LINEがトラベル事業の戦略発表、「LINEポイント還元」や「タビアト」でのシェア獲得など

プレゼン資料より

LINEは2018年10月3日、旅行比較「LINEトラベルjp」のベンダー向け説明会を開催し、今後のサービス展開と戦略を発表した。

LINEは今年6月28日に旅行比較「LINEトラベル」を開始し、翌日のLINEカンファレンスでサービス概要を発表。その後、8月1日に旅行比較サイト「Travel.jp」運営のベンチャーリパブリックとの資本業務提携を行ない、9月5日には両社のサービス名を「LINEトラベルjp」としてブランド統合をしていた。

今後は、両社がそれぞれ「LINE版」、「ウェブ版」を運営しつつ、BtoBの窓口はベンチャーリパブリックが担当。LINE版にも、ウェブ版で掲載するベンダーの商品やコンテンツを順次掲載していき、来年10月には既に約2000万の訪問者数を有するウェブ版とあわせ、約4000万セッションの大きなトラフィックを生むメタサーチビジネスへと発展させる方針だ。これに向けたLINE版のサービス展開と中長期の戦略は、以下の通り。

LINEポイントの還元開始へ、10%還元キャンペーンも

今年度内のサービス展開では、国内外の宿泊比較に続き、10月末には航空券、2019年1月にはツアー比較を開始する。この中で、大きな変化となるのは10月末の航空券比較をリリースのタイミング。これにあわせ、LINEポイントによるポイントバック施策を開始し、トップ画面も大幅に変更。「おすすめ旅行サイト」のコーナーを設け、ポイントバック率の高いベンダーを掲載する。

プレゼン資料より

LINEトラベルjpプロダクト責任者の本間洋也氏は、メタサーチのポイント施策は、常にログイン状態の会員が使用するLINE版ならではの施策であることを説明。さらに「おすすめ旅行サイト」について、「同コーナーでは価格の比較検索ではなく、ポイントバック率を軸にベンダーや商品が選ばれる機会となる。新しい送客モデルを作れれば」と、ベンダーのメリットになる機能として強調した。

ポイントバック施策では開始後2週間、還元率を10%とするキャンペーンを実施。また、年内は条件を満たしたベンダーに対してLINEがポイントの1%を負担し、その分をベンダーが設定するポイントバック率に加算する。

サービス開始から現在までの約3か月間で、LINEトラベルjpの「友だち」の数は333万人となった。これを年内に1000万人とし、ANA(友だち数:1464万人)や東京ディズニーリゾート(同:991万人)に匹敵する「おでかけ・旅行」カテゴリでトップ5を目指す。これに向け、公式キャラクター「タビーノ」や国民的アニメキャラクターの無料スタンプなどを作成し、LINEユーザー内での認知向上にも努める。

2019年度には、チャットボットやAIなどを活用したLINEらしいサービス展開と、新規カテゴリの追加、タビナカ商材の拡充などを強化していく。

旅行の“日常化”に挑む

今後の戦略については、O2O事業室副室長の藤原彰二氏が説明。タビマエからタビアトまで、メタサーチでの一気通貫のサービスを目指すLINEとして、強みである位置情報とパーソナライズを最大限に活用し、旅行マーケティングで新スキームを提供する方針だ。

目指すのは、旅行の日常化。藤原氏は、一般的に旅行サービスはアプリでの流通額が他のサービスと比べて低く、「非日常のサービスほどアプリの利用率は悪い」と説明。旅行事業より1年先行して始まった「LINEショッピング」の成功要因として「日常品の利用が多かった」と語り、「旅行をどう日常にしていくかが中長期の戦略になる」という。

その大きな役割を担うのが、コンテンツの「旅行ガイド」。例えばタビマエで提供する情報では、地域特集やランキングに加え、「テレビの旅行番組の特集」も検討。また、記事の閲覧頻度を高めるため、閲覧時のポイント付与や広告メニューとしての展開も図る。記事は、30万人が読むコンテンツとしていく。

タビナカでは位置情報にあわせ、その地域に関する記事のランキングやスポットキーワードなどを表示。「我々のチャレンジは、このページにどれだけのユーザーを呼べるか。タビナカでLINEを起動させる文化を作り、予約に繋げたい」と意気込む。特にスポットキーワードは、「旅行は非日常なので、タビナカで欲しい情報を探そうにも、関連するワードを想起できない」との考えで設けるもの。「タビナカの旅行ガイドを見てもらうことで旅行の日常化に近づける」との考えだ。

そして藤原氏が「LINEの最大の特徴」というのが、タビアト。タビアトの旅行体験のシェアではFacebookなどのSNSでも行なわれいるが、LINEも同様。しかも、もともとログインしているので投稿のハードルが低いのが特徴と言い、旅行のレビューで国内1位を目指す。特に、画像ストレージのシェアを取っていく考えだ。

このほか藤原氏は、LINEトラベルjpがLINE版とウェブ版があることで、既存ユーザーの取り込みに強いプル型(ウェブ版)と、新規ユーザーの取り込みに強いプッシュ型(LINE版)の双方を備えたメタサーチであることも強みとして強調した。

プレゼン資料より

タビナカ構想で当初から意気投合

事業説明会ではLINE執行役員O2O事業担当の藤井英雄氏と、ベンチャーリパブリック代表取締役副社長の柴田健一氏が、トークセッションを実施。資本業務提携の経緯や今後の展望を語った。

両社はLINEトラベルの開始以前から、資本関係のない業務提携を実施。2018年1月の初折衝から意気投合し、スピーディに話が進んだ。藤井氏は、LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏とLINEの強みを生かしたタビナカ構想をプレゼンした際、「ベンチャーリパブリック社長の柴田啓氏と健一氏が見せた笑顔が印象的だった」といい、「日本でナンバー1のメタサーチを目指そう。上場も視野にやっていこう」という話になったという。

柴田氏は、先ごろのブランド統合について言及。2001年創業のベンチャーリパブリックにとってブランド名の変更は「大きな判断だった」と強調しつつ、「ユーザーはスマホでLINE版を利用するだけではなく、複雑な旅行の比較ではウェブ版で大きな画面で見たいと思うはず。その時に違和感なく使ってもらえるよう決めた」と話した。なお、「Travel.jp」の公式キャラクター「タビーノ」は、LINEトラベルjpでも公式キャラクターとして使用される。

「LINEトラベルjp」のビジネス構想:プレゼン資料より

記事:山田紀子

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