宿泊施設のキャンセル料問題、JTBとPayn(ペイン)が協業で目指す世界とは?(PR)

キャンセル料の請求・回収業務を自動化するツールを提供するPayn(ペイン)と、JTBおよびJTBビジネスイノベーターズ(JBI)は、旅行関連のキャンセルに関わる課題解決を目指すことで業務提携をした。これにより、JTBとJBIは両社のビジネスパートナーである宿泊施設に対してPaynを推奨。宿泊施設向けデジタル化支援システム「JTBデータコネクトHUB」との連携も開始した。

旅行関連、特に宿泊施設などのキャンセル料の請求は、事業者側が請求をしないまま未回収が散見される状態が長年続いてきた。日々の業務に追われるなか、事業者側も満足に対応できていなかった領域だ。

3社は、なぜ今、この領域に踏み込んだのか? キャンセル料問題を改めて整理しつつ、3社が協業した背景と期待されるシナジーを聞いてきた。

宿泊事業者の課題「収益性と生産性の向上」へ

今回の業務提携が実現したのは、3社が協業することで課題解決を加速できると考えたからだ。「キャンセル料の請求・支払いが当たり前の世界をつくる」というPaynと、JTBおよびJTBグループで金融決済領域を担うJBIが「キャンセルに関する課題を解決するには、一部の事業者だけではなく、業界全体で取り組む必要がある」との考えで一致した。

この課題解決を重視するのは、キャンセル料の請求・回収の自動化ツールを事業の中心とするPaynは当然のこと。JTBとJBIが、この分野に注力するのはなぜか?

JBI事業推進部営業推進ユニット長の小池剛正氏は、同社が宿泊施設に対し、多様な課題に向きあった各種ソリューションを提案していることを説明。「宿泊施設が抱える課題は多岐にわたるが、大きいのは収益性と生産性の向上。人流が止まったコロナ禍を経て、その意識は強くなっている」という。宿泊施設の収益性の改善に向け、その一環としてキャンセル料回収を勧めていく考えだ。

JTBデータコネクトHUB事務局マネージャーの今村考宏氏は連携の背景として、同システムの開発理由を説明。宿泊施設のDXが遅れている要因を「それぞれのデータが連携していないこと」とし、宿泊施設がITを活用して労働生産性を向上できることを目的に、スマートチェックイン、スマートチェックアウトシステムなど宿泊施設の各種支援サービスと管理システム(PMS)をつなぐ「JTBデータコネクトHUB(DCH)」を開発した。その上で、Paynと連携した理由を「魅力あるソリューションベンダーがつながっていることがDCHの価値であり、それが宿泊施設の生産性向上につながる」と説明した。

一方で、宿泊施設に現在の課題をヒアリングしても、キャンセル料に関するコメントが積極的に出てこない。JBI取締役執行役員営業推進担当の大野章平氏は「それだけキャンセル料の未回収が常態化しており、本来あるはずだった売上が失われ続けているという問題意識自体が薄くなってしまっているのではないか」と指摘する。

(左から)取締役執行役員営業推進担当の大野氏、事業推進部営業推進ユニット長の小池氏

消費者が予約通りに宿泊すれば、宿泊施設には予定通りの売上が立つ。しかし、直前のキャンセルやノーショーが発生すれば、運よく同条件での直前予約が入らない限り、確保していた客室は販売機会を失い、スタッフ、サービス、食材などの経費は損失となる。キャンセル料は、これらの損害を補填するものだ。

さらに、大野氏は「たとえ数千円でも、回収に成功すれば100%利益になる。利益率の改善に有効だ」と、宿泊施設にとっての重要性を強調する。

この話を受け、Payn COOの矢崎達則氏は、あるホテルにおける直前キャンセルやノーショーの現状を紹介した。数百室規模のホテルでは、キャンセルやノーショーが日に数十件発生することもある。仮に単価1万円として、1日10件のノーショーが発生すると年間で3650万円を逸失していることになる。

ホテルや旅行会社での勤務経験のある矢崎氏は「宿泊施設は1万円の利益を出すために、多数のスタッフが汗を流し、館内を整えている。今まで見過ごしていたキャンセル料を少しでも回収できれば、純粋な利益につながる。宿泊施設側にその実利を体感していただきたい」と話す。

(左から)Payn創業者・CEOの山下氏、COOの矢崎氏

キャンセル料請求・回収を当たり前にするには

ではなぜ、宿泊事業者はキャンセル料の請求・回収が積極的にできていなかったのか。どのような課題を抱えているのか。

Paynの矢崎氏は、キャンセル料をめぐる問題を整理しながら、こう説明した。

「旅行関連、特にホテルや旅館などでは“お客様は神様”という考えによって、顧客からのキャンセルに対して『今回に限りキャンセル料を免除いたします』という対応を何十年も続けてきた。その結果、『キャンセル料は請求しないもの、されないもの』という誤った認識が定着してしまった。それに加えてマンパワー不足、回収行為の費用対効果の悪さ、ストレスの大きさなどから、キャンセル料問題は解決できない分野として取り残された」。

