2016年のツーリズムEXPOジャパンは9月22~25日、昨年より1日増加して4日間の会期で実施する。展示会には世界140超の国地域と47都道府県をはじめ、過去最多の1585コマのブース出展を予定。また、会議・セミナーのフォーラムは2日間に拡大するなど、キックオフイベントのジャパンナイトや商談会を含め、4日間で昨年を1万2000人も上回る18万5000人の来場を見込む。
さらに今年は、今春に包括的連携協定を締結した観光庁とスポーツ庁、文化庁との官民プロジェクト、秋の観光月間「ジャパン・トラベル・マンス」の開幕イベントとしての大きな役割も担う。「海外旅行」「国内旅行」「訪日旅行」の三位一体の旅行イベントとして3年目の集大成となる今年のツーリズムEXPOジャパンについて、旅行業界はもちろん、観光に関わるビジネス関係者が着目すべきポイントをまとめた。
観光を取り巻く環境を反映
ツーリズムEXPOジャパンの規模・内容の拡充が続く理由について、同推進室営業企画部長の福島和彦氏は、「その時期に応じた広がり。常に求められている環境にあわせた成長をしている」と説明する。
官民プロジェクト「ジャパン・トラベル・マンス」の開幕イベントとして重要な役割を担うのも、こうした流れを受けたもの。今春の3庁包括連携自体が背景にあるが、福島氏は「観光を取り巻くものには文化もスポーツもある。時代に市場が対応することで、これらはツーリズムEXPOジャパンにもしっかり取り込まれている」という。
例えば、ツーリズムEXPOジャパン・フォーラムでは、アジア・ツーリズム・リーダーズ・フォーラムが「MICE&スポーツ」をテーマにしているほか、国内観光シンポジウムでは「ガストロノミーツーリズム」を取り上げる。展示会場でもスノーリゾートの特集ブースや、障がい者と健常者が一緒に楽しめるスポーツと旅行を紹介するブースが出展。文化では伝統工芸から、「燕三条 工場の祭典」の参加企業の商品展示なども行なう。
さらに、観光を取り巻く産業全体の広がりも反映。今年は新たに、「オンライントラベルICT」で「ツーリズムテクノロジー」を集めたエリアを展開する。総務省と初連携し、同省所管の情報通信研究機構(NICT)と関連分野の企業などが設立した団体で、多言語音声翻訳の技術開発・実用化を目指す「グローバルコミュニケーション開発推進協議会」のメンバーを中心に出展しており、テクノロジーがもたらす新たな観光の姿を目の当たりにする場にもなる。
すでに同エリアに限らず、展示会の出展者からはビーコンを利用したプッシュ配信など、テクノロジーを活用した仕掛けを希望する声があがるなど、観光事業者でのツーリズム活用は浸透しつつある。ツーリズムEXPOジャパンでも、今年は街歩き観光情報アプリ「ココシル」と提携し、会場内のステージ情報をプッシュ配信する仕組みを用意。そのデータで来場者の動向を把握する取り組みなど、テクノロジーの活用を進めている。
福島氏は、「1つのイベントだが、ツーリズムを捉える上で重みがある。業界の状況や各事業者の取り組みを見える化する場であり、見直す場でもある」と、ツーリズムEXPOジャパンの意義を強調する。
フォーラムとジャパンナイトが大幅拡充
プログラムとして大きく変化するのは、ツーリズムEXPOジャパン・フォーラムとキックオフイベントのジャパンナイトだ。
まずフォーラムは、今年から2日間に会期を拡張。9月22日の初日に行なう「グローバル観光フォーラム基調講演・基調シンポジウム」は、ベルサール東京日本橋に会場を変えて開催する。
「輝き続ける日本、そして世界 -インバウンド4000万人時代の交流大国を目指して」をテーマに、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏と、世界ツーリズム協議会(WTTC)理事長のディビッド・スコースィル氏をはじめ、国内外の観光のキーパーソンが登壇。聞いてもらいたい人に確実に届くよう、今年から完全招待制とした。
