このほど社名変更をおこない、名実ともにDeNAの看板を掲げたDeNAトラベル(旧エアーリンク)。2007年から本格的に海外航空券のオンライン予約を始めた同社が、成長をしてきた背景はどこにあるのか?
前回の記事では、同社の今後の戦略に触れた。今回は、同社の成長のきっかけとなった“転機”と、その取組みについて中野正治社長の話をまとめた。
成長の転機とは? -航空券販売の環境変化にいち早く対応
DeNAトラベルの2014年度の年間取扱高は約400億円。ファックスや電話で海外旅行を取り扱っていた2006年当時のエアーリンクの年間取扱高70億円から大きく成長した。成長の転機についての問いに、「海外航空券販売の環境の変化だった」と中野氏は振り返る。
ゼロコミッション、PEXの下限撤廃、IT運賃の見直しなど、航空業界と旅行会社のビジネスに大きな変化が起き、旅行業界側に非常に厳しい環境が表面化してきたのが2008年。同時にリーマンショックなど外的な経済状況の変化も大きく、「旅行者から手数料をもらわないとビジネスが成り立たなくなってきた(中野氏)」。
航空会社からIT運賃が出にくくなることを想定して、早々にエアーリンク(当時)は「PEXをいかに売るか」に戦略を転換したのだという。2010年7月にはGDSのガリレオとオートPEXの仕組みを立ち上げ。事業の方向性を明確にしながら、システムへの投資を加速させたことで、海外航空券販売のコンバージョンレート(成約率)は30%も増加した。
現在、航空券販売ではマルチGDS化を構築。ガリレオに加えて、アマデウス、インフィニ、さらにLCCエンジンを備え、多様なニーズに対応している。また、ホテルでは、海外でエクスペディアを皮切りに、Agoda.com、Booking.com、国内ではJTBとそれぞれ提携し、最安値かつリアルタイムで予約可能なものだけが表示される「マルチホテル機能」を実現している。
「安い価格、豊富な品揃、検索の容易さの3点が重要」と中野氏。オンライン系にとって「サービス力は商品力」との考えだ。
重視するのは継続性とスピード感
-システム投資と社内スタッフのスピード感に自信
また、システム投資はDeNAトラベルにとって最も大切な取り組みと位置づける。「システムを一度作ったら終わりではない。継続的に投資を行い、磨きをかける。それは、オンライン系の宿命だろう」と話し、構造的な強みを持つことの重要性を強調。「テクノロジーを駆使して、集客をしていきた。最近では『いいサイトだなあ』と思われるようになってきた」と手応えを示す。
そして、そうした舵切りの実行部隊として現場を支えてきた社内スタッフの存在も大きい。経営者の事業アイディアの着想から、リリースまでの時間が短く、意思決定も早いという同社のスピード感に対応してきた。「機動力をもって、(経営に)ついてきてくれている」と自社スタッフの働きに自信をみせた。
航空券のゼロコミッション化は、欧米を皮切りに日本に上陸。その当時、日本国内でのスタートへのカウントダウンが進む中、大きく舵を切ったことが現在の勝因といえるだろう。環境の変化は、ビジネスにおけるチャンス。DeNAトラベルの対応は、その好事例といえるだろう。
- 聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫
- 記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