Z世代は「モノより体験」と「パーソナル化」、若年層つかむロイヤルティプログラムを考えた【外電】

旅行系のロイヤルティプログラムといえば、ポイントを貯めて使うのが基本パターンだ。会員になれば、他にも色々な特別待遇が用意されているが、ポイントやマイルを貯めて使うという機能は共通している。旅行者やポイント会員にとって、特に問題はない。

しかしミレニアル世代やZ世代(18~35歳)など、若年層にはどうだろう。次世代の消費者たちは、利用者すべてを同じように扱うリワードでは満足しない。

この世代は、それぞれ異なる個人として尊重されることを望む。リワードについても、自分が必要だと思うこと、自分が旅行するときに役立つ内容が欲しいのだ。

彼らが求めるのは「何かを体験すること」であり、プラチナ云々のステータスシンボルには興味がない。自分が特定の旅行ブランドに肩入れするなら、企業側からも自分に対して相応の理解があって然るべきだと考えている。

顧客一人一人が抱える要望に応えると同時に、コンバージョン率や利幅の高さにおいても遜色ないリワードを揃えること。これを実現できた旅行ブランドが、今後増えていくZ世代との関係を深め、売上や利益も拡大できる。

では、消費動向に大きな影響力を持つ同世代はどんなリワードに心を動かすのか。理解するためには、「体験」がいかに旅のモチベーションや実際の行動を左右しているかを認識する必要がある。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

旅の主役は「モノより体験」

ミレニアル世代やZ世代消費者にとって、何が動機付けになるのだろうか。食べたい物から住居を買うタイミングや方法まで、多岐に渡る分野を対象にした調査が、これまでにも多数行われてきた。

旅行については、レジャー目的のものは一年に3回ほど。その際、最も重視している要素は「体験」だ。

Z世代による旅行消費額は推定1430億ドル(約15兆7300億円)ほど。この多くを体験に費やしているが、こうした傾向は今後さらに強くなりそうだ。例えばイベントブライト社(Eventbrite)の調査結果では、ミレニアル世代の78%が「モノ」ではなく体験を選んでいる。

当社でもユーザーテストを実施している。旅行系サイトにやってきたビジターを対象にした小規模なものだが、ユーザーの動き方や傾向がよく分かる。

2019年3月のユーザーテストでは、ミレニアル世代とZ世代の旅行者がシェアする画像は、購入したモノ(食べ物含む)より、体験したコトの方が多く、その差は最大85%から15%だった。

ただし体験がますます好まれるようになっている背景に、相手を楽しませようとするインスタグラム文化があるのか、それともソーシャルメディア利用に伴うFOMO(Fear of Missing Out:仲間外れを恐れる不安)があるのか、明言はできない。

いずれにしても、「体験」への注目が高まることは、旅行ブランド各社にとってむしろ追い風であり、チャンスだ。何しろ旅行というのは、まさに体験そのものだからだ。

ロイヤルティプログラムに関する当社の最新データでは、若年層の消費者のうち95%が、現金に換えられるか、旅行関連サービスに利用できるポイントに魅力を感じると答えている。

つまり、値引きや各種特典に頼らなくても、ポイントやマイルを効果的に活用する方法は、まだ色々と考えられそうだ。

旅行各社であれば、さらに一歩踏み込んで、体験に関連したリワードをロイヤルティプログラムに組み込むこともできる。少なくとも他の業種より、ずっと簡単に実現できるはずで、将来有望な消費者層へのアピール効果が期待できる。

マリオットホテルが展開する「マリオット・ボンヴォイ」の新プログラム「モーメンツ」はこうした取り組みの一例だ。累積ポイントをイベント・パッケージに利用することが可能で、例えば米国の人気音楽フェス「コーチェラ」でのグランピングや、2019年NFLドラフト会議のVIP入場券などが対象に含まれている。

