪日外国人旅行者数4000万人」「訪日外国人旅行消費額8兆円」などの国が定めた目標を達成するためのもの。増員では、自治体や民間からの登用とともに内閣府、経産省、外務省、文科省など関係各省からバラエティに富んだ経験と知見を持つ人材が集められた。平岡課長は「オール霞が関で対応する体制。観光の裾野の広さを示している」と話す。
内閣との連携も強化している。内閣官房の「観光戦略実行推進室」と観光庁の併任人事を大幅に増やし、長官や課長クラスだけでなく、室長や総括補佐クラスまで併任発令がされた。「観光庁と内閣官房が表裏一体といえる(平岡課長)」という人事で意思疎通や意思決定が迅速化。観光施策が国家施策として力強く推進されていく体制が整ったことになる。
具体的な組織の拡充はこうだ。
まず、各課に新たな「室」を増室している。特に、大幅増となったのは、国際観光課。もともとの「外客誘致室」を「アジア市場推進室」、「欧米豪市場推進室」、「新市場開発室」として、市場毎に細やかに戦略だてを行い日本政府観光局(JNTO)と連携しながら成長を目指す。また、市場を超えて横断的に施策を行う「総合計画室」も設けた。この「総合計画室」は、従来、担当室がなかった日本人の海外旅行推進の役割を担うことになるという。
観光産業課では、従来通り宿泊業や旅行業を担当するが、新たに「民泊業務適正化指導室」も設けられた。民泊への対応は、従来から観光産業課が担当してきたが、新法の成立・施行にむけて人員の補強が避けられない状況にあったという。新たな室を設けることで、今後も増えると思われる自治体や関係各所への対応を行う。ここには旅館業法を管轄する厚生労働省からの人材も配置されている。
さらに、観光地域振興課には各地域が観光推進で連携を図る「広域連携推進室」、観光資源課には日本のコンテンツを観光につなげる「新コンテンツ開発推進室」などが新設された。
また、参事官も増強。MICEを大きな観光施策の柱としていくため、これまで国際観光課長と兼務となっていた参事官を独立させ、「MICE担当室」として専念できる体制とした。観光産業で課題として叫ばれる観光人材育成では「観光人材対策室」に参事官を配置。観光MBAや次世代経営者の育成など、人材関連の政策を策定・推進していく。
観光庁が発足したのは2008年10月。当時、約120名でスタートした組織が9年後に人数ベースで倍に拡大したことになる。日本の観光産業を変えるひとつの転機になることに期待したい。
トラベルボイス編集部 山岡薫