旅行・観光ビジネスで役立つ税知識
旅行業と消費税(7)
こんにちは。税理士の菊池美菜です。大手旅行会社と販売代理契約を結ぶ旅行会社の経営者の方から次のご質問がありました。販売代理をする旅行会社が大手旅行会社のパッケージ商品を発売した際に支払われる、受託契約の手数料に関わる消費税の考えかたについて、ご質問にお答えします。
質問:国内旅行の受取手数料にかかる消費税は誰が納税するべきですか?
4月から消費税が8%にUPされますが、旅行会社の受取り手数料(主催会社から支払われる手数料)の消費税についてお尋ねしたくメール致しました。
当社は、大手旅行会社と総合提携店契約を結んおり、大手旅行会社が主催する国内旅行パッケージ商品や海外旅行パッケージ商品を主に発売しております。当社の収入構成の中では国内旅行の受取手数料は多くを占めており、消費税も大きな金額です。
現在、国内旅行のパッケージ商品の手数料には消費税は支払されておらず、契約書上も税込みで記載されています。そこで、国内旅行のパッケージ商品の手数料に対する消費税は以下どちらが正しい考え方でしょうか?
- 大手旅行会社が当社に手数料×1.05%を支払い、その中の消費税を我々が納税する
- 大手旅行会社が当社に支払う手数料は、消費税には関係なく、消費税は我々が支払うもの
回答:税込み手数料の中から、御社が納税するものです。
国税庁では、消費税のことを「預り金的性格を持つ税」と言っています。例えば、給料から差し引かれる源泉所得税は、預り金なので、預かった会社は、預かった金額を国に納めなくてはなりません。消費税は、本体をいくらにするのか、税込みでいくらにするかは会社の任意です。現行の本体100円、消費税5円、合計105円という支払方法をしてくる取引先もあるし、税込み100円で支払ってくる会社もあります。
消費税計算時は、すべてを合算して消費税を計算しますので、税として別にもらったおカネであろうが、税込みだろうが関係ありません。大手旅行会社さんからもらうおカネ全体から消費税を支払うので、考え方としては、2番目に近いように思います。
消費税増税時に、今まで手数料×1.05%だったものが、手数料×1.08%になればいいのですが、税込み価格での支払で、支払額が今までと同じだと、実質的に御社の儲けを減らすことになってしまいます。
▼編集部からの補足
ご質問いただいた旅行会社は、決算書上での取扱額は約3億円、実額の取扱額(年商)は約30億円の旅行業専門の会社。海外パッケージ商品では、受託契約で手数料+消費税(現在は5%)という形で、手数料と別に消費税が支払いをされているので、税込みで契約している国内商品についての質問をいただきました。
10%まで消費税が上がることを見据えた経営者の方からの質問。こうした販売代理店の利益を削らないためにも、消費増税分の手数料が上がる契約に移行されることが望まれますが、今後の動向を見守りたいところです。
質問者様は「薄利多売な業界なので一旦預かった税金も利益と思いたいのが正直なところ。これからは毎月別な口座に消費税を貯める様にしたい。」とのコメントをいただきました。
今後も読者の方からのご質問をお待ちしております。
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