日本政府観光局(JNTO)は定例の会見を開き、急激に落ち込んだ韓国市場の現状認識や今後の取り組みについて説明した。同局企画総室総室長の金子正志氏は、日韓関係の悪化を受けて2019年7月と8月に韓国からの訪日客が急落したことについて触れ、「特定市場に依存するリスクを再認識した」とコメント。今後も「一本足打法ではなくタコ足打法になる必要がある。そのためには足腰を強くしていくことが大切」との認識を示した。
今年8月の韓国からの訪日客は前年比48%減とほぼ半減し、2ヶ月続いて前年割れとなった。しかし、金子氏は、韓国市場の成長率の鈍化は、昨年夏の自然災害以降続いていることから、「(今夏の急落は)急に起こったものではなく、過去一年ほどの流れ」だの考え方を示した。
8月の韓国市場の現状を詳しく見ると、関西、福岡など西日本での減少が目立ち、特にクルーズ客の落ち込みが大きい。年代別では、ほぼ全世代で前年比を下回っており、特に女性客の減少率が53.3%と男性の42.5%を上回った。
ただ、韓国市場を除いた訪日客数では同11.5%増。特に主要な東南アジア市場やロシアでは20%以上の増加を記録するなど順調に推移していることから、「(全体の)増加トレンドは変わっていない」と強調した。
今後の韓国市場への取り組みについては、情報発信と関係者との連携を継続していくほか、状況に応じてプロモーションを即時再開できる体制を維持する考え。また、「現在、訪日してくれている韓国人旅行者は非常に大切な層。今後のためにも全力でサポートしていきたい」と付け加えた。
また、金子氏は政府目標である訪日客4000万人についても言及。残り4ヶ月で同13.2%増が必要となるが、韓国以外の市場が好調に推移しているほか、現在開催中のラグビーワールドカップによる増加も見込めることから、「それほど無茶な数字ではない」との認識を示した。
このほか、東京2020に向けた取り組みとしては、混雑を回避するために訪日を控えるクラウディングアウト対策として、東京以外での宿泊、地方への誘客、オリ・パラ開催時期以外での誘客の3つの分散化を進めていく方針。さらに、地域や関係事業者などに対して、特別感やお得感のある「2020年限定の特別プログラム」を造成することを検討してもらう考えも披露した。
新たな市場開拓としては、体験型やスポーツツーリズムに注目。スノー、ゴルフ、ダイビング、バードウォッチング、アドベンチャーなどの分野を、日本の魅力や特徴を交えながら訴求を強化していく方針だ。