欧州委員会は2016年11月16日、EU域外からの渡航者に対し、新しい事前審査「ヨーロッパ旅行情報認証システム(European Travel Information and Authorisation System =ETIAS)」を導入する方針を明らかにした。対象となるのは、日本など査証(ビザ)免除国からの旅行者が、シェンゲン協定に加盟するドイツ、フランス、イタリアなど26か国へ入国する場合。事前のセキュリティ・チェックを義務付け、より効率的なテロリスト対策強化を目指す。
ETIASで渡航許可を取得する際は、まず旅行者が事前に、個人情報、パスポート、居住地、連絡先などの情報をオンラインで当局へ送信。これを関係各国のデータベースやユーロポール(欧州警察機構)の要注意人物リストなどと照合し、渡航の承認の可否を判断する。特に問題がない場合、申請後、数分で渡航が承認される仕組み。
EUによると、申請手続きに必要な項目は、入力に要する時間が10分を越えない程度を目安とし、原則として有効なパスポートがあれば手続きは可能。「ETIASはビザ制度ではなく、手軽で、旅行者にフレンドリーなシステム」としている。取得した渡航許可は5年間有効。申請料は18歳を超える旅行者から必要で、1人5ユーロを予定している。
欧州委員会のジャン=クロード・ユンカー委員長は、就任当初からセキュリティ問題を頻繁に取り上げており、今年9月に開催された2016年EU一般教書演説で、すでにETIASへの取り組みを表明していた。ETIAS実用化には、今後、欧州議会の承認や諸手続きが必要となるが、EUでは昨年来、新しいテロ対策を、異例のスピードで相次ぎ導入中。今年10月から始動した欧州国境沿岸警備隊は、同委員会の提案から9カ月後という異例の速さで実現している。
フランス観光開発機構の日本代表フレデリック・マゼンク氏は、この動きを「世界の流れ」と認識。欧州への渡航者数には影響しないとの考えだ。効率的なテロリスト対策が行われる仕組みとなる見込みで、旅行者の安全が守られることに期待したい。