サウジやドバイ等の中東地域で大型観光開発が加速、未来都市開発プロジェクト「ネオム」から高級ホテル開業まで【外電】

サウジアラビアは、巨大都市開発プロジェクト「Neom(ネオム)」の名を冠した新しい投資会社、ネオム・インベストメント・ファンドを設立。潤沢な資金を投じる先は、未来志向であり、変革を促す世界各地のビジネスとしている。

サウジアラビアの大型都市プロジェクト「ネオム」が、投資ファンドを設立した。ネオム・インベストメント・ファンドが注力するのは、テック・スタートアップに投資するベンチャーキャピタル、買収や合併などになると同社は説明。また合弁事業を通じてグローバル組織とも連携し、様々な産業を活性化したい考えで、その一つが旅行・観光分野だ。

ネオムは、新規開発が進むサウジアラビアの未来都市。新しい時代にふさわしい持続可能性と居住性、そしてツーリズムの世界指標になることを目指している。当該エリアでは、さまざまなギガ・プロジェクトが計画されている。例えば、ザ・ライン、スキーリゾート「トロジェナ(Trojena)」、ヨットが楽しめる超富裕層向けの島「シンダーラ(Sindalah)」など。計画通りに実現すれば、ネオムの総資産価値は5000億ドル(約75兆円)にのぼる。

「ネオムのビジョンは、地球規模の課題解決に取り組み、暮らし、資源保全、経済活動の在り方を新しく定義すること。これを実現するために必要な戦略的投資を行う子会社がネオム・インベストメント・ファンドで、重要な役割を担う」とネオム最高経営責任者のナドミ・アル・ナスル氏は話した。

「同ファンドは、サウジアラビアが掲げる大きな目標実現を、ネオムが長期的に支えていくためのもの。(脱石油など)経済の多様化、雇用創出を進める上での足場固めだ」。

戦略案は、ネオムの開発目標に沿うように、機関投資家やイノベーターたちと共に考えられた。この新しい都市で「グローバル規模の成長ビジネスや経済活性化に参画するチャンスには、リスクも伴うため、これを軽減する」と同ファンドの最高経営責任者、マジド・マフタイ氏は付け加えた。

旅行業で有事への備えは欠かせない

中東各国の政府にとって、頻発する危機からツーリズムを守り育てていくために欠かせないのは、「長期的な視野に立つこと」。こうアドバイスするのは、バーレーンを代表する論客であり、過去には同国有投資会社、マムタラカトのCEOも務めたカリド・アル・ルマイヒ氏だ。

10月末にリヤドで開催された会議で、同氏は、3年に一度ほどのペースで何かしらの有事が発生しているのが中東地域だと指摘。現在は、イスラエルとハマスの紛争がある。

同氏は「世界で起きることに対し、政府はどう備えるべきなのか?その答えは、長期的な視野を持つことだ。中東地域において、危機の勃発はめずらしくなく、3~4年ごとに何か起きている。例えば、ホテルを建てるなら、数十年単位で考える必要がある」。

「各国政府にも、長期的な視点に立った政策作りが求められている。リスク内容は、その都度、異なる。安心できる投資環境を整えること、緊迫した情勢になっても、投資家が不安にならないようにするべきだ」。

巨大プロジェクトであるネオムのほか、中東では多くの観光開発が進んでいる。主な動向を以下にまとめた。

ホテル「25アワーズ」のレジデンスがドバイで開業

ライフスタイル系ホテル、エニスモアは、同社ブランド「25アワーズ」による居住者向け施設「25アワーズ・ハイマート(Heimat)」をドバイの観光名所、ダウンタウン地区にオープンする。ハイマートは、ドイツ語で「故郷」の意味。部屋タイプは、スタジオ仕様から1~3ベッドルームまで複数で構成。開業予定日はまだ明らかにしていないが、ドバイで相次ぐブランド系レジデンス開発の最新計画の一つだ。

