世界の指導者たちがグラスゴーでCOP26に参加し、気候変動対策に向けた合意を模索した今年、持続可能な旅行が普及しない背景には、選択肢の少なさと割高感があるとする調査結果が発表された。
ルフトハンザ・イノベーション・ハブ(LIH)が調査会社ブラックボックスに依頼したアセアンにおける消費者調査によると、41%が「持続可能な旅行が選択肢にあるとは知らなかった」と回答。40%は「それを見つける方法を知らない」と答えた。
この調査は、パンデミックのなか、消費者の間で持続可能性への意識や地球への負荷に対する認識が高まっていることから実施されたものだ。
この調査によると、27%が「サステナブル旅行は高価だ」と回答。サステナブル旅行の選択肢を見つけられたとしても、それを予約するうえでコストが障害になっている実態が明らかになった。
パンデミック以前からサステナブル旅行への関心は高まっていたものの、それが消費には直接つながらなかった。2020年初めにLIHと旅行予約アプリ「ホッパー」が実施した調査によると、78%が「サステナブル旅行にはどのようなものがあるのか知りたい」と回答、73%が「そのためなら喜んで費用を支払う」と答えたものの、最終的に旅行市場で相殺された二酸化炭素排出量はわずか1%にとどまった。
また、LIHによる最新の調査では、消費者の24%が「サステナブル旅行で支払った追加料金がどのような目的で使われるのか知りたい」と答えるなど、サステナブル旅行を選択するうえでは、透明性の重要性も改めて浮き彫りになった。
さらに、23%が「サステナブル旅行にはあまりに制約が多い」と感じており、21%が「利益活用の透明性が低い」、同じく21%が「選択肢が十分ではない」と答えた。
このほか、21%が「旅行会社やツアーオペレーターがコストを負担すべき」と回答。政府が負担すべきとの回答も19%にのぼった。
旅行会社や政府の責任は?
この調査レポートでは、「旅行者を非難するのは公平ではない。旅行会社は、もっとサステナブル旅行の選択肢を提供すべき」と結論づけている。別の調査でも、消費者の87%が「旅行会社に対して、もっと多くのサステナブル旅行の選択を示すべき」だとしている。
また、消費者は「より持続可能な世界」と同時に、「より公平な世界」を望んでいるとする調査もある。この結果は、消費者の企業や政府の行動に対する目が厳しくなっていることを意味する。
今年初めにユーロモニターが発表したリポートでは、ブラック・ライブズ・マターや持続可能な成長といった課題、あるいは一般的に責任ある行動について、政府や大企業は明確な態度を示さないことから、消費者はフラストレーションを溜め、彼らに反抗的な感情を抱いていると指摘している。
一方で、行動変容の必要性に気づきながらも、旅行者は進んで旅行回数を減らそうとはしていない。
サステナブル旅行に最も必要なことについての調査で、トップは「地域の自然環境に気を配ること」。しかし、「旅行回数を減らす」は10位だった。2位は「訪問前に目的地の貴重な環境資源を学ぶこと」。3位は「地域経済を支えるビジネスを支援すること」だった。
観光・旅行業界の社会的な立ち位置
調査では、サステナブル旅行の普及について、21%が「責任を持ってサステナブル旅行を選択することが重要」と回答。12%が「責任ある行動に道徳的なやりがいを感じること」と答えた。
一方、12%が「自身の環境への意識や行動を社会活動のなかで共有したい」と回答。社会的信用がサステナブル旅行の普及に重要な役割を持っていることも分かった。
今年、旅行・航空業界では持続可能な航空燃料(SAF)、電気自動車、より環境に配慮した経営計画など、持続可能性を高める取り組みを発表し始めた。
ユナイテッド航空は今年6月、サステナブル旅行のためのベンチャーファンドを発表。2050年の排出量実質ゼロを目指すベンチャー企業に投資を行う計画だ。
ジェットブルーは、2040年に排出量実質ゼロの目標を掲げ、SAFの活用を拡大している。
LIHは、CO2補償プラットフォームを提供するサステナブル旅行マーケットプレイス「Squake」を立ち上げた。ここでは、旅行会社や輸送機関と持続可能な取り組みへの投資を考えている銀行やパートナーとをマッチングする。
グーグルは、予約画面で、独立機関によって定められたサステナブル基準を満たしたホテルに認証バッジを付ける取り組みを始めた。また、グーグルは、ヘンリー王子が2019年にブッキング・ドットコム、トリップ・ドットコム、トリップアドバイザーなどとともに立ち上げたサステナブル旅行を推進する団体「Travalyst」にも参加している。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:ECO-FRIENDLY OPTIONS AND COST HIT SUSTAINABLE TRAVEL BEHAVIOR