日本旅行業界(JATA)は、「観光産業共通プラットフォーム」について、2023年7月1日に宿泊施設に対する災害時情報集約訓練を実施した。同プラットフォームは、宿泊施設が基本情報や営業情報、災害情報を登録し、旅行会社が各情報を検索・取得できるもの。情報を一元管理することで宿泊施設と旅行会社間の非効率な情報連絡体制の改善、それによる生産性向上、双方で高付加価値業務への人的リソースのシフトを図る。
訓練では、6月中旬までにプラットフォームに登録した約2000軒に対し、7月1日午前11時に震度5強の地震が発生したという想定で、各施設の情報集約依頼を発報した。システムの理解促進と本稼働に向けたテストが目的で、全体の約50%にあたる1020軒から回答があった。JATAによると、「ケガ人が出た」「施設が一部倒壊した」といった実際に被害があったことを想定したテスト入力にも多数が協力したという。プラットフォーム構築で、緊急性がない「1カ月先の団体受入は可能か」といった問い合わせを防ぎ、災害時の正確な情報集約・発信による混乱回避、風評被害の最小化による被災地の早期復興を目指す。
ただ、回答率が50%にとどまったのは課題であり、JATA内に設置する観光産業プラットフォーム運営事務局を通じ、災害発生時の該当エリアへの情報登録支援に力を入れる。今後は、四半期に1回のペースで訓練を実施する予定。単なる情報集約にとどまらず、災害発生時に準備しなければならない事柄の啓蒙や、災害対策の先進事例の共有など、観光産業全体の危機管理体制のボトムアップ、DX化を目指した取り組みもおこなっていく。災害時情報集約機能の本稼働は7月下旬を予定している。
また、宿泊施設情報の一元化、営業情報の発信機能は10月下旬からの運用を計画している。基本情報は施設名から部屋タイプ、アクセス、最寄りの病院・警察署など約1000項目を保持する予定。営業情報は、一部客室の改装、大浴場のメンテナンス、キャンペーンなど、期中で発生する営業上の各種情報を指す。
まずは会員旅行会社と契約がある約7000軒からスタート。その後、OTAでの販売に特化している宿泊施設へも参画拡大を図る。