それ以外のテーマ別シンポジウムやアジア・ツーリズム・リーダーズ・フォーラムは、業界日の9月23日に東京ビッグサイトで開催。特に海外旅行2000万人に向けた海外旅行シンポジウムは、日本旅行業協会(JATA)副会長でワールド航空サービス会長の菊間潤吾氏をモデレーターに、ジェイティービー(JTB)社長の高橋広行氏、エイチ・アイ・エス(HIS)社長の平林朗氏、阪急交通社社長の松田誠司氏の大手トップが議論する場とし、反響が高いという。
また、実務担当者向けの「ツーリズム・プロフェッショナル・セミナー」では、事例を交えた実務的な内容を強化。JATA内の担当部署で現在、課題となっているものを吸い上げ、テーマを考察した。人材育成や危機管理、苦情対応といった従来の課題から、DMOやRESAS(地域経済分析システム)、位置情報ビッグデータ、シェアリングエコノミーといった話題のキーワードもあり、「旅行ビジネスの多様性が顕著に出ている」と自信を示す。
国内外への発信を強化
一方のジャパンナイトは、日本の伝統芸能や文化の中心である東京・日本橋を舞台に、3つのゾーンで展開。今年はツーリズム業界のキーパーソンが対象の「招待者レセプション」だけではなく、一般消費者の「広報イベント」として公開し、会場規模と開催時間を拡大するのがポイントだ。
メインイベントの「Japan “Smile” Bridge」は夜19時から、中央通りの一部を封鎖し、江戸火消しのパフォーマンスや鹿沼秋祭り、秋田竿灯祭り、熊本牛深ハイヤ踊りなどが練り歩く。これに先立ち、今年は昼にもイベントを用意し、江戸桜通りでは日本橋の銘店や各地のアンテナショップによる「日本橋賑わい広場」を開催。東京日本橋タワーでの「伝統芸能広場」は、メインイベントに登場する山車や竿灯などの組み立て準備の様子が披露され、貴重な機会として話題を呼びそうだ。
ジャパンナイト自体のピーアールも強化し、コレド日本橋などの周辺施設でのポスターのほか、交通広告も展開。ツーリズムEXPOジャパンのFacebookなどSNSでも発信し、その拡散効果も見込む。経済産業省の「コ・フェスタ( JAPAN国際コンテンツフェスティバル )」で海外への発信役として任命された「アンバサダー」(海外留学生)にも、働きかけ、国外への発信も図っていく。
また、日本在住の外国人からの発信も期待する。外国人向けの英文のチラシを配布し、IDを持参した場合に展示会の入場を無料とする優遇策も企画。同時に、「イベント内での商環境を変えていきたい。まだ外国人が来場すると引いてしまうブースもある」と、取り組みの本意も語る。提示してもらうIDは、国籍別の入場データ整備にも活用する考えだ。
観光で最大のビジネスイベント
このほかツーリズムEXPOジャパンでは、九州や箱根など天災に見舞われた地域のセミナーなど、復興や観光振興の応援企画を実施。特に熊本地震に関しては、「レゴで応援 熊本城~熊本へメッセージを届けよう~」を行なう。レゴ認定のプロビルダーが制作するレゴの熊本城に、来場者が寄付参加でブロックにメッセージを書き添え、積み上げて完成させていくというもので、完成品は熊本城に寄贈する予定だ。
これ以外にも様々な企画が出され、「まだやりたいことはたくさんある」と福島氏。今後は特に、「将来像はもう少し、BtoBのイベントに傾斜していきたい」という思いがあるという。業界日を現状以上に活用するための議論もしているといい、「一人でも多くの業界関係者に観光の熱を感じてもらい、活用してほしい。そこで見えた課題はフィードバックをいただき、さらなる向上に繋げられれば」と呼びかける。
インバウンドの急増と社会的な注目の高まりに伴い、観光をテーマにした展示会やイベントの開催が増えてきた。しかし福島氏は、「国内、海外、訪日のすべてをカバーし、海外からも出展者のあるこの規模のイベントは、他にはない」と、ツーリズムEXPOジャパンの価値をアピールする。
なお、ツーリズムEXPOジャパンでは展示会について、業界向けにオンライン上からの事前登録を促している。オンライン登録で含まれる各種データは今後のツーリズムEXPOジャパンに必要な要素を考察し、作り上げるための糧となる。積極的に事前登録を利用したい。