日本政策投資銀行(DBJ)九州支店はこのほど、「九州インバウンド観光に向けて」と題する調査レポートを発表した。財団法人日本交通公社(JTBF)と共同で実施した訪日旅行者の意向調査結果をもとに分析したもの。
それによると、調査対象となったアジア8地域では、2016年4月に発生した熊本地震について約8割が「知っている」と回答。特に台湾や香港での認知度が高い結果となった。熊本地震後の熊本・大分への旅行に関する意識では、全体の約7割が「旅行を控えていない」と回答し、過度なマイナスイメージにはつながっていないとみられる。
ただし、訪日旅行者が多い韓国では「旅行を控えている」割合が4割以上に達していることも判明。同レポートではこの「旅行控え」の傾向に対し、外国人向けの安全対策の充実が必要であると提言。例えば災害発生時などの避難誘導やハザードマップなどの多言語化などが求められるとしている。
熊本地震後の九州旅行に関する各国の意識は以下のとおり。
九州への訪日外国人数:熊本地震後の宿泊者数はマイナス推移、クルーズは好調
実績をみると、2015年に九州を訪れた外国人旅行者は前年比69%増の283万人。地域別では韓国や中国、台湾、香港といった東アジアが約9割を占めた。この結果は全国の東アジアからの訪日者数割合が72%であるのと比較して約2割多いことを意味する。
続いて熊本地震発生前後(2016年1月~8月)の九州への入国者数では、地震発生から2ヵ月間は入国者数が前年比マイナス。その後は震災以前の勢いには及ばないものの、増加に転じた状況だ。一方で、九州域内での宿泊を伴わないクルーズ船からの入国者数は依然として順調な伸びを記録している点が特徴的。地域別では、震災後の「旅行控え」意向が強かった韓国の減少が目立つ結果となっている。
熊本地震発生後の九州への外国人入国者の推移は以下のとおり。
九州域内での宿泊者数全体の推移をみると、2016年4月から8月までは前年割れで継続し、累計約30万人泊減となった。九州7県では、被災地である熊本・大分県のみにとどまらず、長崎県や宮崎県、福岡県への宿泊者数も減少している。同レポートでは、熊本周辺の被災や周遊ルートの途絶の関係で域内での滞在日数が減少したほか、東京や関西など九州以外の地域から入国した外国人旅行者による九州訪問・宿泊(周遊客)が低迷しているものと推察。また、熊本・大分の隣県にも風評被害の余波がおよんだことがうかがえる結果になっている。
この調査レポートは、日本政策投資銀行が財団法人日本交通公社(JTBF)と共同で実施した、アジア/欧米豪を対象とする「訪日外国人旅行者の意向調査(平成28年度版)」の結果を分析したもの。この調査の対象は20歳から59歳までの男女で、回答者数は6198名。対象国・地域は韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国、オーストラリア、英国、フランス。調査期間は2016年6月23日から7月8日まで。九州へのインバウンド観光に関する意識調査では、アジア地域の旅行者を対象に分析している。
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