国土交通省は2016年4月に施行される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)について、具体的な対応指針(ガイドライン)を作成し、発表した。
障害者差別解消法とは、全省庁が所管する行政機関や地方公共団体、事業者など、商品やサービスの提供側を対象にしたもの。障害を理由とする不当な差別的取扱の禁止や、障害者に対する合理的な配慮の義務(民間事業者は努力義務)などが既定されている。ただし、各事業によってその状況が異なることから、事業者が具体的な取り組みを行なうための一般的な考え方を示す対応指針を作成することも、法律の規定事項となっていた。
「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」の対象は、旅行業や航空運送業を含む9つの事業。
このうち旅行業では、「差別的取扱いの具体例」としては、障害だけを理由に一律にツアーの参加拒否や旅程の一部制限をすることはもちろん、ツアー中に支援措置が必要な場合でも、添乗員などで対応できる専門的知識が不要な軽微な措置で足りる場合に、参加拒否や旅程の一部制限、または介助者の同行を参加条件とすることも対象となった。
一方、障害者から障害の状況や必要な条件・措置について申込時に申告がなく、適切な対応が確保できない場合の参加拒否や旅程の一部制限などは、「障害を理由としない、又は、正当な理由があるため不当な差別的取扱いにあたらない」事例に挙げられた。
また、「合理的配慮の提供の具体例」では、ツアー相談の際に、利用する運送機関等のバリアフリー状況に関する情報提供を行なうことや、ツアー申込を断る際には障害者が安全・安心に参加できる旅行を相談することが、「多くの事業者にとって過重な負担とならず、積極的に提供を行なうべき」事例に記載された。
航空運送事業では、「障害を理由としない、又は正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらない」事例として、客室乗務員の本来業務に付随するものでないことから、食事や化粧室の利用などの介助が必要な利用者に付き添いの同伴を求めることが挙げられた。また、定時性確保のため、搭乗手続きや保安検査に時間を要することが予想される利用者に対し、早めに空港に来てもらうことも記載された。このほか、詳細な内容は、下記の国交省ホームページのリンクへ。
なお、旅行業の具体例について、旅行中に利用される運送等のサービスそのものに係る内容に関しては、運送機関などが主体となるため示されていない。また、障害者解消法には罰則規定はないが、必要に応じて同法第12条に基づき、国土交通大臣が事業者に対し、報告や指導・勧告などを行なうことが、対応指針にも記載されている。ただし、同法以外の旅行業法や民法などの抵触の根拠になる可能性もあることが、旅行業界向けセミナーで説明されたこともある。詳細は下記の関連記事へ。
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