東京観光財団、「デジタルノマド」の共同研究を発表、世界的に観光のすそ野を広げる同市場の現状と今後とは?(PR)

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東京観光財団(TCVB)は、「デジタルノマド」と「アクセシブル・ツーリズム」をテーマに「TCVBオンラインカンファレンス2025」を開催した。「デジタルノマド」研究は、観光産業ニュース「トラベルボイス」と共同で実施。カンファレンスでは、2件の研究成果が報告された。

世界が注目するデジタルノマドとは?

本カンファレンスでは、トラベルボイスの鶴本浩司代表が「デジタルノマド&Tokyo~東京における最新のデータ分析と方策検討~」の研究内容について発表した。

まず、デジタルノマドを「デジタル技術を活用して場所に縛られず、どこでも働くことができる国際的なリモートワーカー」と定義。鶴本代表は「場所にとらわれない自由な働き方をする旅行者で、その地域の新たな住人となりうる」と言い換えた。

そのうえで、ワーケーション、ブレジャー、多地域居住など類似の滞在スタイルとの違いについて説明し、観光庁は、デジタルノマドを質の高い消費と投資を呼び込む原動力と位置付けていると紹介した。

世界のデジタルノマドの市場規模を見ると、人口は約3500万人、関連支出は年間約7870億米ドル(約118兆円)、一人当たりの消費額は約337万円/年になるとの調査がある。

世界ではその潜在力を呼び込むために、50カ国以上が長期滞在可能なデジタルノマドに特化したビザを発給。日本でも2024年4月に諸条件を満たせば最長6ヶ月滞在できるデジタルノマドビザの発給が始まった。

研究ではデジタルノマドの属性も明らかにした。ボリュームゾーンは、30代の独身で欧米が中心。4割が自営業で、3.5割がフルタイムのリモートワーカー。職業はIT関連やクリエイターが多く、年収の中央値は約1300万円。高学歴・高収入で環境意識の強い人物とした。

また、そのトラベルライフを見てみると、一人旅が43.4%で主流。1回の旅行は1〜2ヶ月で、複数都市を周遊しながら生活し、月の予算はおよそ30万円。コリビングや短期賃貸アパートなどに滞在し、日中は仕事、休日やオフタイムは積極的に人と会うことを好む。鶴本代表は「デジタルノマドを捉えるうえで重要なのは多様性。単一の人物像が存在するわけではない」と指摘した。

デジタルノマドのライフスタイル(プレゼン資料より)

そのうえで、今回の研究では、デジタルノマドの人物像を特徴的な3つのタイプに分類した。まず、デジタル技術を持ち、ビジネス機会の獲得や起業、スキルアップを目指し、できるだけ費用を抑えて長期に旅行をする「ソーシャル型ノマド」。2つ目が、1カ国に長期滞在しながら、旅行よりも暮らすことに重点を置き、地域コミュニティとの関係を好む「スローマド型ノマド」(スローマドは、スローとノマドを組み合わせた造語)、3つ目が高額かつ安定的な本業収入があり、快適性、高級感、洗練されたライフスタイルを維持しながら旅をする「ハイエンド型ノマド」。鶴本代表は、「ソーシャル型をイメージしがちだが、スローマド型とハイエンド型のポテンシャルも高い」とした。

デジタルノマドの特徴的な3つのタイプ(プレゼン資料より)

東京のハブ機能を強化し、日本全体を1つの目的地へ

次に、東京の潜在力についても言及。デジタルノマド向けの情報サイト「Nomad List」によると、東京は都市ランキング上位にランクイン。安全で人が優しく、食や体験も豊富などの点が評価されている一方、英語が通じにくく、親密な人間関係の構築が難しい点が短所として挙げられた。研究では、東京でノマドライフを経験した5人へのヒアリング結果も盛り込んでいる。

世界各国でデジタルノマドの誘客が進められているが、日本でも観光庁が選定する地域で実証事業を始めている。ただ、日本でもデジタルノマドビザの発給が開始されたものの、現状は、その利用メリットが少ないため、短期滞在ビザで入国し、更新のために一度日本を離れてから再入国する方法が主流になっている。

また、デジタルノマドに適した宿泊施設も課題の一つ。従来型の宿泊施設では、そのライフスタイルのニーズに十分に応えられていない。一方で、ゲストハウスとホテル、民泊を含む短期宿泊賃貸(STR/short term rental)とウィークリー・マンションの間を埋めるコリビングなどの新しいサービスも登場していると紹介した。

研究では現状分析をおこなったうえで、まとめとして今後の「東京のデジタルノマド戦略」を考察。そのなかで、東京が日本のデジタルノマドのハブ機能となり、国内各地での滞在や周遊を繋いでいく存在になれば、デジタルノマドの体験価値をあげることが可能であると提言した。また、都内では、都心などでのシティライフと奥多摩や島しょ部のネイチャーライフで潜在性があるとの見方を示した。

東京独自のデジタルノマド戦略として、各地域と連携しハブの機能を果たす方向性を提案(プレゼン資料より)

そのうえで、考えられる施策として、「Tokyo Nomad Hub」アプリの開発、コーディネーターの設置とコミュニティリーダーの支援、都心と郊外を結ぶ「ノマド・デュアルライフパス」の発行などを提案した。

同カンファレンスでは、もうひとつの共同研究「アクセシブル・ツーリズム」も発表された。本研究では、地域や観光関連事業者がアクセシブル・ツーリズムを推進するために必要な視点や具体的な取組みを整理し、最新の国内外の取組み例とともに考察をした。東京観光財団の公式サイトにて、詳細な研究報告を公開している。

東京観光財団では賛助会員を募集中

東京観光財団(TCVB)は、東京の観光振興に関する各種事業を推進する東京都の政策連携団体。「世界から選ばれ続けるTOKYOへ。」を組織理念に掲げ、様々なパートナーと連携しながら、旅行者やビジネスイベンツを誘致するとともに、地域の観光振興や受入環境を向上するための取組みを幅広く展開している。現在、630以上の企業・団体が賛助会員として参画しており、会員同士の交流やネットワークの機会も充実。また、会員限定のセミナーやサービスも数多く展開している。詳細は、以下から確認できる。

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東京観光財団 共同研究報告書:

TCVBカンファレンス(アーカイブ動画)

問い合わせ:sanjyokaiin@tcvb.or.jp

記事:トラベルボイス企画部

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