観光庁は令和6年度(2024年度)予算の概算要求をまとめた。一般会計分は前年度予算比2.20倍の241億112万円。また、国際観光が回復するとの見込みから、国際観光旅客税を活用した観光施策の展開としては、2.13倍増となる420億円を要求した。東日本大震災の復興枠としては、1.21倍の9億3500万円。総額は約670億円で、前年比では倍増となった。
以下に、増額した予算や新たな施策のポイントをまとめた。
人手不足対策や通訳ガイド制度を増額
具体的には、「持続可能な観光地域づくり」に前年度予算4.42倍に当たる162億6400万円を要求(ただし、2022度第2次補正予算で予算化された「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」の120億円が含まれる。宿泊施設や観光施設の高付加価値化を目的とする改修の補助や廃屋撤去を支援する事業)。
持続可能な観光推進モデル事業では、前年比1.45倍となる2億1700万円を要求。日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)の実践を通じた観光GXや自然環境・地域資源の保全・活用等に関する取組みを推進し、国際認証の取得などを通じたモデルケースの創出を目指す。具体的には、観光GX推進やオーバーツーリズムの防止などを目的とした実証を実施。また、補助事業として地域における持続可能な観光計画の策定を支援する。
また、観光地・観光産業における人材不足対策事業に2.67倍の4億円を要求した。特に宿泊業の人手不足の解消で設備投資支援、外国語人材の確保、経営の高度化を進めていく。
通訳ガイド制度の充実・強化では、前年度予算1.19倍の7900万円を要求。多様な訪日外国人旅行者のニーズに対応できる通訳ガイドの確保の観点から、旅行会社などが全国の通訳案内士を検索し、業務の依頼ができる情報検索サービスを運営するほか、研修なども実施する。
アウトバウンドや教育旅行の推進も
地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組の要求額は前年度予算1.05倍の63億6100万円。そのなかで、双方向交流の拡大に3.50倍の7000万円を要求した。
インバウンドと日本人の海外旅行(アウトバウンド)の両輪で双方向交流拡大に向けた取組みが必要との観点から、アウトバウンド重点デスティネーションの各国・地域の政府観光局と連携体制を強化し、海外旅行の情報発信の促進や、旅行ニーズに即した海外旅行商品の充実を進める。
また、海外教育旅行もさらに促進。SDGs教育など付加価値の高い海外教育旅行プログラムの開発に加えて、旅行会社、学校関係者および各国・地域の政府観光局などとの連携で、現地ならではのプログラムの開発や実証を行う。
処理水による風評被害対策
復興枠では、ブルーツーリズム推進支援として、前年比1.61倍となる4億3500万円を要求。ALPS処理水の海洋放出による風評への対策として、海の魅力を体験する海洋レジャーを目的とするブルーツーリズムを展開し、国内外からの誘客と観光客の定着を図る。
このほか、国際観光旅客税の活用では負担者の納得が得られること、費用対効果、地方創生などの政策課題との合致を基本的な考えとして、特に新規性・緊急性の高い施策に充当していく。