このようにダイナミックなロイヤルティ戦略を導入することで、ポイントや無料宿泊券だけをリワードにするよりも、効率よく、若い旅行者層の関心を得られるようになる。

データも重要だ

若い世代の旅行者たちにアピールする上で重要なのは「体験」だけではない。ロイヤルティプログラムに対する評価や考え方は、大きく変化しつつある。

Z世代やミレニアル世代は、どこにでもありそうな特典を一律に用意するだけでは満足しない。ユーザーそれぞれに対するブランド側のロイヤルティも期待する。

例えば、サービスや提供されるコンテンツ内容は、同じ会員であっても、個人向けにカスタマイズされ、それぞれの嗜好に合わせてパーソナライズされていくのが当然だと考えている。長く会員になっている人と、入会したばかりの人では、扱われ方に差が出る仕組みだ。こうした関係作りが期待できる旅行ブランドであれば、自分から近寄ってみるのも悪くないと思っている。

この世代はデジタルネイティブであり、ソーシャルメディア第一世代でもある。そのため、自分の行動に関するデータを企業が集めることについても、それが自分に対するサービス向上や、より自分好みのリワード提供につながるのであれば、問題ないと考えている。

自分にとって意義深い体験を紹介してもらえるのであれば、喜んで個人情報もシェアするだろう。

こうしたデータ活用によって、マーケティングサイクルが好循環に転じることで、顧客に対するパーソナライゼーションがさらに洗練されていく。加えてさらに広い範囲で、ビジネス全般における様々な判断においても役に立つ。例えば相手が気に入りそうな旅行プロダクトやサービスを選び、そのプレゼンテーションやキュレーション手法も考える、といった具合だ。

若き旅行者たちが価値あると感じるものを

Z世代の場合、ロイヤルティプログラムの会員になっていたとしても、累積ポイント数はまだ年配の会員ほど高くはないのが普通だ。

当然、コンシェルジュが対応するような特典は、若い世代では、あまり利用する機会がないと想定できる。であればなおさら、自分のためにパーソナライズされたリワードは魅力的に感じるはずで、リピーター化にも効果を発揮する。

同様な理由から、「ポイントと現金」または「体験利用に使えるポイント(一般的には、航空券や宿泊より少ない累積ポイント数で済むことが多い)」に対応している旅行ブランドの方が、Z世代にとっては利用しやすく、メリットが大きい。結果として、ブランドに対する愛着も強まるだろう。

新しい世代が旅行マーケットの多数派を占めるようになれば、ロイヤルティプログラムでも新しいアプローチが必要になる。従来型のポイントとマイル中心のものから、より進化したダイナミックなロイヤルティ・ソリューションへと軸足を移すことで、ミレニアル世代やZ世代は、この旅行ブランドは使い勝手がよくて便利だと感じるようになるだろう。同世代がまさに旅行に求めているもの、パーソナライズされた体験を届けることができるからだ。

企業側にもメリットは大きい。自社ブランドが強く認知され、検索や予約の際、真っ先に探してもらえるようになれば、旅行各社は、新規の顧客開拓に費やしてきたコストを削減できる。

ロイヤルティ戦略を見直すのであれば、データ活用がパーソナライゼーションの基盤であり、顧客の価値観や習慣を知るために欠かせないことも理解する必要がある。

旅行者の好みを把握した上で、テーラーメイドのリワードを提供すること、お馴染みのマイルやポイントに加え、体験型の特典もリワードのメニューに盛り込むこと、「ポイントと現金」併用での支払いを認め、利用しやすいものにすること。これらを実現できれば、Z世代の消費者から支持される旅行ブランドになるだろう。この世代は、これから最も人口比率が高く、最も可処分所得が多い消費者層になるということをお忘れなく。

効果的なロイヤルティプログラム戦略を展開し、若年世代の旅行者との関係強化に成功することが、将来的なビジネス成長へとつながっていく。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:The A-to-Gen Z of travel loyalty

※著者:スイッチフライCEO クレイグ・ブレナン(Craig Brennan, SwitchFly)

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