観光庁は「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」を設置し、観光の実態を踏まえた旅行業法制の見直しを行なう。方向性の大きなテーマは(1)着地型旅行商品提供環境の整備、(2)ランドオペレーター規制、の2つ。検討会で取りまとめた内容は2017年の通常国会での提出法案に盛り込む予定だ。
2016年3月に制定された「明日の日本を支える観光ビジョン」で、施策として位置付けられた「観光関係の規制・制度の総合的な見直し」の一環として検討するもの。10月6日に開催した第1回会合で観光庁長官の田村明比古氏は、上記2つのテーマについて「喫緊の課題」と述べ、重要性を強調。旅行業を巡る変化として、この数年の訪日旅行者の急増や世界的なOTAの取引拡大、FITの増加など旅行形態の変化があるなか、「観光ビジョンの方向性もある」とテーマの目的を示した。
今回の会合では次回以降の議論に向け、観光庁が観光の現状と問題点を発表。(1)着地型旅行商品提供環境の整備では、訪日客の地方分散やFIT化が進む国内客の誘客を目的に、地方の魅力向上を図る。地域密着型事業者の参入障壁を低減し、より魅力的な着地型商品の企画・提供がしやすい制度整備を目指す。旅行業の登録に一律に必要となっている旅行業務取扱管理者の選任などが、論点の一つとなりそうだ。
(2)ランドオペレーター規制については、これまで旅行業法の対象外であったが、軽井沢のスキーツアーバス事故で露呈したダンピング契約等による安全性の低下に加え、訪日旅行でも一部で免税店などへの連れまわしや高額商品の勧誘などが見られることを問題視。実態把握のため、ランドオペレーターに対して初の調査も行ない、そのデータも公開した。これらを踏まえ、適切な指導・監督ができる制度の導入などを検討していく。
また、既に抜本的な見直しが進められ、今年度中の法案提出が予定されている「通訳案内士制度」の中間とりまとめでも、手配を担う事業者としてランドオペレーターに対する指導・監督制度の導入や、手配を指導するガイドラインの設定などが盛り込まれている。
今後のスケジュールは、11月下旬に第2回検討会で中間とりまとめ、第3回検討会以降に旅行業法制のあり方についてさらなる検討を行ない、最終取りまとめを行なう。第2回検討会の前には、計2回のワーキンググループを設置。ランドオペレーターをはじめ関係団体や地方自治体などのヒアリングや、中間とりまとめ案を審議する。検討会の委員は以下の通り。
【新たな時代の旅行業法制に関する検討会 委員名簿】
- 香取幸一氏: 玉川大学観光学部長
- 久保成人氏:公益社団法人日本観光振興協会理事長
- 小林天心氏:北海道大学観光学高等研究センター客員教授
- 竹内健蔵氏:東京女子大学現代教養学部教授
- 谷口和寛氏:御堂筋法律事務所弁護士
- 三浦雅生氏:五木田・三浦法律事務所弁護士
- 山内弘隆氏:一橋大学大学院商学研究科教授
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