国土交通省航空局は、2017年度の概算要求をまとめた。それによると、要求額は2016年度予算比219億円増の4064億円。歳入は、一般会計からの受入が983億円(前年度851億円)、空港使用料収入が2263億円(同2104億円)、雑収入等が818億円(同890億円)を見込む。
基本方針は「首都圏空港の機能強化」「観光ビジョンの実現と地方創生のための航空ネットワークの拡大」「 セキュリティ・セイフティの万全な確保」の3点。2020年東京オリンピック・パラリンピックの円滑な開催、首都圏の国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者の受け入れ、地方創生などの観点から、引き続き羽田空港の飛行経路の見直しなどによって、2020年までに羽田・成田両空港の年間合計発着枠約8万回の拡大に取り組んでいく。また、2020年の訪日外国人旅行者4000万人、2030年6000万人に向け、空港ゲートウェイ機能も強化。さらに「テロに強い空港」を目指して保安対策もさらに強化する方針だ。
首都圏空港の機能強化
羽田空港では、613億円(前年度498億円)を要求。そのうち「新しい日本のための優先課題推進枠」として295億円を計上した。経路見直しに必要な保安施設や誘導路などの施設整備を進めるほか、駐機場、際内トンネルの整備、川崎市と空港を結ぶ連絡道路整備、A滑走路等の耐震対策を実施する。
成田空港では、要求額47億円(前年度49億円)を設定。観光客受け入れ充実に向け、CIQ(Customs:税関、Immigration:入管、Quarantine:検疫)エリアの利便性向上を図るほか、関連施設の老朽化対策を進める。
観光ビジョンの実現と地方創生のための航空ネットワークの拡大
関西空港・伊丹空港では、38億円(前年度83億円)を要求。老朽化が進む両空港の保安施設の更新などをおこなう。中部空港では前年度12億円の倍増以上となる29億円を要求。老朽化対策に加え、LCC専用ターミナルビルのCIQ施設整備などを実施。さらに中部圏の航空需要会拡大や現施設の活用最大化に向けた検討を進める。
一般空港では、922億円(前年度819億円)を要求。那覇空港や福岡空港での滑走路増設のほか、空港の利便性向上や航空機の慢性的な遅延緩和のため、福岡空港、那覇空港、新千歳空港においてターミナル地域再編事業などを実施する。
空港経営改革推進では前年度同額の6億円を要求。北海道内空港(新千歳、稚内、函館など)や高松空港、福岡空港などを対象に、国が土地などの所有権を留保しつつ運営権を民間に設定する手法(民間委託手法)に関する検討を進める。
そのほか、「観光ビジョン」でも最重要課題と示されたインバウンドの地方誘客に向け、国内線強化や地方空港への国政選就航を促進していく。
セキュリティ・セイフティの万全な確保
保安面では前年度の3億円を大幅に上回る19億円を要求。「テロに強い空港」を目指し、2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに国際テロ対策として、先進的なボディスキャナー、高性能X線検査装置、液体爆発物検査装置などの導入を進める。また、国管理空港の警備体制強化もおこなう。
また、パイロットの戦略的な養成・確保対策として24億5800万円(前年度21億5000万円)を要求。航空大学校の養成規模拡大のほか、教官や訓練機の増強などを図る。
そのほか、ドローン(無人航空機)の飛行に関する安全対策に2億7900万円(前年度1000万円)を割り当て。安全面の課題解決に加え、新産業創出や国民生活の利便性向上のため、適切な認可承認と飛行監督体制の確立を進める。