エニスモアは、アコーが今年、新設した居住サービス事業の運営部門、アコー・ワン・リビング傘下ホテルチェーンの一つ。アコー系列ではこの他にも、SLSレジデンス、「ラッフルズ」ブランドを冠したヴィラ、中間価格帯のママ・シェルター・アパートメントなどがビジネス・ベイ地区で開発中だ。

シックスセンシズはサウジアラビアで展開拡大

一方、IHGが手掛けるラグジュアリー・ウェルネスのホテルブランド「シックスセンシズ」はサウジアラビアでの展開を拡大している。通常、同ブランドのホテルは一カ国につき1~2か所だが、サウジアラビアでは、このほどアル・ウラーでの新規開発に合意。2027年に開業予定。紅海およびアマーラ近郊に続く同ブランド3軒目となる見込みだ。

シックスセンシズ・アル・ウラーは、敷地面積120万平方メートル、ゲスト・ヴィラ100棟と25のレジデンスがある。このエリアは歴史ある砂漠地帯で、「生きているミュージアム」の異名を持つ。ユネスコの世界遺産に登録されたヘグラなどの観光名所があり、近年、ラグジュアリーホテル進出が増えている。アル・ウラーでは、他にもハビータス、バンヤンツリー、チェディなど複数ホテルが開業準備を進めている。

空港拡張で世界に知名度が拡がるアル・ウラー

サウジアラビアのアル・ウラーは、世界中から旅行者を迎えることになりそうだ。ここはサウジアラビアの中でも古い歴史と伝統文化を誇る地域で、同地域関係者はマスツーリズムには懐疑的だった。だが、空港の拡張工により、状況は変化しつつある。

アル・ウラー国際空港では新ターミナルを建設中で、受け入れ可能な到着客数は、これまでの40万人から600万人以上に増える見込みだ。空港の敷地面積は約240万平方メートルに広がり、最大15機まで収容できるようになる。

ドバイ、リモートワークできる都市ランキングで世界トップに

ワークモーション社が行ったリモートワークに関する最新調査によると、リモートワーカーが支持する世界の都市ランキングで、ドバイは2位となった。同ランキングは、ビザ制度、リモートワークに必要なインフラ、安全性、移動の便利さ、幸福度、価格、所得税制をもとに評価したもので、ドバイは特に所得税制でポイントが高かった。個人への課税がないからだ。

アラブ首長国連邦(UAE)では、5年および10年間の居住者向けゴールデンビザなど、長期滞在客向けの制度拡充に力を入れており、2022年には8万人が同ビザを獲得した。狙いは、海外から高度スキルを持つ人材を誘致することだ。ドバイの観光当局も、リモートワーカー誘致にフォーカスしている。2022年12月には、エアビーアンドビーと組んで「Live and Work Anywhere」プログラムを展開し、より長い期間、ドバイで仕事しながら滞在することを訴求した。

ドバイの「ファイブ・アイズ」は世界へ進出

ドバイでパーティ向けホテル・ブランド「ファイブ」を展開するファイブ・ホールディングスは、海外展開に向けて動き出した。良くも悪くも、ドバイでは有名な2軒、ファイブ・パーム・ジュメイラとファイブ・ジュメイラ・ビレッジ・トライアングルは、大騒ぎするパーティや音楽イベントの会場として知られ、中東の保守的な人々からは眉をひそめられることもある。同社はイビサ島のナイトクラブ運営グループ、Pacha(パシャ)の買収を米株式市場ナスダックに届け出たことを明らかにした。

その中で同社は「今回の買収は、ファイブ・ホールディングスの成長戦略と世界展開における大きな転換期になる」とコメントしている。買収したのは、パシャ・ナイトクラブ、デスティーノ・パシャ・ホテル、エル・ホテル・パシャ、トイルーム・クラブ、ウームーン・ストーリーテラーズ、そのほか「パシャ」など登録商標マークとしている。

※ドル円換算は1ドル150円でトラベルボイス編集部が算出

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事: Saudi City Neom Spreads Its Cash With Investment Fund: Middle East Report

著者:Josh Corder氏

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