KDDIはVR(バーチャルリアリティ)による遠隔海外旅行サービス「SYNC TRAVEL」を、2016年11月3日、4日の期間限定で実施する。表参道の特設会場で専用のVRゴーグルと現地ガイドが持つ360度カメラをリアルタイムで接続し、観光地の今の様子をVR映像で見ながら、観光案内を受けることができるもの。
ガイドと旅行者は相互に顔を見ることができ、両者のやりとりはもちろん、現地の人々と会話することも可能。KDDIによると、VRでの旅行疑似体験はこれまでにもあったが、リアルタイムで現地を繋ぎ、インタラクティブな交流ができる旅行体験は日本で初めて。
今回販売する遠隔旅行は、ロンドン、バンコク、シドニーで、2日間で限定28組の予約抽選制とする。例えばバンコクでは参拝の作法を学び、タイ最大の寺院「ワット・ポー」の涅槃像を参拝。気にいった風景は専用ゴーグルでその都度撮影でき、マーケットや路面店での買い物も楽しめる。現地ガイドが代わりに購入し、日本で商品を受け取る仕組みだ。体験後は、旅行先の国の飲み物を提供。VR映像と簡易型のVRゴーグル「ハコスコ」も後日、プレゼントする。旅行体験時間はいずれも15分間で、料金は1組2名まで税込み1980円。
申込みの受付窓口は、先ごろ旅行事業を開始したナビタイムトラベルが担当。特設ページで希望者を募集し、当選者の支払いはVR旅行会場での現金払いとする。
ナビタイムジャパンのメディア事業部長・毛塚大輔氏はSYNC TRAVELについて、「現地の人と会話や買い物ができるなど、その場所に行かなければわからない空気感が感じられるのが魅力。この体験を繰り返すことで、旅行に行きたくなる人が増えるサービスだと思う」と述べ、「ナビタイムトラベルでも実際の旅行予約とのシームレスな予約連携ができれば」と、新たな可能性にも言及した。
事業化は視野に入れるも未定
今回の遠隔旅行は体験サービスとして実施するもの。事業化は視野に入れてはいるが、現段階で商品販売の具体的な予定はない。
KDDIのコミュニケーション本部デジタルマーケティング部長の塚本陽一氏によると、「SYNC TRAVEL」は、遠隔地の人の心や想いをKDDIの通信技術で繋ぐ「SYNCプロジェクト」の一環。昨年12月に、飲食事業の「ひらまつ」と実施した遠隔地のディナー会場を同一の場のように繋ぐ「クリスマスディナー」で、通信技術と他業種とのコラボレーションの可能性を感じ、新たなプロジェクトとして旅行を取り上げた。そのため、SYNC PROJCTとしてはコラボレーションの幅を広げながら、事業化を見極めていく考えだ。
特に重視しているのが技術面の課題。没入感のある旅行体験ができるほどの精巧なVR映像をリアルタイムでつなぐには、現状の4G以上に大容量の通信規格が必要になるという。こうした課題や11月3日、4日の体験者の感想も踏まえ、詳細なプランを検討していく考えだ。
「SYNC TRAVEL」コンセプトムービー
取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)