ヤフーは2015年12月15日、高級ホテル・旅館予約サービス「一休.com」を運営する一休の全株式取得。100%子会社化することを発表した。
同日実施されたヤフーの取締役会で合意、株式公開買い付け(TOB)を行うことを決議。両社は資本業務提携契約を締結し、両社の強みを生かして「Win-Win」の関係を継続。事業拡大やシナジー効果創出を加速していく。 ※写真は左からヤフーショッピングカンパニー長の小澤隆生氏、同代表の宮坂学氏/一休代表取締役社長の森正文氏、同副社長の榊淳氏。
一休の発表によれば、2015年8月、同社創業者で代表取締役社長の森正文氏が株式売却の意向を表明。売却後も継続的に一休の成長を支援するパートナーシップを前提に候補企業を選定。最終判断に至ったという。
今回のTOBと資本業務提携を発表する記者会見で、森氏はヤフーを選択した理由を説明。ネット上における集客力や大きな規模感をもつ同社に一休を託すことで、成長へのスピードが加速すると判断したという。
森氏は、来年2月10日をもって退任。今後はヤフーに経営を託し、完全に経営から離れる。新体制では、現副社長の榊淳氏が代表取締役に就任する予定。現経営陣とヤフーから派遣される取締役を中心に新体制を構築していくことになる。
今後の「一休.com」はどうなるのか? -ブランド、ビジネスモデルは維持
一休は現在、高級ホテル・旅館予約サービス「一休.com」のほか、プレミアムな宿泊特化型ホテル予約「一休.com ビジネス」、飲食予約サービス「一休.com レストラン」、海外の高級ホテルを扱う「一休.com 海外」、ギフトチケット販売「贈る一休」、高級ホテル内スパのクーポンを扱う「一休.com スパ」などを運営・提供中。会員は2015年9月末時点で約413万人におよぶ。
ヤフーは今後、「Yahoo! トラベル」「Yahoo! 予約 飲食店」「Yahoo! ショッピング」といったeコマース事業を通じて、一休が有する施設や店舗を広く提供。一休が提供するサービスへの送客と利用促進をおこなう。同時に、メディア事業に強みを持つヤフーを交えた事業シナジー展開を加速することで、より幅広い顧客層を取り込んでいく。
今後の展開について、ヤフー代表取締役の宮坂学氏は「ブランドの整理は考えていない」と話した。「それぞれの会社がそれぞれの顧客を持っているのは尊重したい」として、独立したブランドとして維持・運営していく方針だ。
これまで一休は、ユーザーのサイトへの誘導で大きな広告費を投入してきたが、今回の提携で日本最大級の集客力をもつポータルサイトからの導線を持つことになる。
宮坂氏は、具体的な導線の展開は未定としながらも、「Yahoo!Japanのトップページやトラベル、飲食店、地図などいろいろ考えられる」として検討を進める考え。また、同社が持つユーザーのビックデータ活用も示唆。宿泊や飲食を予約する可能性の高いユーザーを抽出し、紹介していきたいという。
また、ヤフーは一休のビジネスモデルを当面継続していく方針だ。現在、「Yahoo!トラベル」や「飲食店予約」では掲載店舗に対する成約手数料を無料としている。一方、一休は手数料を徴収するモデル。同執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏は、ヤフーの既存サービスが「施設数を増やしていく段階にある」ことを理由に挙げた。
会見では、小澤氏がネット上で後発企業が高級路線のセグメントで一休に追随することが難しかったことを振り返った。一休には、強いブランド力とロイヤリティがあることから、ヤフーに掲載する高級な宿泊施設や飲食店が多いとはいえなかったという。今後、一休ブランドがYahoo!グループとなることで、ラグジュアリーセグメントの予約ビジネスを加速させていきたい考えだ。
なお、今回のTOB買い付け価格は、普通株式1株あたり3433円。発表時の株価から約4割増となり、過去最高益を更新し続ける業績を評価したものだという。買い付け期間は、12月16日から2016年2月3日まで。
関連記事: