HIS決算発表、売上高が2割増で過去最高、世界市場の拡大狙いオンラインプラットフォームを構築へ -2018年10月期

エイチ・アイ・エス(HIS)の2018年10月期(2017年11月1日~2018年10月31日)の連結業績は、売上高が前年比20.2%増の7285億5400万円、営業利益は13.3%増の180億2400万円、経常利益は1.1%減の194億4000万円、当期純利益は17.3%減の109億7100万円となった。

既存旅行業(売上:6%増の359億円)および昨年と今年2期から新規連結としたM&A効果(182%増の865億円)で、売上高は過去最高、営業利益の増益に寄与した。しかし、経常利益と純利益は為替差損5億円(前期は為替差益22億円)の計上や、ウォーターマークホテル札幌と同豪州の不動産売却による特別利益48億円、事業停止したアジアアトランティックエアラインズ(AAA)に関する特別損失35億円の計上で、減益となった。

本業の旅行事業は、売上高が21%増の6513億円、営業利益が22%増の121億円。メリットトラベル、ジョンビュー、ミキグループの新規連結3社の寄与で、海外現地法人の売上高が45%増の1267億円と大幅に増加したほか、日本発の海外旅行も欧州や韓国の需要継続で16%増の4356億円と2ケタ成長を維持。訪日旅行事業も数年前から、個人旅行化を見据えた商材拡充を行なっていた結果、81%増の288億円に成長した。観光庁が取りまとめる主要旅行業者の海外旅行取扱額で比較すると、HISのシェアは20.8%と2割台に達した。

一方、ハウステンボス(HTB)グループは、売上高はHTBエナジーの成長で18%増の436億円となったが、営業利益はテーマパークの入場者数減少とHTBエナジーの燃料コスト増加により6%減の72億円に減益となった。

ホテル事業は、前期第3四半期に子会社化した台湾のグリーンワールドホテルグループが通年寄与し、売上高が47%増の120億円、営業利益が5%増の8億円。九州産交グループは前期の熊本地震後の復興需要の反動減で、売上高が3%減の216億円、営業利益はバス事業の燃料高騰の影響で30%減の5.6億円となった。九州産交グループでは720億円を投じた桜町再開発事業が2019年9月に開業するとし、その後は売上利益が拡大する予定だという。

2019年10月期の連結業績予想は、売上高は8%増の7860億円、営業利益は11%増の200億円、経常利益は8%増の210億円、当期純利益は前期並みの110億円と発表。HIS代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏は「気持ちとしては、売上高で8000億円を超え、10%増の2ケタ成長をめざしたい」と意欲を示した。引き続き、大型M&Aを検討しており、「それを足せば楽勝」との見通しも述べた。

今後の展開:旅行事業は世界展開を強化

独自のオンラインプラットフォーム構想の概要も

決算発表会で澤田氏は、旅行業について「できる限り2ケタ成長させる」方針で、売上高は2019年に7000億円、2020年に8500億円の推移をめざす。特に、拡大を続けるグローバル市場で「ノンジャパニーズ(海外発需要、訪日含む)をいかに取り組むかがキーワード」(取締役常務執行役員の織田正幸氏)とし、強化する方針。ノンジャパニーズによる売上高は現在、海外での旅行事業全体の2500億円に対して10%ほどであるが、5~6年先の45期には海外事業の社内目標とする売上高1兆円の半分を占めるまでに、大きく引き上げる考えだ。

これに向け、成熟市場ではローカルのアウトバウンドオペレーターとグローバルのインバウンドオペレーター、現地のインフラコンテンツプレイヤーを中心に、積極的にM&Aを仕掛けていく。一方、未成熟市場とするアジアや中近東などでは「HISの力でもやっていける」(織田氏)とし、市場を見極めながら展開していく方針だ。

さらに、海外事業では、オンラインのグローバルプラットフォームを構築。かねてより公言していたOTA事業で、海外拠点で日本人向けに販売していた各国インバウンド商品を、日本人以外にも一斉に販売することで、グローバル販売を拡充する。

プラットフォームではホテルやアクティビティなど、HISのオリジナルコンテンツを主力商品とし、直販のBtoCはもちろん、HISのグループ会社である台湾のKKdayや中国のLY.com、韓国のINTER PARKなどのOTAや、M&Aで獲得したミキグループ、ジョンビューなどのオペレーターなどにも卸す。グループ以外のプレイヤーとも連携を広げ、エクスペディアなどグローバルOTAやメタサーチにも接続できる流通構築も狙う。2021年に本格稼働の予定で、既に2018年9月にインドに開発拠点を設置している。

グローバルインバウンドプラットフォームの概要:HIS 2018年10月期決算説明会資料より

日本での旅行事業では、海外旅行送客ダントツ1位を目指し、特にハワイ、欧州、クルーズ、沖縄の4点に注力。さらに、取り扱いの少なかった法人旅行事業とウェブ、訪日事業を強化する。法人旅行事業ではMICEやBTMなどソリューション型ビジネスを展開。ウェブは全国一括運用による最適化を図り、訪日事業では自社バスツアーを拡充させていく。

ハウステンボス、ホテルの展開

銀行業への参入検討も

ハウステンボスについて澤田氏は「いまひとつ伸び悩んでいるが、来年から再び増やしていく」との認識を示した。入場者数の減少要因を悪天候の影響に加え、九州の人口減少と説明しつつ、「九州の人口減少は続く。それなら東京、大阪やアジアから増やす」と九州インバウンドの誘致に力を入れる方針。

特に新戦略として、大型客船の拠点港整備で佐世保市が目指す訪日クルーズ客年間100万人をHTBにも呼び込む考えで、アジアの旅行者を惹きつけるための大型イベントも積極的に展開。その他、東京や大阪など国内都市からの誘客も強化し、「来年にはプレミアムチケットの導入など新たな取り組みも行なう。入場客の声を聞き、根本からチャレンジしていく」と、てこ入れする考えを語った。

ホテル事業は「どんどん広げる」(澤田氏)とし、設備投資に今後4年間で800億円を投資。3~5年間で高稼働率物件を中心に100軒を展開する計画だが、2年後の50軒運営時には167億円の売り上げを見込む。2019年には台北、ニューヨーク、2020年にはパムッカレでの開業など、世界展開を図っていく。

このほか澤田氏は、銀行業への参入に意欲を示し、「準備をしていく」と言及。店舗を持たず、スマホで利用できるネット銀行での展開を想定する。既存事業とのシナジーについては現在、旅行代金の支払いはクレジットカード決済が多いことを上げ、「年間数億円を手数料としてカード会社に支払っている。それが自社で金融業をすることで解決できる。いろいろな意味でメリットが出る」と説明した。

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