民泊Airbnbが国内自治体と連携へ、岩手県釜石市と覚書締結、旅行者誘致やマーケティング分野などで【追記あり】

岩手県釜石市が民泊Airbnbと観光促進に関する覚書を締結した。Airbnbが国内自治体と覚書を締結するのは初めてのこと。釜石市は2019年のラグビーワールドカップの12開催地のひとつに選定されており、今回の提携をすすめることで地域活性化を目指す。Airbnb共同創設者兼CPOのジョー・ゲビア氏は、発表の記者会見で「世界からの旅行者を釜石に惹きつける」と自信を見せた。

現在、民泊新法は成立に向けて大詰めを迎えているところ。釜石市長の野田武則氏は、それを踏まえて現状に即した体験型の民泊を進めていく方針だ。新法が成立すれば、2019年のワールドカップに向けては新法に沿った民泊施設をAirbnbに掲載を進める考え。

今回の提携内容は、釜石市への旅行者誘致のほか、マーケティング・キャンペーンの実施、大規模イベント時の旅行者来訪への対応、地域災害プログラムの策定などが含まれている。来訪者対応では、民泊ホストに対するネット対応促進のトレーニングや関連資料の提供なども含まれる。

Airbnbは世界各地で自治体との連携を深めている。例えば、アムステルダムでは宿泊税と旅行者税の回収代行を行っており、その都市数は200を超える。今回の国内初の自治体との連携を皮切りに、今後もこうした動きが活発化しそうだ。

**以下は2016年10月20日22時に追記した。

岩手県沿岸部への広域連携も模索、宿泊施設との共存は可能

釜石市の野田武則市長は会見で宿泊施設の現状について言及。釜石市で約1000室、三陸地域全体でも8000〜9000室で、ラグビーワールドカップ期間中に最大で2〜3万人が訪れるとすると宿泊施設が不足する状況が予想されることから、民泊への期待は大きいとした。

また、釜石市は人口減少が予測されているなか、持続可能な社会を目指す「釜石市オープンシティ戦略」を策定。多様な人の交流を促進していくうえで、野田市長は「Airbnbのシステムとノウハウを最大限生かして観光を促進していきたい」と提携の意義を強調した。

一方、Airbnb共同創設者兼CPOのジョー・ゲビア氏は、「この提携によって、日本を含めた世界中の旅行者の釜石市への訪問意欲を高めることができるだろう。それによって、地域活性化にも貢献できる」と発言。ロンドン五輪、ブラジルでのFIFAワールドカップ、リオ五輪など世界的なスポーツイベントでの実績を紹介し、「2019年の釜石市でも同様のサポートをしていきたい」と意欲を示した。

今後の協業としては、釜石市は今年中に各地区で民泊推進のリーダーやサポート役を選定。農林漁家民泊の滞在プランを設計する。Airbnbは、体験型民泊の事例を紹介するとともに登録時のコンテンツなどでアドバイスを行う。2017年には、釜石市が震災復興関連事業として3月に開催する体験プログラム「Meetup Kamaishi」で民泊プログラムを導入し、Airbnbはそのプロモーションを実施する。

さらに、両社は釜石市以外の沿岸周辺自治体への広域連携を模索していく計画だ。さらに、防災関連でも協力。緊急時の宿泊施設提供を含め地域災害対応プログラムの構築に向けたガイドラインを策定してく方針だ。

このほか、野田市長は民泊が既存の宿泊施設に与える影響について、「宿泊施設は絶対的に不足する。民泊は、『ホーム』を体験してもらうことにあり、既存の宿泊施設とは趣旨が違うことを伝えていく」と述べ、両者の共存は可能との見解を示した。

また、来春成立が見込まれる民泊新法については、野田市長は「これから勉強していく」との発言にとどめた一方、ゲビア氏は「(日本での環境整備は)着実に前進している」との認識を示し、「日本政府が掲げる訪日外国人4,000万人の目標に貢献していける」と自信を示した。

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