欧州でZ世代の旅行需要が減少か、トランプ大統領の関税問題が影響、不確実性のなか予約控えの指摘も

写真:dpa(ロイター通信)

欧州の航空会社では、夏に向けて収益性の高い旅行シーズンの到来に期待が高まる一方、経済の不確実性によって需要が鈍化し、収益が脅かされる可能性があるという懸念が高まっている。

このほど、欧州旅行委員会(European Travel Commission)は、2025年の4月から9月の間に旅行を計画しているZ世代旅行者が、昨年と比べて約10%減少しているという調査結果を明らかにした。

パンデミック収束後、航空業界は力強い回復を見せ、旅行需要は底堅いと見られていたが、この結果は、それが減速する可能性があるという兆候を欧州で初めて示すものとなった。

その要因の一つが、米トランプ大統領の関税導入の脅威による世界経済の不安定化。欧州の景気が後退し、消費者支出と旅行支出が打撃を受けるのではないかとの懸念の声が多く上がっている。

Z世代は特に価格上昇に敏感だと言われている。欧州旅行委員会のエドゥアルド・サンタンデールCEOは、「ここ数年、Z世代は旅行に関して概して慎重になり、その上の世代に比べて旅行の計画数が少なくなっている」と明かす。また、「単純なレジャー旅行が若干減少している一方、特定のイベントのために旅行をする傾向が強まっている」と付け加えた。

ライアンエアは、今夏の航空券価格は若干上昇する可能性があるものの、昨年の損失を取り戻すことができない恐れがあるとの認識を示す。一方、エールフランス-KLMは、大西洋横断旅行を促進するため、エコノミークラスの運賃値下げを検討すると発表した。

1月にトランプ米大統領が就任して以来、政治リスクや移民問題への懸念から、欧州から米国への旅行予約は減少している。ある欧州の航空会社幹部は、米国が4月初旬に大規模な関税を課した直後から、国際線の需要が若干変動し、一部の乗客は政治的な不確実性が落ち着くまで予約を控えているようだとコメントしている。

一方、航空会社の業績については、まだ過度に懸念していないとするアナリストもいる。調査会社デイビーの株式アナリストであるスティーブン・ファーロング氏は、航空会社は供給能力の伸びを緩やかに抑えており、需要は「十分に堅調」で、航空会社にとって妥当な収益を維持できるとの見解を示している。

欧州内では異常気象で需要動向に変化も

欧州の旅行市場では、別の懸念もある。異常気象と気温上昇による需要の変化だ。欧州の旅行者の間で、イタリアとスペインは依然として人気の目的地だが、ある調査によると、今夏の南地中海への旅行に対する関心は昨年比で8%減少している。

一方で、約28%は、高温を避けるため、より涼しい気候の地域への旅行を希望。北欧、中央ヨーロッパ、東欧への旅行への関心は前年比で高まっている。

その調査では、「気候変動が旅行の意思決定やパターンに影響を与えているため、気温が高くなる可能性がある地域の観光事業者は、暑い時間帯では屋内アクティビティを促進し、マーケティングと販売計画を比較的穏やかなオフシーズンに重点的に展開すべきだ」と進言している。

※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。

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