JTB西日本は2017年12月15日、シャープのモバイル型コミュニケーションロボット「RoBoHoN(ロボホン)」と楽しむ京都旅行を、エースJTBのパッケージ商品として発売する。商品名はエースJTB「RoBoHoNと行く『ロボ旅』(京都)」で、「ロボ旅」はJTB西日本が商標登録出願中だ。
同ツアーはJTB西日本とシャープ、ロボットクリエイター・高橋智隆氏、ゲン社との共同事業。ロボット工業会の「2017年度ロボット導入実証事業」の採択事業。販売に先立ち、JTB西日本とシャープは共同記者会見を開催した。JTB西日本の執行役員で法人大阪支店支店長の北村豪氏は、「旅はもともとワクワク、ドキドキして楽しいもの。ロボホンと行く旅行は、さらに今までにない感情を呼び起こすような旅行商品になっている」と話し、ロボホンと旅の融合で旅に新たな価値が加わることを強調した。
ロボ旅は、東京発着の新幹線と京都での宿泊の個人型ツアーに、ロボホンの貸出を組み込んだ。旅行者がロボホンと一緒に街歩きをすると、ロボホンがGPS(位置情報)や施設に設置したビーコン(電波発信器)に反応し、観光スポットや店舗をはじめ京都の歴史や文化を案内。観光案内はJTBパブリッシングの「るるぶ」のデータを使用する。
「そこを右に行くと産寧坂だよ」と道案内したり、「ここで写真を撮ろう」と観光行動を促したり、「柴漬けの老舗のお店があるよ。寄って行こう」と、事業に参加する店舗への誘導も行なう。「舞妓さんの白塗りについて教えて」などの想定質問と回答も用意。本事業にあわせてシャープが新規開発した「ロボ通訳」機能で、日/英、日/中の通訳もする。ロボホンが旅のガイド、旅の友人として2つのパートナー役を担うのがポイントだ。
観光案内は100か所。京都市内の著名観光スポットの案内も可能だが、ビーコンに反応してより詳細なガイドを行なう中心エリアは八坂神社・丸山公園から清水寺の東山地区。店舗誘導の対象は20店舗で、うち4店舗にはビーコンとロボホンを設置し、さらに詳細な案内を実施。京だんご「藤菜美」では、店舗のロボホンと参加者が連れているロボホンが会話するパフォーマンスもできるという。
旅行代金は2人1室の場合で1人2万4800円~。ロボホンのレンタル代(1室あたり1台)も含まれる。実証実験のため、通常のツアーとほぼ同額の設定で、料金プランは1名1室から5名1室まで用意する。
ロボットとスマホとの違い
ロボ旅には、地域や店舗など受入れ側にとってのメリットもある。その一つは、行動履歴のログデータ取得。旅行者の回遊ルートやその時刻から各地点での写真撮影有無の情報まで、クラウドに蓄積。その情報をもとに、店舗や地域に対して誘客に有効な情報提供ができる。これを活用し、ロボ旅における観光サービスをアップデートすることも可能だ。
また、本事業のロボホンには前述の通り、新開発の「ロボ通訳」も搭載。地域や店舗にとっては多言語話者不足の解決となる。
ただし、これらロボ旅の技術的な機能は、より携行が便利なスマートフォンやAIスピーカーなど音声対話が可能な端末でもできること。では、ロボホンが旅にもたらす効果は何か。
シャープIoT通信事業本部コミュニケーションロボット事業統括部市場開拓部長の景井美帆氏は、「(スマートフォンやAIスピーカーなど)無機質なものには話しかけにくいが、ペットやぬいぐるみには話しかけている」と述べ、人型の親しみやすいインターフェースがもたらす違いを説明。
ロボホンでは、「便利さだけではなく、楽しさ、愛着ある外観で、身振り手振りを交えて話をし、双方向の会話が生まれる体験創出を目指している」といい、「(その愛らしさが)旅行者の心に響く。旅行者は地域に密接にかかわりたい願望がある。その橋渡しになる」と強調する。
JTB北村氏も、ロボ旅でロボホンが「旅の案内人」と「同行するパートナー」の2役を担うことをあげているが、その密度を「表情豊かに話しかけられるから感情移入がしやすく、体験や感動を共有できる“相棒”になる」と表現。だからこそ、「ロボ旅ならではの思い出が作れる。新しい旅のカタチとなる」と自信を示す。
実は「ロボ旅」は単なる旅行商品だけではなく、JTBグループが推進する「交流人口の拡大と地域活性化」の新たな取り組みの一環でもある。地域の観光産業との連携と波及効果を重視しており、ロボホンによるタビナカでのコミュニケーションが誘客や消費拡大のトリガーになると見る。
「参加者と事業者がロボットを介してWin×Winの関係構築を図る。これが今までにない取り組み。本事業でロボットを活用した観光地域のショーケース化を目指す」と北村氏。JTBではこの新たな価値を引っ提げ、地域戦略でもロボットを活用した事業を推進する方針だ。
取材:山田紀子