急速に拡大する訪日外国人市場。2015年には1900万人を突破し、国が掲げる目標のひとつ2000万人も2016年には達成すると見込まれている。そうしたなか、訪日外国人旅行者への対応でさまざまな課題が出てきているのも事実だ。
宿泊施設にとって悩みのタネのひとつが「言語の壁」。JTBビジネスイノベーターズでは、大手翻訳会社の株式会社Gengoとタッグを組み、そうした宿泊施設の声を解決するソリューション「gengo×JTB」を開発した。そのメリットとは?
訪日旅行者の個人旅行化で高まる翻訳需要
JTBビジネスイノベーターズは、2006年のJTBグループ分社化によって、事業創造部をベースとして独立した。旅行業周辺の新規ビジネスの開発を手がけ、宿泊施設向けに自社ホームページ向けクレジットカード予約決済サービス「JTB Book & Pay」やクレジットカード決済に関わる経費削減を実現する「C→REX」など決済支援ソリューション、ならびBCP対策にも有効なクラウド型ホテル旅館システム(Property Management System)である「INCHARGE 7」を提供している。
「そうした宿泊施設さまとのお付き合いのなかで、よく聞かれたのが、訪日外国人宿泊客の増加にともなう『言語の壁』。JTBとして、宿泊施設さまの顧客満足度を上げていくソリューションとして多言語翻訳の提供を考えた」。JTBビジネスイノベーターズ代表取締役常務・事業開発部長の北上真一氏は「gengo×JTB」開発の背景をそう話す。
サービス開始は2014年12月。訪日市場の急速な拡大に合わせるように2015年の夏頃から「gengo×JTB」の需要が高まってきたという。
北上氏は「訪日外国人旅行者の数が増えたと同時に、その中身も変化してきた。団体中心からFIT化が進み、それにともなって宿泊施設さまの言語対応の必要性も高まってきた」と話し、中国やタイからの旅行者にその変化が特に見られると付け加える。
人力翻訳で7カ国語に対応、厳しい評価で高い信頼
JTBがタッグを組むGengoは、クラウドソーシングの翻訳会社。現在、クラウド上に全世界1万8,000人を超える翻訳者を抱えている。Gengoの翻訳者になるためには、選択式と筆記式の2つの試験に合格する必要があり、合格者のみがGengoの翻訳者として「スタンダード」レベルの翻訳を担当する。合格後、翻訳業務を開始した後でも上級翻訳者によるフィードバックを継続的に行うことで、クオリティーを担保している。
このほか、依頼者と翻訳者とは一方通行ではなく、直接やり取りすることが可能で、必要に応じて翻訳内容を確認することで誤解を回避する仕組みを構築しているのも特長だ。
「gengo×JTB」では現在、日本語からの翻訳は英語、韓国語、中国語(繁体・簡体)、スペイン語、インドネシア語、タイ語の7カ国語に対応。英語を介すると最大35カ国語以上もの翻訳が可能となっている。
「最大のメリットは『人間力』での翻訳」と北上氏。Gengoには、日本への留学や在住経験者が多く、日本の文化的背景や風習を理解している翻訳者が多いという。「機械翻訳の精度は上がってきているが、言葉のニュアンスの違いや固有名詞、地名などはまだ難しいだろう」と人力翻訳の強みを強調する。
また、「翻訳者も繰り返し翻訳することで日本の観光のよさを知ってもらうことにもなり、それが口コミやSNSなどで世界に拡散する可能性もある」と指摘。訪日プロモーションの次のステップとしての役割にも期待する。
安く、早く、効率的に、翻訳の課題を一挙解決
「人間力」による翻訳のほかにも「gengo×JTB」のメリットは多く、宿泊施設が翻訳で抱えるコスト、手間、時間、人材などの課題を解決する。
まずコスト面。「gengo×JTB」では基本手数料や月額使用料など定額料金は発生しない。翻訳レベル「スタンダード」の場合1文字5円の価格設定で、翻訳する日本語の文量に応じた金額だけの支払いになる。同社事業開発室アカウント・エグゼクティブの竹之内崇弘氏によると、「コメントのやり取りだと数百円で済む。月単位だと数千円が大半」という手軽さだ。
また、決済も月払いで簡潔。JTBとの宿泊券契約があれば、既存のJTBクーポン券精算スキームでの支払いも可能。「JTB Book & Pay」など決済支援ソリューションには「gengo×JTB」が付属しているが、もちろん単独で導入することもできる。
