観光庁は2018年6月5日、2018年度(平成30年度)版の観光白書を発表した。2017年の観光動向や講じた施策、2018年度に講じる施策などをとりまとめたもの。また、今年度は「日本経済における存在感が高まりつつある『観光』」と題したテーマを設け、インバウンド旅行者が日本経済に与える影響を広く分析している。
日本経済への影響分析では、近年の訪日外国人旅行者の消費動向として、約4兆円に及ぶ旅行消費だけでなく、越境ECを通じた日本製品の購入(輸出)規模拡大に大きく寄与したと分析。中国、香港、台湾、韓国、米国の上位5か国・地域全体で、旅行者自身の訪日観光からの帰国後の購買は約6300億円、家族や知人の訪日観光をきっかけとするものが約1500億円に至り、いずれも中国からの購買が5割以上を占めたとみている。
また、日本経済に与えるインパクトとして、宿泊業を中心とするさまざまな産業における投資の支出などにも着目。宿泊業の建築物工事予定額が5年間で8.4倍の9431億円となったほか、製造業を含めさまざまな産業かつ全国各地にて、多くの投資が創出されたと分析している。
2018年度に講じる施策は、(1)観光資源の魅力を極め「地方創生」の礎に、(2)観光産業を革新し、国際競争力を高め我が国の基幹産業に、(3)すべての旅行者がストレスなく快適に観光を満喫できる環境に、の3つの軸で構成。
観光資源の磨き上げでは、魅力ある公的施設やインフラの大胆な公開・開放に加え、地域の文化財の整備や支援制度の見直しを実施。2021年度を目標に文化庁を京都に移転し、文化に関する施策を総合的に推進する体制強化も目指すことなども盛り込んだ。
観光産業の革新では、通訳案内士、ランドオペレーター、宿泊業、旅行業といった分野別に施策を解説。古民家のリノベーションや海外LCC企業の日本進出支援、世界水準のDMOの形成・育成なども積極的に進める内容とした。
ストレスのない快適な観光を実現する施策としては、最先端技術を利用した出入国審査をはじめ、空港を中心とした整備を広く網羅。また、「キャッシュレス観光」に向けた環境改善や通信環境の向上、医療機関を含むさまざまなシーンでの多言語対応などに務めるほか、治安面では「世界一安全な国、日本」を体感できる環境を目指すとしている。
観光白書の概要および要旨全文は以下から参照できる。