日本人の海外旅行市場の回復が遅れるなか、法人の団体旅行が活性化しつつある。日本旅行業協会(JATA)によれば、すでに2019年水準を超える受注がある旅行会社もある。その旅先のひとつとして注目を集めているのが香港だ。日本からの距離、質の高い食事、受け入れ体制など団体旅行には欠かせない要素が揃う。
香港政府観光局日本局長 堀和典氏と、コロナ禍が明けた2023年に香港への団体旅行を実施した、JTB水戸支店、JTB大阪第二事業部の担当者に、団体旅行のデスティネーションとしての香港の魅力をきいた。
食から体験、ベニューまで団体旅行に適した香港
香港には、コロナ前から社員旅行や報奨旅行などの多くの団体を受け入れてきた実績がある。2012年からの10年間の100人以上の団体の実績を見ると、最も多い自動車販売店をはじめ、ハウスメーカー、建設、保険会社など、幅広い業種で香港が選ばれている。
香港が団体旅行に適したデスティネーションであるのには訳がある。まず、距離が近いこと。フライト時間は往路で平均4時間半。香港政府観光局の堀氏は「機内で食事をして、映画を1本ちょうど見終わる時間で、体にも負担が少ない」と話す。他の中距離デスティネーションに比べ、航空運賃や燃油サーチャージなどのコスト面でも優位性があり、さらに日本の地方空港とのネットワークも充実している。
参加者同士の思い出に残る演出が豊富なことも魅力だ。例えば、中国茶道、点心や中国菓子づくり教室、カンフー教室、太極拳教室、ドラゴンボートレースなど。企業がチームビルディングのコンテンツとして活用するケースも多い。
そして、香港は言わずと知れたグルメ天国。2024年3月14日に発表された「ミシュランガイド香港・マカオ2024」では、3つ星に7店舗、2つ星に12店舗、1つ星に60店舗、ビルグルマンには67店舗が選ばれている。さらに、レストラン格付け「ラ・リスト」の「トップ1000レストラン2024」でも、「フォーシーズンホテル香港」にある広東料理「龍景軒」が最高得点を獲得するなど、様々なレストランが高得点を獲得し、ランクインしている。
多彩なイベント会場が揃うのも香港の特徴の一つだ。人気のユニークベニューの一つが「香港ディズニーランド」。パーク内のレストランだけでなく、シアターも貸し切ることが可能。また、ナイトタイム・スペクタキュラー「モーメンタス」では特別観覧席とブュッフェディナーを組み合わせた手配ができるほか、キャラクターグリーティングなどディズニーらしい演出も可能だ。また、ホテル内にもファンクションルームがあり小人数からでも利用できる。
そのほか、香港にある競馬場や「ザ・アバディーン・マリーナ・クラブ」など通常メンバーシップを取らなければ入れない会員制施設、「ピーク・タワー」の屋上「スカイ・テラス428」、「インターナショナル・コマース・センター(ICC)」にある「スカイ100香港展望台」、香港で一番高いところにある「ザ・リッツ・カールトン香港」のバーなど、特別感を演出するベニューにも事欠かない。
貸切りは、施設だけでなく、トラム、オープントップバス、ハーバークルーズなどの乗り物も対応している。
注目の新施設が続々オープン
このほか、コロナ禍を経て、香港では新たな施設が続々とオープンしており、特に西九龍文化地区の注目が高まっている。2019年1月には、広東オペラと中国伝統の戯曲が観劇できる「戯曲センター」、2021年11月にはビジュアル・カルチャー美術館「M+」、2022年7月には北京の故宮博物院から貸与された美術品が展示される「香港故宮文化博物館」がオープンした。これらの施設には、大人数を収容できるオーディトリアムや階段シアターなど、MICE会場としての設備がそなわる。
さらに、2021年8月には、生鮮食料品市場だった建物を再利用し、新たに「セントラルマーケット(中環街市)」がオープン。約90店舗のショップやレストランが入り、新たなショッピングエリアとして人気が高まっている。
2泊3日の社員旅行で王道の香港観光 —JTB水戸支店
実際に香港を訪れた団体旅行を紹介しよう。
JTB水戸支店は、2023年10月と11月に飲料メーカーのスタッフを対象にした社員旅行を手配した。5年に1度、周年記念として実施しているものだ。
旅行は50名が2班に分かれ、それぞれ2泊3日の旅程で実施。年齢は30代〜50代で女性が多かったという。