操作性でも分かりやすさを重視した。「マニュアルを読まなくても、誰でも直感で操作できるシステム。翻訳したい文章を画面に打ち込み送信するだけ」(竹之内氏)。特別なトレーニングは必要なく、ワードやパワーポイントなどの翻訳にも対応しているため、翻訳が必要なファイルを添付送信することも可能だ。
さらに、翻訳依頼も24時間365日受け付け。翻訳時間も時差がない国であれば、30分から1時間。英語翻訳だと、翻訳者が在住する国との時差があるため、若干時間がかかるが、それでも「夜依頼すれば、朝出勤してきたときには、翻訳が出来上がっている」(北上氏)早さ。これも、クラウドソーシングで常に翻訳者を確保している強みだ。
訪日外国人旅行者が急増するなか、言語対応として外国人スタッフを雇用する宿泊施設も増えてきた。しかし、地方では、人件費や人材不足のために、まだ対応が進んでいないところも多いようだ。そうした宿泊施設では、低コスト、スピーディ、高品質の「gengo×JTB」は大きな武器になる。
また、外国人スタッフをすでに雇っている宿泊施設でも、本来は外国人宿泊客へのおもてなしやサービスでの対応を期待していることを考えると、翻訳という実務的な作業に時間と手間を取られるのは人材活用の面から不本意かもしれない。そうした場合にも、空いた時間で誰でも操作できる「gengo×JTB」の利用価値は高いだろう。
朝食メニューやお土産の説明からSNS対応まで、活用事例はさまざま
それでは、実際にどのような活用事例があるのだろうか。竹之内氏の説明によると、ホテルでは、朝食ブュッフェでの各メニューの説明やアレルギー対策のため食材説明などで活用されているほか、チェックイン時に配布する館内案内パンフレットを多言語で作成しているところもあるという。
また、館内のお土産ショップではお土産の説明。たとえば、長野県にあるホテルのお土産ショップで販売されている「信州りんごタルトケーキ」については、「Shinshu apple tart」と表記し、「A tart filled with Shinshu apple jam and gently baked. Enjoy it with the sweet sour taste of apples」と説明。英語のほか、中国語での説明もつけている。
「宿泊客の国籍にあわせて、翻訳言語数も選ばれているようだ」と北上氏。一番多い翻訳は英語で全体の40%ほど。そのあとに中国語、韓国語と続くが、最近ではタイ語の翻訳も増えているという。傾向としては、英語は必須で、それプラス他言語という依頼が一般的で、食事の説明は3カ国語が多いようだ。
館内サービス以外では、SNS対応での活用も増えているという。レビューへの対応次第では、その後の評価も変わってしまう恐れがある。定型文で返信するところもあるようだが、やはりレビューに即したコメントを人の力で翻訳して返信すると印象もだいぶ変わってくる。口コミ拡散やリピーター獲得のために、「この対応は非常に重要な部分だと思う」と北上氏は強調する。
汎用性の高いソリューション、広がる活用分野
最近では、宿泊施設や観光関連施設以外にも「gengo×JTB」の活用は広がっている。町のお土産屋、家電量販店での免税案内やセール告知など、おもてなしだけでなく、販促に役立つ機会での利用も増えている。さらに、外国人居住者の多いマンション管理会社が注意書きなどで活用する事例も増えているという。
このほか、外国人旅行者の利用が増えているタクシー会社による活用でも潜在性は高い。同社では、新しい決済支援ソリューションとして、2015年10月からタクシー会社向けの「JTB Taxi Plus」のサービスの提供を始めたことから、この分野でも「gengo×JTB」のサービスを拡大していきたい考えだ。
「JTBグループとして、送客だけでなく、期待されている分野ではソリューションも提供していく」と北上氏。必要な時に必要な分だけ。安く、早く、正確に。大きく動くインバウンド市場で「gengo×JTB」の活躍の場はさらに広がりそうだ。
【問い合わせ先】
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- 編集:トラベルボイス企画部