そのうえで矢崎氏は、この状態を改善していくためには「至極当たり前のことだが、ルールどおりにキャンセル料を請求していくことに尽きる」と言い切った。

「大前提として予約は契約であり、ノーショーは債務不履行。規約や約款でキャンセル料の案内をしており、事業者側には請求する法的な権利がある。請求すれば、社会にもキャンセル料が請求されることは当然のものと受け入れられ、安易な重複予約や無責任なノーショーの絶対数が減少する」(矢崎氏)。

JTBデータコネクトHUB事務局グループリーダーの泉えりか氏は、JTBが募集型企画旅行商品を店頭や電話で販売するケースに触れ「(その場合は)キャンセル料に関する問題はほぼない」と、スタッフが説明する場合は消費者の理解が得られている現状を説明。「宿泊ではオンライン予約が主流になり、予約導線がシンプルなサイトも多い。特に現地精算を選択された場合は、キャンセルポリシーに対する消費者の認識も希薄になりやすいのでは」と指摘する。

(左から)JTBデータコネクトHUB事務局グループリーダーの泉氏、同事務局マネージャーの今村氏

シナジー発揮し、事業者が請求回収しやすい環境へ

宿泊施設がキャンセル料を請求しやすくするためには、マンパワーがかからない環境と業務フローの確立が必要だ。「事業者と消費者の関係をフェアにし、働く人が報われ、消費者がより恩恵を受けられるような好循環を生むこと」を使命に掲げるPaynは、2022年の創業時からこの考えを重視してサービスを設計し、リリース後も機能拡張に努めてきた。

Payn創業者でCEOの山下恭平氏は「請求を当たり前にしていくためには、手間を減らすことが大切。実際に利用いただく事業者の皆様はもちろん、請求をされる消費者のことを理解し、ワンクリックでも負担を減らすことにこだわっている」と話す。

まず、事業者がキャンセル客のデータを入れ込み、内容を確認すれば、キャンセル料の請求と支払い方法を案内するメッセージがメール送信される。外国人のキャンセル客には、多言語で請求することも可能だ。2024年には、キャンセル客の情報をPMSやサイトコントローラーなどから直接取り込み、数クリックで請求ができるよう「様々な媒体から予約・キャンセルデータを取得し、シームレスにキャンセル料を請求することが可能になる技術」で特許を取得した。

最近では、クレジットカードやPayPay、Apple Payなどをはじめとするモバイル決済など、支払い方法の選択肢も拡充。さらに、キャンセル料を支払った客に再来店をしてもらう仕掛けとして、クーポン発行機能も提供している。

矢崎氏は「事業者がキャンセル料を請求し、支払いをしやすい環境を整えることで、世の中に『キャンセル料を請求されたら支払うのが当たり前』という文化が醸成されていく。そして、事業者と消費者とのウィンウィンの関係を築き、ポジティブな関係性でリピーターに繋げていくことができる」と自信を示す。

Paynはキャンセル料の請求・回収に必要な機能をワンパッケージに集約。わずか数クリックで請求から回収、さらにはキャンセル客との新たな関係づくりまで対応可能に

業界を超えた共通の課題、社会を変えるうねりに

今回のJTBとの協業によって、全国にネットワークを持つJTBやJBIの顧客企業に、一気にPaynの認知が広まることが期待される。矢崎氏は「これまでしてこなかったキャンセル料請求に踏み出すのは勇気がいるが、業界リーダーであるJTBとJBIが勧めるなら試してみようという宿泊施設は多い。課題解決への近道になるのではないか」と期待は大きい。

JBIの大野氏は「Paynのキャンセル料に対する取り組みは、イノベーション・パートナー・カンパニーとしてソリューション営業を強化している当社の理念に一致するところがある。今の(宿泊)業界の文化を変え、イノベーションを促してカスタマーサクセスに貢献していく」と話す。

現在、Paynを利用する宿泊施設は大手チェーンホテルだけでなく、旅館など独立系の小規模施設にも拡大。さらに、同じくキャンセルの課題を抱える飲食、キャンプ場、ゴルフ場、レンタカー、美容などの他の業界でも導入が広がっている。

山下氏は、スタートアップの価値は既存の価値観を変えていくこと、起業家として世の中の差分をどのようにつくっていくかを考えることをこだわりとしてあげたうえで「今、業界を変えているという実感がある」と手応えを示した。

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Payn(ペイン)問合せフォーム

本記事で紹介した「JTBデータコネクトHUB」

記事:トラベルボイス企画部

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