香港国際空港到着後、団体特典としてキャセイパシフィック航空のゲートでの出迎えを受け、スムーズに入国。ホテルは「マルコポーロホテル香港」で連泊した。香港の楽しみの一つのグルメでは、初日の夕食は北京料理、2日目の昼食は飲茶、夜は「鯉魚門(レイユームン)」で海鮮三昧の夕食を楽しんだ。
海外旅行が初めての参加者も多かったため、2日目は香港王道の観光を組み入れた。スターフェリーに乗船し、香港一の繁華街「尖沙咀」に渡ったほか、注目の「西九龍文化地区」、寺院の色彩と庭園の静けさが融合した「黄大仙」などを見学、「赤柱市場(スタンレーマーケット)」ではショッピングを楽しんだ。夜はビクトリアピークの夜景を堪能。また、ビクトリアハーバー沿いの高層ビル群を舞台に毎晩開催される音楽とレーザービームのショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を楽しんだ。
JTB水戸支店の小口椎菜氏は、社員旅行の幹事が香港を選んだ理由について、「女性が多かったのでショッピングの機会があること。また、近場で治安がいいところが決め手となった」と説明する。さらに、「参加者を対象にした事前説明会では香港政府観光局からの案内もあり、リアルな現地情報などが、お客様の安心材料になった」と振り返る。
海外旅行の予算は円安などの経済状況から一般的にコロナ前と比較して上昇しているが、その点でも香港はハードルが低かったようだ。帰国後の参加者の反応もよく、「次は、香港ディズニーランドやマカオにも行ってみたい」との声も多く聞かれ、リピートにつながる可能性を感じたという。
自由行動では香港ディズニーランドへ —JTB大阪第二事業部
JTB大阪第二事業部では、医療機関の年一度の社員旅行として、2023年10月に2泊3日で香港旅行を催行。コロナ禍が明けて最初の海外旅行先として香港が選ばれた。総勢64人が参加。初日は午後に到着後、ビクトリアピーク、レパルスベイ、スタンレーマーケットなどの市内観光を実施したが、2日目と3日目は自由行動とし、オプショナルツアーを提案した。
香港が選ばれた理由について、JTB大阪第二事業部の深井俊介氏は、治安がいいこと、近距離であること、観光素材が豊富であることを挙げたほか、女性の参加者が多かったことから、ショッピングや香港ディズニーランドも訴求力が高かったと明かす。実際に、自由行動では若い女性参加者の多くが香港ディズニーランドを訪れたという。
また、コロナ後、久しぶりの海外旅行ということもあり、「(選定の段階で)より海外が感じられるところに行きたいという希望が多く、その点で香港に優位性があったのでは」と説明した。
このほか、深井氏は、香港政府観光局からの情報提供は「非常に助かった」と振り返る。コロナ禍の間、市販のガイドブックは改版されておらず、最新情報の入手が困難だったが、観光局を通じて参加者に最新の現地情報を提供でき、「お客様の満足度にもつながった(深井氏)」。そのうえで、「食事の面でも、受入環境の面でも、香港は行っていただきやすいデスティネーションだと改めて感じた」と、旅行会社視点での考えを示した。
企業団体向けに様々な特典を用意
香港政府観光局では、「香港リワード!キャンペーン」として、団体向けに様々な特典を用意している。対象は2泊以上する10人以上の企業団体。ウエルカムギフトを進呈するほか、51人以上の団体には、指定された会場への「開運花文字」の提供や、それ以上は人数に応じて「ライオンダンス(中国獅子舞)」などを無料で派遣する。
このほか、香港政府観光局では、旅行会社向けにインセンティブプログラムを展開している。団体の入札があった際にはまずは相談してみたい。
「安心安全な滞在が楽しめるのが香港の強み。簡単な英語で通じるなど言葉の壁も低く、消費税がないところも買い物には有利」と堀氏。最近では、地下鉄(MTR)の一部やトラムでクレジットカードのタッチ決済が可能になるなど移動の利便性も向上。香港の団体旅行では、自由行動もこれまで以上に楽しめるようになっている。
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お問い合わせ:香港政府観光局(旅行業界専用)
- TEL:03-6722-6190
- メールアドレス:tyowwo_trade@hktb.com
記事:トラベルボイス企画部