ブッキングホールディングスは2019年6月初め、宿泊料とは別にリゾート利用料、いわゆる「リゾート・フィー(resort fee)」を徴収する世界のホテルに対し、この手数料もコミッション対象とする方針を採用した。一方、エクスペディアはこのほど、同手数料へのコミッション課金は見送るものの、検索時に表示されるリストの順位で差をつけることを決めた。同手数料を課している場合、表示位置が下がるというものだ。
スキフト報道によると、エクスペディア・ロッジング・パートナー・サービスのシリル・ランケ社長は一連の経緯について「ブッキングではよくあること。(シェアが圧倒的である)欧州市場では、ホテルに対して一方的な施策を突然導入した例は過去にもあり、驚かない」と発言している。
リゾート・フィーとは、ホテルが独自に課金する「追加費用」のひとつ。そのため、金額や含まれる内容(室内の金庫使用料やWi-Fi、新聞代、フィットネスジムの使用料など)も様々だ。その在り方は、世界各地の規制当局や消費者の間でも問題視されている。「宿泊料」と「手数料」という名目に対し、実態としては手数料の金額はかなり大きく、中には宿泊料を上回る手数料が設定されているケースも。米国では、ラスベガスのカジノ・リゾート、ニューヨークシティ、マイアミなどの都市ホテルで多い。
例えばアリア・リゾート&カジノの場合、1泊138ドルのデラックスキング・ルームでは、1日当たり39ドルのリゾート・フィーが加算される。サーカスサーカス・ホテル・ラスベガスでは、基本宿泊費が26ドルに対し、リゾート・フィーがこれを上回る36ドルという客室もある。
ホテルによって異なる「リゾート・フィー」表示、不公平の是正がゴール
リゾート・フィーの細かい内容や表示方法は、ホテルによって異なる。検索結果に最初から明示されているケースもあるが、利用者が気付きにくい表示もある。その結果、ホテルをチェックアウトする段階で、初めてリゾート・フィーの支払いが必要だったことを理解する利用客は少なくなく、請求額に驚愕することもあるようだ。
リゾート・フィー導入の背景には、OTAに支払うコミッションの削減や、検索結果が表示される際、できるだけリストの上位に食い込みたいというホテル側の思惑もある。
エクスペディアのラルケ氏は、自身も決して「リゾート・フィーのファンではない」としつつ、重要なビジネスパートナーであるホテルとの関係を考慮し、コミッション課金はしない方針を決めたと説明する。ライバルのブッキングとの間で、コミッション収入で差が開くリスクについては、ホテル側が、エクスペディアにより多くの客室在庫を卸すようになるなど、「長期的には当社にとって良い結果をもたらす」との見方だ。
ただし、リゾート・フィーは、旅行者から見れば好ましくないものだとも指摘。消費者に誤解を与えないよう、エクスペディアでは、リゾート・フィーについての情報開示を徹底していく方針とする。検索結果の表示順位を決める際、プロダクトの競争力、クオリティー、エクスペディアへの利益貢献度などをもとに、独自のスコアを算出している。リゾート・フィーを設定するホテルは、設定していない場合より、同スコアが下がる仕組みだ。
なお、現状ではオンライン画面上での表示が統一できない理由について、ラルケ氏は「国によって異なるルールや、消費者側の思惑の違い」を挙げている。しかし「利用者が公平な条件でホテルを比較できるようにすることが最終ゴール」とし、「総額」を最初から表示する仕組みが必要だとの考えを示した。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
※オリジナル記事:Expedia Group Rules Out Charging Commissions on Hotel Resort Fees
著者:デニス・シャール氏(Dennis Schaal)