【年頭所感】観光庁長官 髙橋一郎氏 ―持続可能な観光の実現へ、さらなる高みを目指す1年に

観光庁長官の髙橋一郎氏が、2024年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

髙橋氏は、観光需要が着実に回復しているなか、観光立国推進基本計画で掲げた「持続可能な観光」の実現に向け、一層注力していく意欲を示した。特に計画の柱となっている「地方を中心としたインバウンド誘客」「持続可能な観光地域づくり」「国内交流拡大」の3つの分野について、その取り組みを強力に推進していく考え。コロナ前への回復に留まらず、本年をさらなる高みを目指す1年と捉え、確実に取り組みを進めていくと述べている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2024年 観光庁長官 年頭所感

明けましておめでとうございます。

2024年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

人口減少が進む我が国の成長戦略の柱、地域活性化の切り札である観光は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により深刻な影響を受けましたが、官民の関係者で厳しい状況を乗り越えるべく復活に向けた取組を全力で推進した結果、国内外の観光需要は着実に回復してまいりました。

例えば、11月の訪日外国人旅行者数について、コロナ前の2019年と比べた回復率は単月で100%となり、2か月連続でコロナ前の水準を回復しました。また、訪日外国人旅行消費額については、1-9月期の累計は約3.6兆円と、年5兆円の政府目標の達成も期待できる水準になっており、日本人の国内旅行消費額についても、年20兆円の政府目標達成が視野に入るペースとなっています。

本年は、こうした良い流れを更に確固たるものとし、昨年3月に策定した観光立国推進基本計画に掲げる「持続可能な観光」の実現に向けて一層注力すべく、「地方を中心としたインバウンド誘客」、「持続可能な観光地域づくり」、「国内交流拡大」の3つの分野の取組を強力に推進していきたいと考えています。

まず第1に、地方を中心としたインバウンド誘客です。

消費額については基本計画の目標達成が視野に入りつつありますが、日本のインバウンドが更に成長を遂げていくためには、まだまだ大きなポテンシャルを秘めている地方部の魅力を引き出して、力強く誘客を進めていくことが重要であると考えています。今後、地方部への誘客をより一層強力に推進し、全国津々浦々あまねく観光客を呼び込んでいくため、自然、文化、食、スポーツ等の観光資源を活かして、全国各地でこれまでになかったインバウンド需要を創出する、特別な体験の提供等によるインバウンド消費拡大・質の向上や、地域の観光資源を活用した地方誘客に資する観光コンテンツの磨き上げに取り組んでまいります。

また、高付加価値旅行者の地方への誘客の強化のために、昨年3月に選定した11のモデル地域において、高付加価値旅行者を惹きつけるコンテンツの創出などに一段と力を入れていくなど、地方誘客に向けた取り組みを着実に進めていくことで、インバウンドの明るい兆しをしっかりと成長軌道に乗せてまいります。

更に、高い消費単価・長期滞在の傾向にある海外ビジネス客の訪日を促進していくことが重要です。このため、海外からのミーティング・インセンティブ旅行の誘致促進に向けて、地域一体でのコンテンツ開発等を実施するとともに、国際会議の誘致促進に向けては、MICE施設における情報インフラの整備、コンベンションビューローと大学との連携強化など誘致体制の抜本的強化を図ってまいります。

加えて、アウトバウンドの現状については、訪日外国人旅行者数と比較して回復が遅れているものの、アウトバウンドの促進はバランスの取れた国際交流に不可欠であり、インバウンドの増加にも資するものであることから、関係業界、各国・地域の政府観光局などと連携して、各国・地域の魅力の発信、日本国民の皆様への海外旅行の呼びかけやパスポート取得のサポート企画など、本格的なアウトバウンド回復に向けた機運醸成の取組を更に加速させ、双方向交流拡大に向けたプロモーション強化に取り組んでまいります。

第2に、持続可能な観光地域づくりです。

持続可能な観光地域づくりは、環境面はもとより、経済的・社会的な観点でも持続可能性を意識することが重要であると考えております。基本計画では、2025年までに持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数を計画策定時の12カ所から100カ所とすることを目標としており、目標達成に向け、地方公共団体やDMOによる観光地のマネジメント体制の確立に向けた優良モデルの構築や持続可能な観光地域の実現に向けた旗振りや調整を行う地域の人材の育成・創出に、より一層取り組んでまいります。

また、国内外の観光需要が着実に回復してきた一方で、観光客が集中する一部の地域や時間帯等においては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念が生じております。昨年10月に策定した「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」にもとづき、観光客の受け入れと住民の生活の質の確保を両立しつつ、持続観光な観光地域づくりを促進するため、地域の実情に応じた取組の実施への包括的な支援を全国約20地域で実施し、オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた先駆モデルを創出してまいります。

また、観光産業については、『持続可能なあり方』で稼ぐ力をいかに高めていくかが重要であり、成長に必要な投資や働き手の処遇向上を進め、次世代に向けて観光産業全体を発展的な形で成長させていくことが必要です。宿泊施設、観光施設の改修等を計画的・継続的に支援し、観光産業の再生高付加価値化を促進するとともに、観光DXの推進にも取り組み、地域内の宿泊施設などにおける予約・在庫等のデータ共有や利活用を図る取組みなどへの支援を行い、地域単位での業務効率化等を推進してまいります。

これらの取組を行いながら、外国人材の活用も含めた人材の採用活動支援や、業務の効率化や省力化に資する設備投資への支援等、総合的な人手不足対策を実施し、人手不足の解消に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

第3に、国内交流拡大です。

地域の観光資源を一層魅力的なものに徹底的に磨き上げるとともに、テレワークを活用したワーケーションの推進や、反復継続した来訪の促進、ユニバーサルツーリズムといった国内における新たな交流市場の開拓に、従来の取組を更に進化させて取り組んでまいります。

観光庁といたしましては、コロナ前の水準までの回復のみならず、本年を更なる高みを目指すための1年と考え、しっかりと取組を進めてまいります。

観光関係の皆様、国民の皆様におかれましては、今後とも観光政策に一層のお力添えを賜りますようお願い申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。

観光庁長官 髙橋一郎

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