フォーカスライト日本代表の牛場春夫氏は、電通観光ユニット会OTA分科会が開催した「オンライントラベル最新動向セミナー」で、アジア太平洋地域(APAC)のOTA業界の最新動向について講演した。
このなかで牛場氏はAPACのオンライン予約比率が、2018年~2020年ごろに欧州・米国並みの40%超に拡大するとの予測を披露。特にモバイル利用が顕著で、「一気に欧州・欧米を上回る“リープフロッグ現象”(かえる跳び:技術に追いついたものが途中の段階を飛び越えて最先端に進化すること)が起きている」と指摘する。
続くアジアの高成長、オンライン比率では欧米から2~3年遅れ
2014年の全世界の旅行総販売額(宿泊旅行のみ)は約137兆円で、そのうちAPACは約27%の約36.8兆円。APACは2012年に欧州を抜いて世界最大の旅行市場となった後も、年成長率は欧米の2~3%に対し、6.8%の高い成長が2017年まで続く見込みで、さらに勢いを増している。
ただし、オンライン旅行の比率をみるとAPACは2014年でも約28%で、欧州・北米の44%を下回っており、「オンライン比率では欧米の2~3年遅れの推移」。それが急激な成長を遂げ、2018年~2020年ごろに追いつくという見込みだ。
その動きで特異なのは、モバイル。特に中国では2014年にオンライン予約に占めるモバイル比率が5割を超えた。現在、オンライン比率が最も高いのは北米市場の50%弱だが、実はモバイル比率は10%に満たない。しかし、中国では2017年には70%に達する見込みで推移。特にモバイルの伸びを牽引するのはアプリ経由の予約で、中国の航空予約のうち、アプリ経由の利用者は75%を占めるという。
アジアへの投資拡大、スタートアップに異業種の新規参入相次ぐ
さらに牛場氏が指摘するのは、モバイルの利用拡大に伴い、モバイルビジネスを主流としたスタートアップ企業が急激な勢いで増えていること。特にアジアで増えており、こうした企業に日本を含め、各国の投資が集まっている。
スタートアップが集めた資金調達額をエリア別に分けてその割合を比較したところ、2005年~2009年までは北米企業が66%、APAC企業は22%だったが、2014年には北米企業が27%、APAC企業が55%とほぼ逆転した。牛場氏は「APACの旅行市場がものすごい勢いで伸び、これに伴ってテクノロジーも急速に開発されている。こういう現象が特にアジアで起こっている」とまとめた。
エリア別の動向
ちなみに、APAC内の動向については、日本はインバウンドの期待と国内旅行の好調さで、2017年まで年率5%前後の強気の成長を予測。これに対して、中国、インド、インドネシアは今後4年間にわたり、10%~15%と日本を上回る2ケタ増の高い成長を見込む。オンライン比率は2014年、中国は22%、日本は34%、インドは39%だが、2016年には中国が日本を抜いて40%、日本は40%弱、そしてインドは欧州・米国並みの44%になるという。
また、欧州については2015年にオンライン旅行の最大市場である北米に追いつき、2016年には北米の45%を抜いて47%に拡大すると予想。欧州では英国やスカンジナビアのネット比率は56%と高いが、これまで35%以下にとどまっていたドイツやフランス、スペインなどでのオンライン予約の増加が、欧州のネット比率を引き上げるとしている。
取材・記事 山田紀子