日本政府観光局(JNTO)は定例の会見を開き、2019年のこれまでの訪日市場動向や2020年の取り組みを説明した。今年11月の訪日客数は前年比0.4%減となり2ヶ月連続で前年割れとなったものの、韓国市場を除いた19重点市場ではいずれも過去最高を記録。同局理事の金子正志氏は「決して悪くない」と評価した。
また、9月と10月のラグビーワールドカップ期間の市場傾向も説明。出場国の伸び率は29.4%となり、全体の同0.6%減を大きく上回った。金子氏によると、イギリスからは試合前の訪日が多く、アイルランドとニュージーランドは決勝トーナメントでの訪日数が増えたという。さらに、全国12都市で開催されたことから、約半分がロンドンに集中した前回のイングランド大会とは異なり、観客の分散化が見られたとし、「この成功体験を東京2020にも生かしていく必要がある」と強調した。
2019年通年については、12月9日にすでに3000万人を突破。金子氏は「2018年の実績は超え、3119万人ほどになるではないか」との見込みを示した。
今後の韓国市場については、「日本に行きたい人は多いと聞く。これから少しずつ改善していくのではないか。JNTOとしては、発信する体制を整えて、地道に取り組みを進めていく」と話すにとどめた。
2020年に向けては、東京2020開催時期のクラウディングアウト対応として、通常のプロモーションの延長線上として引き続き宿泊分散、地方分散、時期分散をアピールしていく。その一貫として、関係事業者から特別感やお得感のある限定プログラムを集めた「Your Japan 2020キャンペーン」を2020年1月からスタートする。すでに、公式ウェブサイトは立ち上がっており、約40のプログラムを紹介。地方発の体験型メニュー、特別公開、期間限定のイベントなどのほか、ジャパンショッピングツーリズム協会とタイアップした「Japan Shopping Festival 2020」や農林水産省が推進する食の体験「SAVOR JAPAN」とも協業する。さらに、地域交通や国内航空の優待の機会も提供する。
このほか、JNTOは海外への情報発信一元化の役割を担うことから、地域との連携を強化する。すでに各地域から欧米豪をターゲットとした観光コンテンツ約2100件を集め、そのうちすぐに商品化可能な300をパンフレット化。残りについては、148団体と直接対話を行い、コンテンツのブラッシュアップを実施した。「地域と一緒に、観光資源の磨き上げは今後も継続していく」と金子氏。来年3月下旬には、欧米豪に加えて中国、韓国、台湾、香港を対象とした多言語ウェブサイトを立ち上げる予定だ。
さらに、「欧米豪と中国では好まれるものが違う」(金子氏)ことから、中国市場に特化した「50 EXPERIEMCES IN JAPAN」パンフレットを制作した。日本の独自性やストーリー性を軸に体験型コンテンツを掲載。20代から30代をターゲットに、まだ知られていない日本を訴求していく。
なお、JNTOは今年広州に22番目となる海外事務所を開設した。来年は、メキシコやドバイでの事務所開設を視野に入れているという。また、重点市場について、来年は中南米(メキシコ)と中東地域を加えて22市場に拡大。さらに、ブラジルと北欧を潜在市場から準重点市場に格上げする。