国際航空運送協会(IATA)はこのほど、2019年の航空旅客数は前年比5.7%増の45億9000万人との予測を発表した。引き続きプラス成長となるものの、伸び率は2018年より鈍化すると見込んでいる。
2019年の世界の航空産業の純利益は、2018年の323億ドルをわずかに上回り355億ドル(約3兆9000億円)と予測。同売上は同7.7%増の8850億ドル(約97兆3500億円)。出発旅客一人当たりの利益は7.75ドル(2018年は7.45ドル)。航空産業への投資利益率は、前年と変わらず8.6%。
IATAでは、燃料費の下落や、GDP成長率が3.1%と堅調な世界経済を理由に、世界の航空業界は2019年、10年連続での黒字を達成すると予測。アレクサンドル・ド・ジュニアックIATA事務総長兼CEOは「注意は必要だが、今後一年は引き続き、利益を計上できると楽観視している」とコメントした。リスク要因には、貿易戦争や英国のEU離脱など、世界の政治・経済情勢の不透明さを挙げた。
旅客需要の見通しでは、2019年は有償旅客キロ(RPK)が6%増、座席キロは5.8%増。需要が供給を上回ることから、座席稼働率が上昇し、イールド(単位運航距離当たりの売上)も1.4%増と予測している。航空券以外の付帯収入(アンシラリー収入)を除いた旅客収入は、2018年の5640億ドルから、6060億ドルに拡大すると見込んでいる。
地域別分析 ―純利益トップは北米地区、アジア太平洋は8.3%増の見込み
地域別で、2019年の純利益が最も大きくなるのは北米地区の航空業界で、前年比13%増の166億ドルと予測。旅客一人当たりの純利益は16.77ドル。燃料費の値下がり、座席稼働率の上昇、アンシラリー収入が好材料となる。
欧州の航空業界の純利益は前年から微減の74億ドル。旅客当たり純利益は6.4ドルで、北米キャリア比では3分の1ほどにとどまる見込み。2016年のテロ事件から需要は回復しているものの、競争の激化、空港管理コストの上昇などが利益を圧縮している。
アジア太平洋地区の航空業界は、地域によってLCCの台頭や、貨物需要の好況など、特徴にばらつきがある。全体での純利益は同8.3%増の104億ドル。旅客当たり純利益は6.15ドル。
中近東地区の航空業界は、難題続きだった2018年から回復し、2019年の純利益は同33%増の8億ドルと予測している。旅客当たり純利益は3.33ドル。一方、航空座席の供給拡大には一服感が漂い、2017年の前年比6.7%増から2018年は同4.7%増、2019年は4.1%増が見込まれている。
南米地区の航空業界は、純利益が75%増の7億ドル。旅客当たり純利益は2.14ドル。ブラジルの景気が回復する一方、アルゼンチンの情勢は混とんとしている。現地通貨の対米ドル為替レートが弱いことも利益を圧迫している。
アフリカ地区の航空業界では、業績がゆるやかに回復し、赤字幅は減少するものの、3億ドルの損失を予測している。旅客当たり損失は3.51ドル。