フランスのホテル格付は6段階、その基準は?【コラム】

世界のホテル事情(第1回)―フランス編

こんにちは。ホテルマーケティング・コンサルタントの大野惠子です。

今回から「世界のホテル事情」をテーマに、皆様に様々な角度から世界のホテル動向などをお伝えいたします。さて、第1回となる今回はフランスのホテル事情についてご紹介します。


フランスのホテル格付けは6段階、

日本とは異なる基準に要注意

AAA で知られるアメリカ自動車連盟(American Automobile Association)の様々なベンチマークには定評がありますが、世界共通のホテル格付けは、公的には未だ存在しません。目下のところWHR (World Hotel Rating) が、他推薦も含めたホテルの評価基準を設け世界的な格付けの標準化を提唱しています。

フランスのホテルの格付けには紆余曲折がありました。19世紀初頭、英国をはじめとする欧米の上流階級にもてはやされた「パラス (Palace宮殿ホテル、英語読みはパレス)」がフランスに開業したのは、1898年パリ、シャンゼリゼのエリゼパラス( Elysée Palace)が最初。パリに次いで英国人が避寒地として開拓した南仏コート・ダジュールに次々と開業。以来、「パラス」は、ラグジュアリーホテルの代名詞になりました。

1986年にホテルの格付け制度は、0から4星の5段階で制定されましたが、2005年に正式に「パラス」の格付けが加えられ、パリではホテル・ド・クリヨンをはじめ6軒のみを「パラス」に認定しました。その概要は、建築史に残る歴史的な建造物、優れた立地環境と類まれな伝統文化の継承、卓越したサービス、平均客室単価600€以上とスイートルームの充実です。


現行は、先述したとおり世界の旅行者が理解しやすいベンチマークを考慮し、大幅な評価基準の見直しと新基準法の導入と共に、1から5星となり2009年7月に施行しました。以降、何度か改正が行われ、「パラス」が、改めて加えられました。ホテル宿泊業の審査と星認定(Classement des hébergements touristiques)には、下記の5つの指針があり、4と5 が新規に加えられました。全カテゴリーに共通して、ハンディーキャッパーと環境保護への企業努力が義務付けられているのが大きな特徴です。
  1.  親切で丁寧なおもてなし
  2.  快適なサービスの提供と正確な情報の伝達
  3.  サービスの標準化と顧客満足度の管理
  4.  ハンディーキャッパーへの配慮および施設
  5.  環境問題と持続可能な開発への貢献

審査は、義務付けられている事項とオプションでもよいとされる内容があり246項目に及びます。オプション事項は4星認可では30%、 5星においては40%以上のポイントをクリアーする必要があり、規定ポイントを超えて付帯施設やサービスによりポイントを獲得するとスペリュール(Supérieur)認定が付与され表記の例は、4星スペリュールとなります。認定は5年間有効で、2013年10月現在、フランス国内で5星は278軒、パラスは13軒です。

【星 認定のポイント】

  • 1星  44以上の施設サービスにおいて90~169ポイント、170ポイント以上にはスペリュール
  • 2星  53以上の施設サービスにおいて170~249ポイント、250ポイント以上にはスペリュール
  • 3星   83以上の施設サービスにおいて250~379ポイント、380ポイント以上にはスペリュール
  • 4星 104以上の施設サービスにおいて380~569ポイント、570ポイント以上にはスペリュール
  • 5星  120以上の施設サービスにおいて570~649ポイント、650ポイント以上にはスペリュール

フランスでは、業態により4つの宿泊業に大別されていますが、日本人海外旅行者が多く利用するのは、概ね3星から5星の観光ホテルのカテゴリーです。歴史と文化、労働基準や天候の違いから、日本とは異なる意外な事があり、ホテル選択の際に注意するべきと思われる点を特筆してみました。

▼館内設備に義務付けられている事項

  • エレベーター

3星  4階建て以上

4星 3階建て以上
5星 2階建て以上


 
  • バゲージカート

4星以上

  • ポーター常駐

4星以上

  • インターネット・アクセス設備(WiFiまたは LAN接続)

3星以上の全ホテル

  • レセプション・スタッフの常駐時間

3星 :12時間

4星 / 5星:12時間(30室以下)
4星 / 5星:24時間(30室以上)


 
  • 英語を話すスタッフ

4星以上

  • ルームサービス(ルームサービスの義務は5星のみ)

5星 50室以下 19時間 (1日あたりの時間)

5星 50室以上 24時間 (1日あたりの時間)


 

▼客室に義務付けられている事項

  • 客室面積 1人利用 2人利用(WC含む)

3星 11.5m2 13.5m2

4星 14.0m2 16.0m2
5星 20.0m2 24.0m2

  • ベッドのミニマムサイズ (5星以外全カテゴリーに共通)

シングル 90 x 190 cm

ダブル 140 x 190 cm
ツイン 80 x 190 cm  1台あたり

  • 全客室のインターネット・アクセス(WiFiまたは ADSL)

4星以上

  • ミニバー(冷蔵庫)

5星

  • セーフティーボックス

5星

  • エアコン リモコンまたは単独操作が可能

4星以上

大野 惠子(おおの けいこ)

大野 惠子(おおの けいこ)

株式会社ベラミモンド マーケティング・コンサルタント、ホテル&レストランスペシャリスト。2013年6月までコンコルドホテル&リゾート、日本支社長及びアジア地区統括ディレクター。同年7月、株式会社ベラミモンドを設立。約20年に及ぶラグジュアリーホテルにおける営業マーケティングの経験を活かした、国内外ホテルに向けた実践的マーケティングに人気がある。 URL:http://www.belleamie-monde.com/jp.html

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…