トラベルボイスの年間アクセス記事ランキング2019、今年1番読まれた記事は?

2019年、令和元年が間もなく幕を閉じようとしています。今年もトラベルボイスでは「旅行・観光×デジタル」に関わる数多くのニュースを取り上げてきました。その中で、読者の方々の関心を集めた記事のアクセスランキングを発表します(トップ15は下段で一覧。)。

今年も、目まぐるしく観光・旅行ビジネスとその環境が動きました。今年1位となったのは、9月に破綻した英国の老舗旅行会社トーマス・クック関連の記事です。

世界の近代的旅行会社の祖とされ、旅行の大衆化に貢献した創業178年を誇る大手旅行会社の破綻は、速報ニュースから顛末を綴る記事まで、注目を集め続けました。多くのトラベルボイス読者が、そこから何かを学び取ろうとされていたのではないでしょうか。観光産業を取り巻く環境変化がもたらした歴史的な事実と背景が、少しでも日本の観光産業に携わる方々の学びになることを祈りつつ、今後も続報していきます。

“海外事情”は日本の旅行ビジネスに直結

2位にはグーグルが旅行事業を深化させている記事がランクインしています。昨年あたりまで、グーグルの旅行業進出は懐疑的な見方もありましたが、すでに同社は旅行のプラットフォーマーといってよいでしょう。ユーザーとの接点をタビナカでも利用される地図(グーグルマップ)を起点に拡充させているあたりは注目です。

また、今年はいよいよアマゾンがインドで航空券販売を開始(11位)しました。グーグルやアマゾンの動きは、決して“海外事情”ではなく、さほど遠くない未来に日本にも波がやってくるでしょう。すでに多くのユーザーと各種サービスを持つ両社は、決済機能まで提供する“スーパーアプリ”として、さらなる進化と深化を進めるはずです。

新たな移動「MaaS」への期待、サブスクで定額制航空券も

昨年のアクセスランキングでは、「変化の兆し」として「新たな移動(MaaS)」や「決済」の可能性に触れました。今年は消費増税を機にキャッシュレス化が急拡大、旅行者はタビマエでもタビナカでも日常と同じ購買体験を求める傾向が顕著になっていくと考えられます。「MaaS」では、事業者間連携も進み、観光型MaaSの実証実験が数多く行われました。

実証実験ではありませんが、MaaSにかかわる興味深い例としてあげられるのが、12位にランクインした多拠点住み放題サブスクを提供する「ADDress」。ANAが参画し、課題となる移動をMaaSや定額性航空券で解決していきたい考えだといいます。今年10月にはJR東日本も資本参画、新たなアイデアで化学反応が生まれることに期待したいところです。

国内では、来年以降の布石になる動きも数多く見られました。いよいよ開催される東京オリンピックに向けた羽田空港の国際線発着枠の拡大で具体的な路線や便数が決まり(15位)、訪日客の増加に空路の備えが整えられました。日本人の海外旅行にも弾みとなることでしょう。また、JAL・ANAが来年スタートするパッケージツアー適用の変動型運賃にむけて旅行業界では新たな約款を規定(7位)するなど対応が進めています。

JR東日本はオンライン販売に大きく舵を切り(6位)、ツアーを販売する「びゅうプラザ」を2022年3月までに営業終了するというニュースは観光産業の内外で大きな注目を集めました。日本の鉄道のオンライン化比率は海外に比べて低いと言われていますが、こうした動きで一気に状況は変わっていくのかもしれません。担当者へのインタビュー時に「今が正念場」とお話されていたのはとても印象的でした。

日韓関係や続く香港の抗議デモ

さて、最後に。ランキング3位は日韓関係の悪化によるインバンド市場での急ブレーキ、4位は香港で続く抗議デモについての記事でした。マイナス要因のなかで、興味深いデータがあります。それは、日本からの訪韓旅行者が減っていない(2019年8月まで)こと。また、香港では外国人旅行者数では大打撃を受けているものの出国者数は伸びているということ。特に日本の旅行が人気だそうです。

目の前に見える国際情勢によるマイナス要因は、企業のレベルでは解決が難しいものです。しかし、こうした小さな光に未来につながるヒントをあるのかもしれません。

ランキング15位までは以下の通りです。

  • 1位 トーマスクックの破綻関連

トーマス・クック破綻で旅行業界に起きることは? TUIやライアンエアら恩恵 (2019年9月25日)

トーマス・クック破綻の理由、「デジタル対応の遅れ」、頓挫した従来モデルからの脱却と構造改革 (2019年9月28日)

パッケージツアーの未来は? トーマス・クック破綻で見えた構図を分析してみた (2019年10月14日)

  • 2位 グーグルの旅行事業関連

グーグルが観光版「スーパーアプリ」で描く未来とは? 最新動向を分析 (2019年12月14日)

タビナカ業界を席巻しはじめた「グーグル」、次の起きることと競争に勝つためにすべきこと (2019年8月3日)

グーグルが旅行分野に本腰、旅行関連サービスを集約、マップ上で宿泊・飲食予約の拡充も (2019年5月21日)

  • 3位 日韓関係の悪化で訪日客減少

韓国の観光地は今どうなっているのか? 大韓航空が実施した日本の旅行会社向け視察旅行で現地取材した (2019年10月19日)

日韓路線の航空座席供給は20%減、一部航空会社は40%減、航空データOAGが分析 (2019年9月9日)

【図解】訪日外国人数、2019年8月は2.2%減の252万人、韓国は半減、(2019年11月6日)

【図解】韓国と台湾の訪日数が逆転、韓国路線の航空座席数と東アジア4市場の12か月推移 (2019年10月9日)

  • 4位 香港で抗議デモ続く

抗議デモ続く「香港」、インバウンドは大打撃も好調な出国者数、日本への旅行が人気(2019年12月22日)

香港国際空港の占拠で起きた大混乱、香港の観光とビジネスで懸念されるイメージダウン (2019年8月14日)

 

JR東日本のMaaS戦略とは? 鉄道のオンライン化は正念場、チケット販売の未来(2019年8月19日)

 

 

オランダ政府、オーバーツーリズムで観光戦略を転換、「量より質」「居住者を最優先」(2019年12月7日)

オーバーツーリズムに解決策はあるのか? 外国の現状と対策事例から専門家が考えた (2019年4月26日)

 

 

アマゾンが始めた航空券予約サービス、最初にインド市場を選んだ意味 (2019年8月13日)

 

 

 

 


トラベルボイスは、サイト開設から7年、来年は8年目を迎えます。観光産業において、デジタル活用の意識が高まる中、読者は拡大が続き、月間60万人を超える観光産業で最大のサイトに成長しました。来年も、こうした課題や話題から、旅行・観光ビジネスに関わる皆様の一助になるニュースやトレンド情報などをご紹介していきます。

今年はオーバーツーリズムという言葉が一般的に使われるようになったということも特徴的です。8位には海外発の解決策がランクインしていますが、日本でも11月に大きな動きがありました。京都市が、オーバーツーリズム対策として観光施策で大きく舵を切っています。新年早々に、その動向をお伝えすることができそうです。

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トラベルボイス編集部 山岡薫

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