国土交通省は2016年8月30日、2017年度の観光庁関係予算概算要求の概要を公表した。予算要求総額は前年度比52%増の373億6300万円。観光産業を成長戦略の軸に据える政府方針を受け、「明日の日本を支える観光ビジョン」具体化を進める内容となっている。
そのうち、3本柱である「ストレスフリーの旅行環境の整備」に前年度比93%増の155億3200万円、「観光産業の革新と国際競争力の強化」に同39%増の123億4400万円、「地方創生の礎となる観光資源の魅力向上」に同21%増の33億3100万円を要求。そのほか、東北への復興事業(復興枠)に同27%増の57億3500万円を割り当てた。
ストレスフリーの旅行環境の整備
新たに「訪日外国人旅行者受け入れ基盤整備・加速化事業」を設定し、155億円を要求。観光案内所や宿泊施設、空港における環境整備や多言語化・バリアフリー化など、ハード面とソフト面の両方世界最高レベルの環境整備を進める計画。同時に、ビッグデータ活用による検証事業も含めた。
そのほか「ユニバーサルツーリズム促進事業」として、前年度比2%増の3200万円を充当。外国人旅行者のみならず障がい者や高齢者を対象にした旅行環境整備を推進。宿泊施設の評価制度や相談窓口の整備などをおこなう。
観光産業の革新と国際競争力の強化
ここでは「観光人材育成支援事業」として、前年度比7%増の3億9100万円を計上。観光産業を志望する学生や働くことを希望するシニア層や女性などを含めて量と質の両側面から人材育成を進める。「観光MBA」の創設も視野に海外事例研究をおこない、経営人材や中核人材育成を加速する。
また、新たに「健全な民泊サービスの普及事業」に1億3400万円を、「旅行業における情報セキュリティの強化支援事業」に3100万円を要求。広報や相談窓口設置も含めた新たな民泊ルール作りを進めるほか、旅行業者におけるサイバー攻撃や個人情報漏えいなどの事案を回避する対策を早急に進める内容とした。
日本政府観光局(JNTO)によるビジットジャパン事業では42%増の100億円、国と地方の連携による同事業にも20%増の15億円を要求。欧米豪市場や富裕層を含めた市場開拓を主軸におくほか、若年層をターゲットにした訪日教育旅行の促進をおこない、将来の訪日リピーターとなることにも期待。LCCやクルーズの誘致やICTを活用したデジタルマーケティングの強化を行い、効果的なプロモーションを進める。
そのほか、通訳ガイド制度の充実・強化には前年度比156%増となる5000万円を要求。MICE誘致の促進にも19%増の2億3800万円を割り当てている。
地方創生の礎となる観光資源の魅力向上
継続中の「広域観光周遊ルート形成促進事業」では前年度比21%増となる19億9000万円を要求。体験型滞在プログラムの開発・提供や旅行商品の造成、地方公共団体らによる海外に向けたプロモーション支援などを引き続き支援していく。
各地の自然や歴史的景観、海洋資源などを活用する「観光資源を活用した観光地魅力創造事業」には49%増の4億4000万円を計上。ここでは着地型旅行商品の造成や受け入れ環境整備などを含めた事業を推進する。
「テーマ別観光による地方誘客事業」には72%増の1億2000万円を要求。ここでは旅行動機に直接つながるテーマ性を重視し、例えば酒蔵や産業遺産などにも着目。各地の観光資源のネットワーク化をおこない、情報発信力の強化も実施。
そのほか「観光統計の整備」事業として、6%増の5億3000万円を要求。国内外旅行者の消費動向や宿泊旅行統計について、全国版に加え都道府県レベルの統計も明らかにしていく計画としている。