JTB総合研究所は「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019)」の調査結果を発表した。そこで特筆すべきひとつが、訪日外国人旅行者の急伸による日本人の国内旅行への影響だ。また、休暇と仕事の関係性も変化についても指摘している。その内容をまとめてみた。
訪日客増で日本の良さを再認識
アンケートで訪日客が急増したことへの考え方を聞いたところ、「混雑する観光地に行かなくなった」(28.2%)、「自然環境が悪化するので増えてほしくない」(23.4%)といった回答が全体で上位を占めたが、こうしたネガティブな意識は年齢が高いほど増えている。一方、「日本の良さを再認識した」、「経済面で地域活性化するので増えてほしい」というポジティブな考えは若くなるほど高い傾向。同研究所は「次世代をけん引する20代に注目したい」と言及している。
訪日客増加で、他業種の参入による新形態の宿泊施設が増え、競争も激化している。簡易宿泊所における訪日外国人延べ旅行者数は2015年から2018年の4年間で約3.3倍。民泊は2泊以上、年間180日までなどの制約があることから、古民家などを活用した宿泊施設が簡易宿泊所として運営される場合も増えているという。一方で、「今後の利用を増やしたい」との割合が「過去1年間に利用した」を超えた宿泊施設は、「温泉旅館」、「シティホテル」、「民宿・ペンション」などが上位だった。特に、温泉旅館に高い利用意向がある。20~30代には和モダンをコンセプトとする「都市型旅館」や「テーマ性のある宿泊施設」が人気だ。
「業務+観光」5割になれば消費額2769億円増
同研究所は時間や場所にとらわれない働き方の広がりにより、休暇と仕事の関係性も変化してきたとも指摘している。過去1年間に業務旅行をした経験のある人に、業務旅行で観光も実施する“ブリージャー”、休暇中に業務を実施する“ワーケーション”についての意識を聞いた結果では、全体的に「仕事でいった旅行に休暇を付けられれば、もっと休暇が取りやすくなる」(30.5%)が「プライベート旅行先での仕事が業務として認められれば休暇が取りやすくなる」(27.0%)を上回り、“ブリージャー”のほうが優勢だった。
同研究所の推計によると、業務旅行に付随して観光旅行をしている延べ人数は1472万5000人。消費額は4856億円で、宿泊観光消費額全体の3.7%だった。業務に付随した延べ観光旅行者数が5割になれば、消費額は2769億円増える見込みで、一定の経済効果が見込めると期待している。
なお、インターネットアンケート調査は2019年9月10~13日の期間中、過去1年間に1泊以上の国内旅行(業務旅行)をした、全国20~69歳の男女3万人をスクリーニング、2062人に本調査した。