今回コメントを紹介するのは、ベンチャーリパブリックCEO柴田啓氏、ピーチ・アビエーション執行役員・森井理博氏、ユーフライ・アライアンス副CEOのスティーブン・グリーナウェイ氏、カートローラー社CTOのボビー・ヒーリー氏、エア・ブラックボックス社マネージング・ディレクターのティモシー・オニール-デューン氏、スカイスキャナーでプロダクト担当ディレクターを努めるディレクターフィリップ・フィリポフ氏の6名だ。
柴田啓氏 ―ベンチャーリパブリック 最高経営責任者(CEO)
2016年の重大な出来事TOP3
- シートリップによるスカイスキャナー買収。
- エアビーアンドビーが「トリップ(Trips)」事業を開始。
- グーグルが新アプリ「トリップ(Trips)」を提供開始。
2017年に要注目の動きTOP 3
- メタサーチやOTAの統合・合併がさらに進む。
- ホテルは、「個人所有の宿泊施設」という新たなライバル出現に悩む。
- AI/チャット・ボットが主流になるには時期尚早。
森井理博氏 ―ピーチ・アビエーション 執行役員・最高コマーシャル責任者(CCO)兼営業統括本部長
2016年の重大な出来事TOP3
- 関西国際空港(大阪)と羽田国際空港(東京)における競争激化。日本路線に乗り入れる格安航空会社(LCC)があまりに多くなってしまった。
- 中国市場におけるEコマースの盛り上がりに伴い、中国人旅行者が日本で消費する金額が徐々に減少。
- 韓国の景気停滞の影響で、座席稼働率が全般的に低下。
2017年に要注目の動きTOP 3
- 原油価格が上昇基調に転じるなか、航空会社の差別化が急務になる。
- データに基づいたマーケティングの強化が、今まで以上に重要に。個人によって異なる「旅の動機」を刺激するためには欠かせない。
- AI、IoT、ディープ・ラーニングなど、新しいテクノロジーが航空会社のプラットフォームにも採用される。
スティーブン・グリーナウェイ(Steven Greenway)氏 ―ユーフライ・アライアンス(UFly Alliance) 副最高経営責任者(deputy CEO)
2016年の重大な出来事TOP3
- ビッグデータ。誰もが話題にしているが、実際にはまだ大きな展開は見られない。
- セキュリティ。世界各地で多くの事件が起きた。
- 航空会社が徴収する手数料の拡大!
2017年に要注目の動きTOP 3
- ビッグデータ。引き続き、誰もが話題にしているが、行動を起こしている人は少ない ;-) 。
- モバイル/ウェアラブル機器。
- 航空会社の手数料、アンシラリー、一部のリテール業務に対し、当局からの取り締まりが厳しくなる。
ボビー・ヒーリー(Bobby Healy)氏 ―カートローラー(CarTrawler) 最高技術責任者(CTO)
2016年の重大な出来事TOP3
- グーグルがとうとう表舞台に出てきて、これまで顧客だった企業との競争に乗り出す意向だ。旅行プランニングの流れの中で、最初の入り口部分を自社のコントロール下に囲い込むのが狙いだろう。アグリゲーター、デスティネーションやレビュー・サイト…あらゆる関係者に、注意を促したい。欧州委員会には、不公平かつ非合法な独占状態がこれ以上、拡大しないような対応を望む。
- シートリップによるスカイスキャナー買収。これまでにない企業の誕生であり、優良ビジネス同士が手を組んだ。欧州のメタサーチ市場で、シートリップ対プライスラインの競争が始まるのでは? エクスペディアは当面「これ以上の買収はない」としているが、2社のみのレースに終始するか疑問。もっとも、この原稿を書いている時点で知ったトリヴァゴのIPOの内容は今ひとつだ。一方で、シートリップはバイドゥ(百度)と共同で30億ドル規模の投資ファンドを形成している。
- ウーバー(Uber)、リフト(Lyft)、ディディ(Didi)、アップル、テスラ、グーグル…そのほか世界中のあらゆるテクノロジーと車に関わる企業が、5~10年以内に大半の車を完全自動運転化できると言っている。ウーバーのCEOによると「すでに実在する」。
2017年に要注目の動きTOP 3
- 欧州では、テロなどによる先行き不透明感が増す。
- オン・デマンドでスペースを提供するビジネスの合併・統合。その余波で衰退するところも出てくる。
- 中国系ファンドや企業が中心となり、欧州市場におけるM&Aが加速する。欧州系OTAがターゲットになりそうだ。
ティモシー・オニール-デューン(Timothy O’Neil-Dunne)氏 ―エア・ブラックボックス(Air Black Box) マネージング・ディレクター&共同創業者
地政学的に重要かつ旅行にも影響大な2017年の動きTOP3
- 最も懸念していることは、サプライヤー側、特にアジア太平洋地区の航空会社の業績が軟調であること。
- 醜悪なテロリズムにより、欧州は深刻な影響を受ける。
- 米国の新政権は強いドルをもたらすが、反米感情も高まる。
2016年の重大な出来事TOP3
- ノルウェージャン・エア・インターナショナル(NAI)が大西洋路線の運航を認可されたこと。長距離路線に新しい変化の風が吹いた。
- セーバーが裁判でUSエアウェイズ(現在はAAに統合)に敗訴したこと。GDSのビジネスモデル崩壊を示唆している。エクスペディアとはすでに取引がなく、LCCとは、そもそも取引関係がない。これからの在り方は?
- グーグルもエアビーアンドビーも、旅行業の大手を目指す決意だ。エアビーアンドビーは「トリップ」事業を開始し、次は航空券だろう。旅行業という閉ざされた世界へ、外からの侵略がさらに進む。それが日常的な光景になった。
2017年に要注目の動きTOP 3
- ルフトハンザ航空(LH)は、従来型の航空会社グループという事業モデルから脱却し、巨大企業ならではの道を追求する。うまくいくことを祈る。ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とLHとの競争になるだろう。
- これまでは旅行業界の枠の外にいたプレイヤーたちが、旅行流通に参入し、勢力を増す。ヒントは「中国に注目!」。
- 政府当局による数々の「決断」もとい、「決断をしなかったこと」が追い風となり、大企業が何の規制も受けることなく勢力を拡大。このままでは消費者の選択肢は狭くなり、消費者保護にも悪影響が及ぶだろう。
フィリップ・フィリポフ(Filip Filipov)氏 ―スカイスキャナー プロダクト担当ディレクター
2016年の重大な出来事TOP3
- エアビーアンドビーがレンタル事業からの拡大路線へ打って出た。
- 旅行テクノロジー事業の統合・合併(全般的なトレンド)。
- グーグルがとうとう旅行業に本腰を入れ始めた。
2017年に要注目の動きTOP 3
- 音声を使った購買行動や取引が、消費者にとって、より現実的な選択肢になる。
- ホテルや航空券以外の事業分野で、さらなる合併・統合が進む(ツアー、アクティビティ、レストラン予約など)。
- 決済プラットフォームの進化が、オンライン旅行の採用をさらに拡大する。
※この記事は、オンライントラベルをテーマとする世界的なイベント「WIT(Web In Travel)」公式サイトに掲載された英文記事を、許諾を得て日本語翻訳・編集しました(トラベルボイス編集部)。
オリジナル記事:REFLECTIONS ON 2016 AND PREDICTIONS FOR 2017 (PART II)
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